視聴映画感想
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■13年12月16日 『図書館戦争』

少年による凶悪犯罪を受け、『公序良俗を乱し・人権を侵害する表現を規制する』メディア良化法が制定された日本。
武力を伴う検閲行動をもいとわないメディア良化法とその実行組織、メディア良化隊に対抗し、
日本全国の図書館は『図書館の自由に関する宣言』を掲げ、自らもまた武装した『図書隊』を結成、
良化隊の検閲行動から唯一の「書籍・表現物を守る組織」として、良化隊との長きに渡る抗争へと突入していった。
書店での良化隊の検閲から大切な本を救ってくれた図書隊員に憧れて、自らも図書隊へと入隊した笠原郁は、
厳しい教育課程を経て関東図書基地へと配属、さらに女性初の特殊部隊配属となる。
教練過程での教官でもある上官、堂上に反目しながらも日々の職務に励む笠原だったが、
ある日、現在の図書隊と良化隊の構図を大きく変える事態が発生する。
メディア良化法制定当時の良化法推進派による裏工作や不正の証拠、すべての報道記録を保管するという、小田原の情報歴史資料館。その理事長である野辺山が死去したのであった。
遺言により資料全ては関東図書基地へと譲渡されることとなるが、それは同時に良化隊による検閲行動の標的となることをも意味していた。
図書隊、良化隊ともに総力を投入する攻防戦が勃発する中、関東図書隊司令の仁科を護衛していた笠原は、
野辺山の葬儀へと参列中、武装した集団に拉致されてしまう……。
資料館の攻防戦の結末、そして笠原と仁科の運命は……?



今年2本目の「やるじゃないですか日本映画!!!!!!」枠ですが、いやぁ面白かった!!!
正直ここまでバシッと決めてくるとは思ってませんでした申し訳ない!!!!

地上波アニメ、劇場版としてすでに2回映像化された『図書館戦争』初の実写化ということで正直不安だらけだったんですが、
蓋を開けてみるとこれがもう、素晴らしい。よくぞやってくれた佐藤監督…!!という思いでいっぱいですね……。

ストーリーはあらすじに書いた通り、主に小説版の1巻『図書館戦争』を映像化した展開ですが、
2時間という尺の中で非常によく要素をまとめていますし、それに何よりもアクションの見せ方が素晴らしい。
日本映画での銃撃戦、といえば「軽い発砲音と頼りないマズルフラッシュ、手慣れてない感じがある銃の扱い」が定番ですが、
本作はその辺りの不安をものすごい勢いで払拭してますねー。特にアメリカまで行って収録したという発射音は文句なし。
9mm弾の『軽さ』、89式から放たれる5.56mm弾の『鋭さ』などがしっかりと聞き分けられて、耳に心地よい発射音祭となっています。
いやまぁ両方共に弱装弾使ってるっていう設定考えるとあんなフルロードの発射音でいいのかなぁとは思うんですが(笑)。

また、それを支える役者たちの銃の扱いもお見事の一言で、特に歴史資料博物館攻防戦で89式を扱う岡田准一の、流れるようなマグチェンジの動作……いやぁ惚れ惚れしますねぇ(ニッチすぎる視点)。
ともあれ、おかげで日本映画でも屈指の『屋内への突入をめぐる攻防戦』が描ききられていると思います。
重機関銃とかロケット砲とか登場しないけど、他はガチ。もうどこまでもガチ。防衛ライン爆破しながらの後退とか燃える燃える…!!

もちろん生身でのアクションシーンも実に見事なものがあり、特に終盤の格闘戦は圧巻の一言。
正直、ここまでのものが見られるとは思っておりませんでした(本日二回目)。

キャスティングも榮倉奈々が笠原郁、岡田准一が堂上、栗山千明が柴崎で、福士蒼汰が手塚、
そして有川浩さんが「稲嶺司令をやるなら亡くなられた児玉清さん以外考えられない」と言ったことから、
作中では故人扱いとなった稲嶺司令(児玉清さんの写真が使われてます)に替り、関東図書隊司令の仁科を石坂浩二が演じるという、
どれもコレもがバシッと印象にハマる、非常に良いキャスティングだったと思います。
笠原の銃の扱いが「固い」のも新人隊員、しかも鉄火場に放り込まれたキャラとしては正しいですしね…!
あと柴崎のイメージにドンピシャすぎる栗山千明の出番が少々控えめだったのが残念なところですが、
コレは第二弾以降に期待していいのでしょうか……!?
あ、笠原と堂上のラブコメ的展開もいい感じに盛り込まれていますし、過去の自分がライバルになっちゃう堂上とか、
乙女回路が暴走しがちな笠原とか、アニメとはまた違った雰囲気で見てて楽しいドラマパートになってます。
何よりも見てて痛々しくないっていうのが大きいなぁ……あ、あと玄田隊長も雰囲気ドンピシャですね(笑)。

表現の自由を守る、検閲に対して反対する、というメッセージ性もしっかりと保ちつつ、
過度に説教臭くならない塩梅と、そして日本映画でも屈指の屋内突入攻防戦、見ていて楽しいドラマパートなど、
非常に高い水準でまとまっている極上のエンターテイメントでしたし、これ劇場で見なかったのは失敗だったなぁ……と思うことしばし。
できれば第二作、三作と続いていってほしいものですが……!!!

