川崎重工120周年記念展-世界最速にかけた誇り高き情熱-
陸軍三式戦闘機『飛燕』二型改試作17号機 修復展示
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撮影日:2016年10月15日〜11月3日  撮影場所:神戸ポートターミナル 大ホール
さてさてさて。

川崎重工の創立120周年記念展『川崎重工創立120周年記念展 -世界最速にかけた誇り高き情熱-』が、2016年11月3日(木曜)まで、神戸ポートターミナルの大ホールにて開催中です。

川崎重工創立120周年記念展 -世界最速にかけた誇り高き情熱-

その目玉は何と言っても川崎重工の開発した陸軍三式戦闘機『飛燕』の実機展示!!
海軍機はともかくとして陸軍機なら飛燕が一番好きなので、この話は昨年からずーっと楽しみにしておりました。

日本軍で唯一の液冷エンジン搭載型戦闘機として制式採用されるも、そのエンジンが足を引っ張ってしまい生産が追いつかず、エンジンが間に合わず置きっぱなしだった「首なし飛燕」が空冷エンジンを積んで五式戦闘機になった……という話で有名だったりもしますが、そういった話も含めて大好きな機体。
ドイツ製空冷エンジンの国産化品『ハ40(二型からはハ140)発動機』を積んだことで実現した流麗な機首ラインや、これまた日本軍機としては初のファストパック型キャノピーによる力強い機体上面ラインなど、ひと目で「あ、飛燕だ」と分かる特徴があるのも良いですよね(生産末期には涙滴型キャノピーに改められていますが)。

今回展示されているのは岐阜県各務原の川崎航空機工場で生産された『飛燕二型改試作17号機』。
終戦時には東京の航空審査部に置かれており、米軍による接収後に横田基地で展示されていたため、戦後の機材破壊・廃棄を免れて奇跡的に残った機体で、世界で最もオリジナルの部分を多く残したものとなっています。

米軍が保管していたものが1953年に日本航空協会へ譲渡され、各地の行事や公園での展示が行われてきましたが、その過程でいろいろな部分が壊れたり紛失したり壊れたり紛失したり……で『飛燕としての姿』を保つ危機に。
1962年、アメリカ第五空軍の広報担当だったリード少佐の紹介を受け、米軍立川基地(当時)の整備隊による修復作業が行われました。この作業には飛燕の設計を担当した土井武夫技師らも参加したということです。

1963年に修復が完了してからは再び航空自衛隊岐阜基地や全国行事での展示を経て、1980年頃には塗装が暗緑色に変更。
また、飛燕運用で有名な第244戦隊のマークらしきものも描かれていたようです。
1985年、陸軍少年飛行兵出身者の全国組織『少飛会』の強い要望を受けて鹿児島県知覧市へ期限付きで貸出となり、『知覧特攻平和会館』で「特攻に使われた飛燕」をイメージした姿へ塗り替えられて展示が行われてきました。
知覧特攻平和会館 公式サイト
「飛燕の実機」として雑誌などで見たカラー写真はこの知覧での展示機体だった、という人も多いのではないでしょうか。

