Wave 1/10 トレジャーフィギュアコレクション
涼宮ハルヒの憂鬱 朝比奈みくる
さてさてさて。

世に完成品フィギュアが数あれど、なかなか新機軸の製品と言うのは生まれてきにくいものであります。
完成品フィギュア市場は広がり参加メーカーも増えていますが、基本的には同じフォーマットでの勝負と言いますか、
1/8スケールをベースとして1/10〜1/6スケールがメイン。塗装済み完成品で、時に脱衣が可能な仕様。
部品の組み換えが可能だったりすることもありますが、基本的には上記のようなフォーマットだと言えるでしょう。

で、完成品フィギュア史上に参加してほぼ2年になるWave。実は模型メーカーとしてはマックスファクトリーよりも歴史は長く、もう20年にもなります。
ファイブスター物語やボトムズのプラモデル/ガレージキットシーンをリードするメーカーであり、同時にディテールアップパーツやポリキャップなどを多く発売してきたメーカーでして、多くの模型メーカーの中でも信頼感は非常に高いところだといえます。
最近はトレジャーフィギュアコレクションとドリームテック、という2本の完成品フィギュアシリーズを軸にして活動していますが、出来もなかなか良くてリーズナブル、何よりも過剰にスペースを食わない……というユーザーフレンドリーッぷりがありがたいメーカーですよね本当に。

で、そのWave創立20周年記念としまして、『涼宮ハルヒの憂鬱』から、朝比奈みくるが発売となりました。
発売キャラクターとしては驚くことのないラインナップではありますが、何よりも驚かされたのはその価格。
1995円での販売ということで、多くのフィギュアファンやら玩具際とレビュー管理人の皆様を驚きの淵に叩き込んだんではないでしょうか。さとっちさんは叩き込まれました。
基本の立ち姿はこんな感じ。
ベースはハルヒの書いたSOS団ロゴマークをあしらったクリアーベースになっています。
さすがにスケールのことを考えると、ストッキングの質感というか塗装表現は甘い感じです。ここは残念。
オプションパーツ群はこうなります。
看板は持ち手が1つと、差し替え可能なトップボードが4枚。 うろたえ顔が1点。
両腕はマイクの持ち手×2、モデルガンの持ち手&ハンドガード持ち手×2、看板の持ち手×2、となりまして、Waveのトレジャーフィギュアコレクションの中でもトップクラスのプレイバリューだと言えますね。
マイクを握ったポーズがデフォルトですが、肩口から腕パーツを交換することで看板を握った状態や銃を持った状態に変更できたりします。
ただ、そのせいで若干肩幅が広くなってしまっているのも事実。 ちょっとだけここは残念かも?

また、胸部(というか胴体の非布地部分)には柔らか素材を使用することで、『おっぱいのもみゅ感』を再現。
素材自体は以前の鴇羽舞衣で使用されていたものと同じですが、表面に塗装されていないので塗膜の強度を気にしなくていいのは好印象ですね。ただし経年劣化に関してはまだまだ判らないので、長時間展示しておくと怖いかもしれません。

ただ、何か今回はおっぱいおっぱいする気になれなかったのが哀しいです本当に。
なお、左おっぱいの谷間側に星型のほくろが再現されているのは色んな意味で立派だと思いました。
付属の看板は取っ手の部分で差し替え可能、ちょっと頑張ったら他にもパターン作れそうですね。
持ち手は手首の穴に差し込むだけなのですが、もうちょい持ち手の長さがあったら良かったかも。
やっぱりちょっと質感が残念なことになってるお知り回りというか脚周り。
もう少しだけ、もう少しだけ頑張って欲しかった……っ!!!!!