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■13年12月15日 『ミミック』

ゴキブリを媒介とする伝染病、ストリックラー病がニューヨークの街で猛威をふるい、感染者は次々と死亡。
生きながらえたものも重度の後遺症に苦しめられていた。
女性科学者スーザンはゴキブリの天敵となる新種昆虫『ユダの血統』を遺伝子操作で開発、
疾病予防管理センターとの共同でニューヨークの地下へと放たれたユダの血統は、短期間で多数のゴキブリを駆逐した。
ストリックラー病は事実上根絶されたとみなされ、さらにユダの血統は自滅遺伝子により短期間で死に絶え、
ニューヨークは平穏を取り戻した。 そのはずだった。
3年後、地下鉄構内に住み着いているホームレスが次々と行方不明になる事件がひっそりと起きる中、スーザンの元へある昆虫が持ち込まれる。
それは繁殖能力を持たず、さらに一定期間で死に絶えるはずの『ユダの血統』の幼虫であった。
ユダの血統が突然変異で繁殖、世代を経て進化しているのではないか……事態の解明に動き出すスーザンたちだったが、
ユダの血統は想像を超える進化を遂げていた…!!


今をときめくボンクラ映画監督、ギレルモ・デル・トロの『パシフィック・リム』が届いたからには、こちらも紹介するしか!!!ということで、
デル・トロ監督渾身のパニックモンスター作品でございます!!!

この映画、近未来(という設定)が舞台でありつつもレトロ感のある画面作りが特徴で、
ディストピアではないけど『謎の感染病に侵食されたマンハッタン』という舞台が実に良い雰囲気で作られてます。
メインキャラの一つに『靴磨きの親子』とかをいれこんできたのもなかなかの渋さがありまして。
最近じゃ映画の中でもほとんど見なくなりましたよねぇこの存在……いやまぁ作劇的に必要だったかって言うと、うん、まぁ、その、子供の方な、お前な、本当な。
『ヘルボーイ』とか『ブレイド2』でもそうでしたが、やっぱりこう、少し懐かしさを感じさせるガジェットとかゴシック調の画面作りが好きなんだろうなぁデル・トロ監督……と思わされます。

序盤は謎の殺人鬼が静かに跋扈する『夜』と『ユダの血統の幼虫』を中心に物語が回り、後半は『ユダの血統』との戦いに切り替わりますが、
どちらも非常に雰囲気があって、残虐シーンがあるわけでもない(グロとか虫とか糞は多いよ)のに、ちゃんと怖い。面白い。
実に見事な塩梅の演出こそが、この映画をいま見ても「うわすげえ面白い」と思える一本に仕上げてるなぁと再実感するところです。
ユダの血統の姿も中盤以降まで隠して隠して見せないようにしていますし、低予算でも楽しませる・恐怖心を煽るコツがわかってるよねぇ……。
タイトルになっている『ミミック』もその単語の意味を考えれば「そう来たか!!」と思えますしね。
いや流石にあれで人間社会の中に〇れ○むのは無理だとは思うんだけど!!!思うんだけど!!!!

もちろん難点が無いわけじゃない、というか靴磨きの子供の存在理由がワリと本気で何回見ても「これ要らないんじゃね…?」感が拭えないんですけどもね……単なる庇護の対象でしかない、というよりもそれ以下の足手まといなキャラで終わっちゃったのはもったいなかった。
ただ、それ以外はあんまり文句なし。
モンスターに包囲された中での立て篭もりもありますし、地下鉄構内大爆発!!もド派手ですし、序盤の静かな雰囲気を後半のブーストで一気にひっくり返してみせた辺りの持ってき方、いやぁ本当楽しい映画です。

なお正当な続編『ミミックU』もありますが、こちらは監督も主人公も代わっているので要注意。
ただ、本作の中盤からまったく出番のなかったスーザンの助手であるレミが主人公となり、更に進化した『ユダの血統』も出てくるので、
デル・トロ節を期待せずに単なるモンスター系スラッシャー映画として見るならなかなか楽しめる一品だと思います。