そして『飛燕』の製造工場であった岐阜県各務原市の『かかみがはら航空宇宙科学博物館』のリニューアルを2018年に控える中、日本航空協会へと返還された飛燕は、その生まれた地へと戻ることになりました。
日本の航空遺産である飛燕の修復と長期保存を望む日本航空協会と、飛燕ゆかりの地で川崎重工航空部門の歴史を伝えたい川崎の思惑が一致した、ということもあったようです。
そして飛燕を生んだ川崎重工の岐阜工場で修復された飛燕が、ついに120周年記念展でお披露目!!これはもう見に行くしかないですよね……!!ということで見に行ってきましたよ!!
修復・復元作業実施項目はパネルに掲載されていましたが、かなりの部分に手が入っている模様です。
まさか排気管整流器が欠損していたとは思いませんでしたね……誰だよ持っていったの……。
ホールに入って最初に見えるのは左後方からの飛燕。
飛燕といえば緑まだら迷彩がお馴染みですが、今回はその塗装を取り払っての金属地むき出し状態となっています。
飛燕を真後ろから。日本軍機らしからぬアスペクト比の主翼、その長さがよくわかると思います。
このスタイリングがやっぱり魅力的なんですよねぇ。
復元されたハ140エンジン用の過給器。
実物は現存しておらず、設計図面も残っておらず、という中で各方面からの協力を得て復元に成功したということです。
見た時の感想は「美しいなぁ……」でした。
こちらは修復チームが保有していた『ドイツ製の』DB603エンジン用過給器(実物)の分解状態。
コレの分解調査でハ140用の過給器を修復する手がかりとしたそうです……もう本当に凄い素晴らしい……。
そして現存する唯一の発動機『ハ140』!!!!まさかこの実物が展示されているとは思っていませんでした。
『空気取り入れ口』とか『排気管取付ヶ所』などの文字が直接書かれているのがなかなか楽しいところですが、戦中の現物もこうだったのかな?
復元された計器盤は単品で展示されていました。
たしかにこれをコクピット内に組み込まれても見れませんし、これはなかなか嬉しいところ。
唯一の欠点は
『時間によっては滅茶苦茶逆光になるところに置かれている』あたりですね…!!
胴体下部の冷却器、これも修復されていたんですが画像が手ブレで使えず申し訳ない……と言うか今度もう一回行って撮影してきます!!
後方から見るとコクピットに計器盤はまだ取り付けられていないのがわかります。
各務原の博物館に展示される際はどうなるんでしょうか。
ファストパック方式なのでキャノピー後部から連なる胴体がハイバック型なのもいいですよね。
実機でも意外にリップ部が分厚い過給器用冷却口。プラモでもあんまり薄々加工しなくていい感じですねこれは……。
ピトー管とライトの間に12.7mm機銃の銃口が見えますね。ラッパ型のマズル部分形状がよくわかりますが、模型で再現するのは難しそうだ……。
引き込み脚の格納庫だけではなく、カバーの裏側もライトブルーで塗装されているのが興味深かったですね。
また、見比べると尾部車輪の構造のシンプルさがなかなか可愛い。
ピトー管は思った以上に長く突き出しており、4つの段差があるのに気付かされました。
主翼への取り付けもY字型プレートで翼前縁を挟み込むように固定されてるんですね。
翼の上面・下面にある日の丸は今回の展示のみ、ということのようです。
各務原での展示の際にコレが再現されるかどうかは不明ですし、日の丸マークのある飛燕実機を見たい!という人は、今のうちに見に行っておいたほうが良いと思いますよ!
翼端も入れつつ機体尾部と全部をまるごと収めて。
鹿児島まで行かずに関西で飛燕の実機をこんなにもじっくり見れる日が来るとはなぁ……。
キャットウォークへ上がると飛燕を上から眺められます。
後ろ上方から飛燕を見下ろせなかったのはちょっとだけ残念ですが、いやぁそれでも満足度は落ちませんねコレは!!
20mm機関砲が搭載されていた機首上面。どこにどうビスが打たれていたのかなどもよくわかります。
かつての修復で取り付けられていた発動機カバーの部品も実物とは構造が異なっていたので、完全新規で再現したということ。
風防、キャノピー周りの修復裏話は面白い……というか「頑張ったなぁ」としみじみ思わされました。
異品とは言えそれがあったから知覧でも「一応の外形を保った姿で展示されていた」わけですし、
さりとて異品がくっつけられてたので今回の修復で大苦戦したわけですし……。
米軍の立川整備隊による修復の前には、この尾翼の上部も欠損していたようです。
逆にどうやってぶっ壊したのかがすごく気になりますね……そう簡単に壊れるような構造じゃないですよね……?
復元された配電盤と防弾板の展示も。
その他、川崎航空機が作ったジェットエンジンの歴史などに関する展示も。
さすがに実物とかモックアップとかは置かれていませんでしたが、なかなか興味深い話が見られました。
そして川崎といえばバイク!!……なのですが、展示は3台(+飛燕の足元に1台)という控えめなものに。
バイクのパネルも撮り忘れていますので、今度行ったとき再撮影してきます。

ということで、陸軍三式戦闘機『飛燕』二型改試作機17号、その修復機でした!!!
いやもう満足大満足、大変素晴らしい展示でありまして、叶うことならもう一度と言わず二度三度と通いたいところ。
関西、あるいは岡山県や香川県徳島県にお住まいの「神戸までならなんとか来れる」人、ぜひとも、ぜひとも見に行ってください……!!

今回の展示が終了したあとは川崎重工で保管され、2018年のかかみがはら航空宇宙科学博物館リニューアルオープンから、目玉展示として展示され続けるということです。
岐阜県各務原市:かかみがはら航空宇宙科学博物館
どうしても日程が合わない、遠い、という人は再来年の岐阜での展示に賭けてみるのもいいかもしれません。