でもお尻への布地食い込みっぷりはナイス。ナイス。グッド。
はい、さとっちさんがこのみくるを買うことを決意した大きな原因その2、モデルガン(電動ガン)である自動小銃のAKでございます。
劇中では第0話で映画の撮影をする際にみくるが持たされて、ついでに誤射してましたがそれはまぁさておきまして。
1/10スケールでここまで出来の良いAKが手に入るなんてコトがあるとは思っておりませんでした。
.30口径主義者のさとっちさんからしますと、このAKはもうラヴでラヴで仕方の無い銃だったりしますようふふふふ。

元々は戦車兵だったミハイル・カラシニコフによって開発された自動小銃であり、同時代の傑作銃、M1ガーランドとStg44の長所をまとめ上げた傑作銃、それがAK47です。
正式名称はアブトマット・カラシニコフ‐47。『47』は正式採用年数を指す数字ですね。
その外見からはドイツのStg44をベースにしたと考えられがちですが、実際の機構的にはM1ガーランドをベースにしたといえます。デザインとか使用実包に関してはStg44がメインでしょうけども。

まぁロシア(ソ連)といえば銃器のエライ国。
スターリングラード攻防戦のときはPPS短機関銃が包囲下のスターリングラード市内で設計〜開発され、包囲下の工場で生産され、実戦テストはそのすぐ近所の最前線で行われ、しかもそれが使い物になってしまうむしろ大歓迎されるというぐらいの鬼っぷり。
拳銃でもトカレフという、安全装置すら排除した素晴らしき拳銃があるわけでして、何かこう、アメリカとかドイツとはまた一味も二味も違った意味で美味しい銃器大国だといえましょう。普通に考えてありえねえ。死ぬぞライフル弾使用拳銃。

閑話休題、まずはAKの話でした。
AKの特徴として、その設計の簡易さや整備の容易さ(むしろ必要ない)、さらに言うとやたらめったら安いうえに町工場でも生産可能というリーズナブルっぷりから世界中に流通、むしろ氾濫していると言っても過言ではありません。
基本設計がやたらめったら優秀というのもありますが、各部品同士に若干の隙間を持たせて配置したり、部品点数を抑えたり、といった使い手に向けての配慮が評価されていると言えましょう。
……まぁ作った国がそもそも整備保守点検に気を使わない(飛行機のエンジン始動の際に機械が凍結してるからってエンジン真下で火ぃ焚くぐらいですからね)国ですから、それぐらいしないとマトモに扱えないんだろうとは思いますけども。

ちなみに1週間泥の中に埋めといたのを引っ張り出して、水ぶっ掛けて泥を流した直後に発射できたとか何とか聞きました。鬼か。
設計が簡易だからといって信頼性に欠けることもなく、圧倒的に製造コストも低いというコトで、共産圏やら社会主義国家やら民族紛争真っ最中の国から貧乏気味の国から、民兵からゲリラからテロ組織に至るまで、ありとあらゆるところに配備されているAKですが、もちろん60年前(!)の設計どおりではなく、近代化アップデートされているのが現状でして。

AK47では金属削りだし加工だったAK47のレシーバーをプレス加工に変更し、生産性を大きく高めたのがAKM
なお、AKMではストックの肩当て部分を直線に変更したり、銃口部を斜めにカットしてマズルブレーキ効果を持たせたりもしています。

さらにそのAKMを弄って軽機関銃仕様にしたのがRPK
支援火器である以上、レシーバー部の構造なんかをやや強化しつつ、RPD軽機関銃に慣れた兵士でも容易に扱えるようにした軽機関銃でして。二脚(バイポッド)を追加しストックの形状も変更されています。

AK/RPKの機関部を上下逆にしたうえで流用したのがPK
ただしこれは採用弾丸が7.62mm×54R弾(後述するSVDと同じ弾薬)なので、AKMとの互換性がありません。ただ、総合性能の高さから信頼性も大きく、現在でもPKの後継機種であるPKMが前線で使用されています。

で、ロシアのイジェマッシ社がライセンス生産しているのが近代モデルのAK74
これは1974年に正式採用されたからAK74となりますね。
ベトナム戦争で米軍のM16が使用する5.56mm×45弾の前に、北ベトナム軍が使用したAK47の7.62mm×39弾の不利を悟ったソ連が、小口径弾の採用を決定したことで開発されました。
AKMがベースとなっていますが、使用弾薬の小口径化(7.62mm×39弾→5.45mm×39弾)、マズルプレッサーの大型化、弾倉を強化プラスチック製に変更、などが大きな変更点です。また、中期モデル以降はストック部が木製のものから強化プラスチック製のものに変更されてもいます。