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■13年11月27日 『エンド・オブ・ホワイトハウス』

ホワイトハウスを占領した40人の完全武装テロリスト VS 俺。

韓国首相との会談を控えたホワイトハウス上空へ謎の航空機が侵入。
スクランブルした米空軍の戦闘機を撃墜し、機体に搭載した機関砲で地上を無差別掃射し多くの犠牲者を出す。
空軍のスクランブル第二陣によって航空機は撃墜されたが、そのパニックの間隙をついてフェンス際での自爆攻撃が行われ、多数のテロリストがホワイトハウスの敷地へと侵入。
シークレットサービスの応戦も虚しくホワイトハウスへはテロリストたちの手に落ちた。
地下のバンカーへ避難していたアメリカ大統領と韓国の首相だったが、韓国首相のSPチームが突然武装決起、バンカー内も制圧されてしまう。
建国以来初の『大統領もろともテロリストの手に落ちた』ホワイトハウス。
だが、その中に一人、反撃を試みる者がいた。前シークレットサービスで、今は財務省に勤務するマイク・ハドソン。
事故を起こした車両から大統領婦人を救い出せず、一線を退くことになったマイクだったが、ホワイトハウスが封鎖される直前に財務省から駆けつけ、シークレットサービスたちを援護しつつホワイトハウス内へ潜入していたのだった。
現役時の知識と勝手知ったるホワイトハウスの構造、そしてレンジャー部隊で身につけた戦闘力……。
たった一人でテロリストたちを倒し、大統領とその息子、そしてスタッフたちを救えるのか……!?
そしてテロリストたちの真の目的とは…!?


学生時代に常日頃考えていた「学校に突然テロリストが乱入してきたら」「このショッピングモールに立てこもり強盗が現れたら」
などの妄想を映像化してくれることに定評のある映画業界(待て)ですが、また一本ボンクラ野郎の妄想を満足させる映画がきましたな!!!!!

このテの映画の金字塔といえばもう言わずと知れた『ダイ・ハード』ですが、本作はそのフォーマットをこれでもかと言わんばかりに踏襲し、
『孤立無援の凄腕主人公』『無害な生き残りに見せかけたテロリストの一員』『うかつに手を出して壊滅する強襲チーム』『使えねえ外部の専門家集団』などなど、いやぁ俺これどっかで見たことあるわー!!とゲラゲラ笑っておりました。

ただこの作品、主人公が「運が悪くてその場に居合わせた」ではなく、「襲撃を見て危険を顧みずに現場へ駆けつけた」あたりがポイントで、
シークレットサービスの任を解かれていながらも、その責任感や熱意はまだ消えていない男の復帰物語、ともなっています。

ホワイトハウス各所の隠しギミック(本当にあるかどうかは知らないけど)から通信機や装備を手に入れて外部と通信し、
あらゆるルートを使ってテロリストの目をかいくぐりながら移動、出くわした奴はとりあえず殺す。とりあえず殺す。ぶっ殺す。
丁寧に情報を聞き出してからぶっ殺す、泣き言は言わずにただひたすら前へと進んで相手を殺す、というあたり、
『元レンジャー』というあたりの設定の強みだなぁと思いますねぇ。特に一回だけ見られる尋問シーンは素敵ですよ本当……。
まぁジョン・マクレーンほどのユーモアと悪趣味さはなかったりしますけども(笑)。

対するテロリストはというと、ええ、まぁ、その、「しょぼい」んですが、これもまぁダイ・ハード的といえばダイ・ハード的かなぁ(苦笑)。
魅力のある敵役が一人もいない、というのは結構大惨事だったりするんですけども、まぁその辺りは『囚われた合衆国大統領』という要素がカバーしてるかな……という。
あとまぁ韓国のSPが全員テロリスト、というクソザルっぷりに盛大に笑うと良いかと思います。吹いたわ本当。

難点はもう一個あって航空機やら大破壊シーンやらが恐るべきCGクオリティ(悪い意味で)になっており、
そこだけ見ると「あーよく出来たゲームだけど質感の追い込みが足りないねー」と思ってしまったり。もうちょい頑張れCGスタッフ。

とはいえ全体的に見ればよく出来た作品に仕上がっており、『ダイ・ハード系』のジャンルの作品としてはなかなかのものだと思います。
惜しむらくは『ホワイトハウス・ダウン』と本作とがまったく同じ年に特にスパンを開けずに公開されたんで、多分これ「どっちがどっちだっけ」に後年なるパターンだというところですかね(苦笑)。配給元はもーちょい考えようぜ!!!!!!!!!
ということで『ホワイトハウス・ダウン』がリリースされたらそっちも見て記憶を混乱させる方向で頑張りたいと思います(ぇー)。

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■13年10月29日 『ロック・ユー!』

時は14世紀のイングランド。
騎士たちが己の実力を競う武闘会が盛んに行われる中、
馬上槍試合の中に死亡した騎士、エクター卿の従者であるウィリアムは身分を偽り、馬上槍試合に出場する。
エクター卿の練習相手を務めていたこともあり辛うじて勝利を収め賞金を獲得したウィリアムは、
騎士としての立身出世を目指し、同じエクター卿の従者だったワットとローワン、旅の途中で出会った文筆家のジェフリーたちとともに、身分を偽ったままに数々の馬上槍試合へ参加、勝利を収めていく。
貴婦人ジョスリンとの恋、強敵アダマー卿への敗北を経ながら成長していくウィリアム。
だがロンドンでの世界大会の最中、ついに身分を偽っていたことが露見してしまう。
逃亡を勧める仲間たちの声を前に、ウィリアムはひとつの決断を下す……。


ヒース・レジャーの初主演作にして、馬上槍試合-特にジョスト-をモチーフにした作品ですが、
いつ見ても血が熱くなる、まさに王道と呼ぶべきスポ根であり立身出世物語であり、非常に見ていて気持ちのいい一本となっています。
Ricottaの成人向けPCゲーム『ワルキューレロマンツェ-少女騎士物語』がテレビアニメ化され、
少女たちの馬上槍試合のガチ描写っぷりに賞賛の声が上がってる今日この頃、この映画を薦めねば!!!ということで!!!

この映画の何が面白いかってBGMがほとんど全部最近のロック曲で占められているというところですねー。
中世のイングランドだからとケルト音楽に走ることもせず、ひたすらにロック曲を!!という辺りの姿勢は決して嫌いじゃないぜ…!!!
最初のジョストシーンでの曲はクイーンの『We Will Rock You』なんですが、
観客があの『ズンズンチャッ ズンズンチャッ ズンズンチャッ ズンズンチャッ』ってリズムを手拍子で取ってるあたりで、
何かもう開始3分の時点で「うん、よし、分かった、こういう映画だな!!!」と思えるという(笑)。邦題はこの曲からきてますね。
原題は『A Knight's Tale』で、直訳すると『騎士物語』。このタイトルもワルロマに生かされてるなぁと思いつつ、
ラストでこのタイトルが何故こうだったのか、がストンと落ちてくる構造とかも実にお見事だったりします。

もともと馬上槍試合は貴族の娯楽、騎士の実力試し的なものでしたが、そこへ『作法も細かい技術も知らない、しかし恐れを知らない若者』が飛び込み、仲間たちとのドタバタ特訓を経て実力を伸ばしていく……と言うのは見ていて非常に痛快なのがあります。
最初は止まっている訓練用の盾にランスを当てることすら出来なかったウィリアムが、だんだんと腕を上げて、
最終的には吊るしてあるリングへランスを軽々と通す(ただしそのまま落馬する)シーンなんかは「ドリフかよ!!!」と笑いつつ、
成長っぷりが実に見ていて心地よいですしね。

また、ジョストのシーンはもう本当迫力満点、さすがに中世といえどもジョスト用に作られた槍を用いるものの、
今ほど洗練されておらず……というか材質がモロに木で作られた槍での一撃の重さ、見ていて「おぉぉぉ……」と声が出ます本当。
アレ食らって落馬しないとか無理や!!!無理やてアレ!!!!(ガタガタガタ)
フェザーズフライもなくて『ヘルメットに当たればポイント』というあたりはもう怖いとか言うより正気を疑うんですけども、
その『ヘルメットに当たる』ことでまさか物語が動き出すとか誰が予想したでしょうか(笑)。

貴婦人ジョスリンとの恋も、ウィリアムのことを騎士だと思い込んでいるジョスリン、
騎士としてのしきたりや貴婦人との接し方を知らないウィリアム、という絶妙な噛みあわなさがもどかしい。
心を震わせるような一世一代の愛の手紙(ただし仲間全員で頭捻って考えた文面)が届いてジョスリンと会ったあとの、
「私は、詩を聞かせて欲しいの!」「ごめん、準備ができてないんだ」とかな!!!
それでも徐々に距離を縮めていく展開なんかは実に良いなぁと思います。
だからといってダンスシーンがデヴィッド・ボウイの『Golden Years』なあたりはもういろいろやりすぎですが!!!