さらにそのAK74を弄ったのがAK74SAK74U
AK74Sはストックを折り畳み可能にしたもので、携行性を向上させたものになります。
AK74Uは銃身を切り詰めたカービンタイプになりますね。サプレッサーも装備可能なので特殊部隊向けといえましょう。

AK74を軽機関銃にしたのがRPK-74
これまたRPKと同じで二脚を追加しストックの形状を変更したものです。機関部がAK74と同一のため、生産性は向上していますし操作感も同じとのコト。部隊内での使用性が実質的に向上したといえますね。

さらにそのAK74を近代化したのがAN-94でして、これは案の定1994年に正式採用されたから。
強化プラスチック部品が多用され、ロングリコイルシステムを搭載したり、グリップと撃発装置を一体化しなおかつグリップを取り外し可能にして保管時の盗難や事故に備えている……と言われていますが、まぁ要するに銃の横流しを防ぐ措置ですよねコレ。
とはいえグリップと銃本体を別の場所に保管するともなると、即応性に問題が発生するんじゃないかと思いますがそこらへんは良いのか。

……と、ここまできたところで閑話休題。
みくるが持っているのはマガジン横のリブが3本なので、おそらくAK47だと思います(それを言うためだけに貴様こんだけ書いたのか)。
ちなみに軍用半自動狙撃銃の傑作として名高いSVDドラグノフもAK47のシステムを参考にして設計されていたりしますので、
ソ連の小銃関係は何かもうAK抜きに語れないのが現実でしょうか。

なお、たまに『ドラグノフとH&KのPSG-1のどっちが優れた半自動狙撃銃か』という議論を見かけたりしますが、それは本当にもうどうしようもない議論と言うかするだけ不毛と言いますか。
そもそも警察任務における狙撃と軍用任務における狙撃の重要性はまったく違っているのであります。

警察任務での狙撃はたった一人、または二人程度の犯罪者を即座に無力化しなければいけない関係上、一にも二にも精密さが求められ、『一撃必殺』または『一撃必中』が絶対条件。
そのためなら銃がバカ高かろうがクソ重かろうが問題ありません。逆にいうなら持ち運びが容易だろうが安かろうが何のメリットにもなりません

しかし軍用任務における狙撃とは、地べたを這いずり回って移動したり周りが敵だらけの中で相手の士官を射殺したり(バックアップ体制とてせいぜい観測手が1名程)するので、一撃必中よりも何よりも、携行性の良さと、過酷な環境に耐えて確実に作動する信頼性が求められます。もちろん精度が悪くては何にもなりませんから、ある水準以上の精度は必須となりますが。
狙撃手部隊の編成ともなればそこへ『限られた予算で頭数をそろえられるぐらいの経済性』も含まれるワケですから、そんな二つの銃を比較することはまったく意味がない、と言えましょう。
ちなみにPSG-1はSVDドラグノフの倍近い重量がありますよ。戦場に持っていけるモンなら持っていってみやがれチクショウ(何)。

なので、上記のような議論は同じ野球選手でも松坂とイチローのどっちが優れた選手か決めようとしているようなモンですよ?
スケールが近かったコトブキヤのまほろさんと。
もうちょっとだけバイクが大きければドンピシャのスケールになるかもしれません。
しかしこう、シチュエーション的には良いよね新車のプロモーションみたいな感じで!!
最後はマックスのみくると。
スケールが違うと言うのもありますが、造形のアプローチもかなり違っていて面白いところですね。


そんなワケでWaveのみくるバニーでありましたー。ブロックバスター価格にも程がある、と言いたくなるような低価格&一定以上のクオリティということで、何かレビューの盛り上がりはアレかもしれませんが満足満足でございました。
……しかしこう、AKの説明に全力を費やしすぎだよな、うん。

Waveの今後のラインナップとして、鶴屋さん&キョンの妹セットにハルヒの制服Ver.や長門も決定している模様。そうなると朝倉も欲しいです。