ドラマ的にもシンプルながら色々と見せ場があるんですけども、身分を隠し名前を変え、お忍びで馬上槍試合の競技会に参加した、高貴な方との縁の所なんかはすごく好きですねぇ。
正体を知って戦いを棄権する者がいる一方で、正体を知った上でその思いを汲み取り、正面からぶつかるウィリアム。
これがラストの展開にもつながってくるんですけども、生まれは違っても誰よりも『騎士らしい精神』を持つに至ったウィリアムの姿は、
本当に輝いて見えます。最後のジョストシーンなんかカッコ良すぎてもうね!!!たまらんよね!!!
まぁ代わりにアダマー卿、あんたの精神性は……いやまぁ当時ガチで戦争行ってたような人ならああなるのかもしれませんが。

ともあれ『ワルキューレロマンツェ』を見てジョストという競技に少しでも興味が出た方、
あと痛快な中世騎士物語が見たいなーという人には全力でオススメしていきたい一本ですね。
エンドロール終わったあとに流れる映像、これがまた頭悪くていいですしね!!!(ぇー)

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■13年10月26日 『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 【新編】叛逆の物語』

ネタバレを含むため、未見の方はご注意ください

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■13年10月18日 『藁の楯』

政財界の大物、蜷川の孫娘が暴行を受けた末、遺体となって発見された。
容疑者は過去に同様の事件を起こして逮捕され、出所したばかりの青年、清丸国英。
怒りに燃える蜷川は新聞社の整理部を抱き込み、「清丸を殺害したものへ10億円を支払う」という、前代未聞の広告を全国紙に掲載した。
世間に激震が走る中、清丸は潜伏先の福岡で協力者に襲われたことから逃亡を断念、警察へと出頭し逮捕された。
警視庁は福岡から警視庁へ清丸の身柄を移すために、捜査一課の刑事に加え、『凶悪犯の身辺警護要員』として2人のSPを福岡へと派遣する。
警察の威信をかけた大々的な身柄移送作戦が実行されるが、10億という報酬に目が眩んだ市民、そして警官たちが次々に清丸の殺害を企てる。崩壊する計画、数を減らしていく護送メンバー。
凶悪な殺人犯を守るために命をかけるという不条理に向き合いながらも、任務を遂行するSPたち。
一方で、警察の中で蜷川の意を受けた幹部たちが、ひとつの命令を下そうとしていた……。



『ビー・バップ・ハイスクール』の作者が原作だよ!!!という評判でついつい小説の方は敬遠しちゃってたんですが、
三池崇史がメガホン取っての映画化!!!ということで、レンタル開始即座に見てみましたが、いやぁこれ、うん、いいぞ!!!

凶悪犯の護送に伴って巨大な懸賞金が動き、警察や市民が護送チームを襲う……という展開はアメリカ映画『S.W.A.T』でもありましたが、
あちらは凶悪犯自身が「俺を助ければ金を払うぞ」だったのに対し、こちらは「すでに犯人捕まってるけどそいつぶっ殺してくれ」という、
全く違う方向からのアプローチなんですよねこれ。
司法の裁きなんか役に立たねえ、ぶっ殺してやるよという『私刑』を許すべきかどうか、という。

司法の裁きを受けて服役しながらも、出所後すぐに殺人を犯した犯人を、それでもなお『殺してはいけない』のか。
凶悪犯の身柄を守るために、警官たちが命を捨てるのは本当に正しいことなのか。
そういった重いテーマを抱えながらも必要以上にジットリドロドロしていないのは、三池監督の作風が上手くハマった感じでしょうか。

清丸を護送するメンバーも、『犯人を逮捕する』側の立場である刑事と、『要警護対象を全力で守る』SPとのぶつかり合いが面白く、
それぞれに自分の使命を抱きつつ、任務への疑問を隠せない……というあたりは良かったですねぇ。
その『クズだけど守られなければいけない対象者』の清丸は本当にもうクズでクズでクズでクズで、
藤原竜也が演じてきたキャラの中でもぶっちぎりのクズ・オブ・クズでして、これでまた藤原竜也サーガに新しい1ページが刻まれたよやったね!!!

というか『インシテミル』の後にこれが入ってくるともう救いがないんだけどいいのか!!!!(※同じ時系列に組み込むのはやめましょう)
地上波で放送されたらこれまた実況が盛り上がるんだろうなぁ……。

アクションシーンはキレ良くまとまっており、クリア過ぎない映像と相まって非常に見ていて『心地良い』です。
高速道路での大規模な車両部隊による護送シーンは台湾で撮影したらしく、ちょっと邦画では見たこと無い感じのスケールでしたねー。
爆発物満載したトラックが突っ込んできていわゆる『ダークナイトクラッシュ』をやっちゃうのは若干どうかなぁとも思いましたが、
「車は使えねえ!!」という展開に説得力持たせるなら、まぁアリかなと(笑)。

新幹線の車内でのアクションも台湾撮影らしいんですが、カメラアングル限られてるけどカット細かく割ってスピード感保ってますし、
正直ここ数年の『大作』と言われた日本映画の中でも、『見ていて気持ちいい映像』としては相当な上位に入りますね……。
やっぱり日本映画の映像ってクリア過ぎないほうが見てて落ち着きますねぇ(苦笑)。

骨太なアクションドラマ刑事物、というのが好きな人にはぜひぜひオススメしていきたいところですし、
「日本映画でもこれだけのものが出来る!!」というのを味わう意味でも、ぜひぜひ見ていただきたい一本になりました。


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■13年10月09日 『オゾンビ』

2011年4月、アメリカ海軍の特殊チームに強襲され殺害されたオサマビンラディンだったが、
死の直前に自分へとある薬を注射しており、ヘリでの遺体輸送中に突如復活。
パニックに陥ったヘリは海上へと墜落し、ビンラディンの遺体は行方を眩ませてしまった。
米軍はその事実を伏せたままビンラディンの死を発表するが、同時に特殊部隊を派遣し、ビンラディンが再び潜伏しているというアルカイダの拠点を叩こうとしていた。
現地で拠点捜索任務を果たしていたNATO軍の分隊は、アルカイダの兵だけではなくゾンビとなって襲ってくる死者との戦いを強いられていく。
航空部隊による爆撃の時間が迫る中、アルカイダの拠点を発見し、ビンラディンを再び殺すことは出来るのか…!?



……うん、いやぁ、久々にすごい(色んな意味で)映画を見ましたね!!!!!
『オサマ・ビン・ラディンをゾンビにする』という心底ロクでもない(褒め言葉)発想は良かったとは思う!!!

……ただその、ビンラディンをゾンビにしたよ!!という要素はあくまでも脇役、というか、
『ビンラディンをもう一度殺すためのNATO軍の兵士たち』がメインであり、ゾンビを使ってる組織の側の描写が薄いのが勿体無いところで。
正直ビンラディンが題材である理由はそれほど感じられなかったんですよねぇ……。
ビンラディンのゾンビと同じ施設で暮らすアルカイダのメンバーが噛まれたり感染したりって言うマヌケな描写は欲しかった…!

物語の内容的には主役のNATO軍分隊の「何でお前らここにいるの」がさっぱりわからないままなのはともかくとして、
ビンラディンの生存を信じて何故か単独でアフガニスタンに飛んできた元消防士のオッサン(やや頭が残念)な人とか、
それを追っかけてきた元消防士のオッサンの妹とか、「お前ら全員どうしてここにいるんだ」が常に付きまとうんで、
その辺りの疑問を脳から全部追い出しておくことをオススメいたします。具体的には焼酎2杯ぐらいを推奨ですね。

ビンラディンは「パキスタンで殺されて海に落っこちたのが何故かまたアフガニスタンのアルカイダ拠点にいる」というあたりも、
何かもう「何故そこにいるのか」を考えてはいけません。多分制作側も答えとか用意してないと思います(焼酎3杯目)。

んで「自爆テロではなくゾンビテロ」を合言葉に、囚人や兵士をゾンビ化させたアルカイダが、
そのゾンビにする薬(これは正体が作中で明言されています)を使ったテロを目論んでるということらしく、
そのへんでやっと「あぁそういうことですか!!」と合点がいきますが、そこからがあっという間に終わるのでハラハラ感が無い(笑)。
ゾンビの系統としてはそんな動きが早いわけではないけどノロノロでもない、という中間タイプで、
噛まれた・引っかかれたら感染、5分ぐらいでゾンビ化……というのはクラシカルなスタイルですなー。
分隊のメンバーが一人、また一人とゾンビに噛まれたり、アルカイダ兵との銃撃戦で斃れたりしていく辺りは結構丁寧に描かれており、
見ていてグッと来るものもあったりしましたね。

アクションシーンは仮にも『米軍の強行偵察チーム』がメインなのでフル装備、ライフル、アサルトライフル、SAW、バーレットに拳銃、手榴弾から謎のマチェット型日本刀みたいな変態アイテムまで出てくるんですが、おかげであんまりゾンビが怖くない(苦笑)。
ナイトシーンでゾンビの襲撃が!!というのも無いことは無いんですが、それも最初だけなんだよなぁ……。
そういうのを見てるとあの『ゾンビ大陸アフリカン』はすごかったなと再確認したり。

根本的には何をどう考えてもバカ映画以外の何物でもなく、期待して見るような作品ではないんですけども、
どうせならビンラディンのゾンビに豚の生肉を食わせてゲラゲラ笑いを取るような不謹慎路線に行って欲しかったなぁ(やめろ)。
それで制作側がイスラム過激派から脅迫されたりしてこそ面白いじゃないですかこういう不謹慎映画!!!(やめろ)

なお、コレと同時に届いたのが、ビンラディン殺害を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』であり、
続けて見るとちょっと脳が溶けるのは確定だったので、取り急ぎこっちから見たというですね!!!(ぇー)

ともあれビンラディン周りのあれこれ抜きにして見てみれば、割と普通のゾンビものだったなぁというか、
ひっどい画作りとか尋常ならざる安っぽさとか、そういうのはなかったので「フル装備の歩兵VSゾンビ」というのが見たい人には是非おすすめしたく。
…いやぁ本当、これビンラディンとかいう部分を抜きにしたらもっと楽しく見れたんだろうけどなぁ(苦笑)。

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■13年9月17日 『L.A.ギャング・ストーリー』

1949年のアメリカ、ロサンゼルスはマフィアのボスであるミッキー・コーエンによって牛耳られていた。
コーエンの王国を守るのは部下のギャングたちと、そしてコーエンに懐柔され、弱みを握られた政治家、そして警官たち。
そんな中、コーエンに屈しない警官の一人であるパーカー本部長からの勅命を受け、極秘の特殊チームが結成される。
目的はただひとつ、どんな手を使ってもコーエンの王国を叩き潰すこと。
警察としての身分を隠し、バッヂを携帯せず、警察組織からの援護も受けられない中、たった六人の戦争が始まった。



そんなこんなで戦後アメリカのマフィア世界の中でも知名度はトップクラスであろうミッキー・コーエンを逮捕した、
実際に存在したというロサンゼルス市警の特集チームの物語ですが、いやぁ久々に良いハードボイルドだったなぁと思いました。

第二次世界大戦から戻ってきて見れば街はギャングに牛耳られてるとかふざけんな!!!という怒りを胸に、
自らもまたギャング化して武装闘争を繰り広げる警官たちの、『綺麗事では世界を変えられない』感じが素晴らしい……。

賭場を襲撃し、火を放ち、電信設備を破壊する。見張りのギャングは逮捕せずに叩きのめす。
着実にコーエンの足元を崩しつつ、正義を執行する自分たちもまた、憎むべきギャングたちと同じになっていくという苦悩。
「息子が育つ街をあんな奴に牛耳らせたくない」という思いでチームへ参加した警官が、
「息子には自分がしてきたことを知られたくは無い…」ってつぶやいたりね。
綺麗事や正攻法ではどうしようもない状態に陥った時の、苦肉の策である『武力』『暴力』というものの重さをきっちり描いてたのは良いなぁ。
このへんはやっぱり40年代・50年代アメリカが舞台、ってのがしっくり来ますね。
最近だとそういうのすっ飛ばして銃を撃ちまくるアメリカンヒーローが多すぎる…いやそれも大好きなんだけど!!!!

映像は若干クリアすぎるかな?というところもありましたが特に文句をいうほどではなく。
ただ終盤の銃撃戦がやたらと「3Dにしたいの…?」って感じの映像だったのにはちょっと驚きました(苦笑)。
もうちょっと落ち着いた、ドッシリ構えた銃撃戦でも良かったんじゃないかなぁと思うんだけどね。
それでもトンプソン短機関銃を使っての撃ち合いは非常に迫力があり、ナイトシーンで銃口から伸びるマズルブラストは素晴らしいなぁと。
そんな中でも拳銃にこだわる老ガンマンを演じるロバート・パトリックがまた渋いんだ……。

あと出番の少ないパーカー本部長がニック・ノルティだと知って噴いたりね。年食ったなぁニック・ノルティ……!!!!!!
いやまぁショーン・ペン(コーエン役)に対抗する意思を持ちながらも、自分はもう歳をとりすぎてしまっている、という苦悩は非常に良かったと思います。

なおコーエンを逮捕した後のロサンゼルスが平和になったか…というと、そのあたりは10年ぐらい前の映画『L.A.コンフィデンシャル』で描かれており、これがまぁ何というか諸行無常というかですね……。権力の空白地帯怖いなぁ!!!(白目)

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■13年9月04日 『ロック・オブ・エイジズ』

1980年代、ロック・シティとして絶頂を極めたロサンゼルス。
夢を抱いて田舎から飛び出して来たシェリーは、憧れのサンセットストリートへ到着早々、荷物をひったくりに奪われてしまう。
数々の伝説を持つライブハウス、バーボンルームでロックスターになる夢を抱いて働くドリューに助けられ、
ともに働く事になったシェリー。二人は惹かれ合い、恋に落ちていく。
やがてドリューが夢に見続けたバーボンルームのステージへ立つ日がついに訪れるが、
それはバーボンルームでロック人生をスタートしたスーパースター、ステイシー・ジャックスと彼のバンド『アーセナル』の凱旋ライブの前座としてだった。
ステージの直前、ステイシーの控室から出てくるシェリーを目撃したドリューは昏い気持ちを抱いたまま熱唱するが、ステージには喝采の嵐。
ステイシーのマネージャーから即座にスカウトされたドリューは、シェリーに別れを告げる。
失意のあまりバーボンハウスを離れ、ストリッパーとなるシェリー。
ロックシンガーとしてのキャリアを歩むはずが、「もうロックは古い」というレコード会社の方針でポップス歌手の道を歩まされるドリュー。
一方、成功の影で自らの歩む道を見失っていたステイシーはロック雑誌の記者コンスタンスと出会い、さらにシェリーの情熱に触れることで、再び立ち上がろうともがき始める。
ロサンゼルス市長とその妻の方針で、サンセットストリートの浄化・ロック廃絶運動が勢いを増していく中、
自らの歩む道を見失った若者とロックスター、自分たちのいる場所を守ろうと奮闘するバーボンルームのオーナーたちの熱意が再び交差するとき、まさしく伝説的なロックステージの幕が上がる…!!!!




っということであらすじがエライ長くなりましたが、いやぁ素晴らしい映画でしたロック・オブ・エイジズ!!!!

もとは80年台を舞台にしたロックミュージカルとして舞台公演されていた作品を、『ヘアスプレー』のアダム・シャンクマン監督が見事に映像化、
BDで見て悶絶しまくり「これ劇場で見なかった俺の大馬鹿野郎が……!!!!!!」と自分を責める羽目になりました(苦笑)。

基本的には
『夢のためにもがく若者、夢を掴んで道を見失ったスーパースター、夢のための舞台を守ろうと奮闘する人々』
の物語なんですが、80年代を彩ったロックンロールの名曲の数々がそこに華を添えています。
ガンズ・アンド・ローゼズにナイトレンジャー、ボン・ジョヴィ、ポイズンにジャーニーなどなど、『80年代ロックといえば』のミュージシャンたちの曲が実にイキイキとした使われ方をして、これがもう本当に心地よい…!!

物語的にはもう、見事なまでのハッピーエンドで、見事なまでのアメリカンロックンロールの物語。
ご都合主義と呼ぶなら呼べ、それでも見ていて心底気持よくてスカッとして感動できる、これだよこういうのでいいんだよ!!!と思いますねぇ。

トム・クルーズは見事にロックのスーパースターであるステイシー・ジャックスを演じきり、
ダブルキャスト無しであの頃の名曲『パラダイス・シティ』や『Suger On Me』や『Wanted Dead Or Alive』を熱唱。
これがまたえっらいカッコよく、そらステイシーの姿を見た女性ファンが卒倒するわ!!!という説得力抜群でして。
酒と女に溺れたメタメタなロック歌手から、まさに『スーパースター』へと復活する姿はもうお見事の一言。
男の目から見てもめっちゃ痺れますねぇおトムさん……さすが『トロピック・サンダー』で謎のデブハゲ親父に変身してエンドロール直前で気持ち悪いダンスをノリノリで披露しまくっただけのことは(それはまた違う話だ起きろ)。

また、トム・クルーズ以外のキャストも全身全霊を込めたかの如き熱唱を見せてくれるのが非常に嬉しいところで、
メアリー・J・ブライジは『お気に召すまま』を歌い上げており、これがまた猛烈にカッコよくてしびれるわけですよ……!!!



ラッセル・ブランドがアレック・ボールドウィンと『涙のフィーリング』をデュエット(ここは大爆笑せざるを得ない)したかと思いきや、
サンセットストリート浄化運動の急先鋒な市長婦人を演じるキャサリン・ゼタ=ジョーンズも『Hit Me With Your Best Shot』を見事に歌いきっておりまして、



これがまた見事にハマりきってるという(笑)。
さらにラッセル・ブランドとキャサリン・ゼタ=ジョーンズとの『シスコはロック・シティ』と『We're Not Gonna Take It』のマッシュアップ・ソングバトルがサンセットストリートど真ん中で繰り広げられるという大盤振る舞い。
ここはシビレましたねぇ、2つの楽曲がまるで1個の完成された曲みたいになってるのが心底たまりません。

そして物語の軸になるシェリーとドリューの二人もまた素晴らしく、彼らが作った(ということになっている)
『Don't stop Beleivin』の使われ方がもうねー、素晴らしくてねー、本当もう……!!!!
ドラマ『Glee/グリー』でも使われたことで人気が再燃している楽曲ですが、やっぱりいい曲は時代を超えるなぁ、としみじみ思います。

メイキングを見てるとアレック・ボールドウィンが歌の収録にえらい苦労しながらもすごく楽しそうだったのが印象的ですし、
『あの頃のロックンロール』を体験してきたキャストたちが、自分たちの手でその楽曲を『背負う』覚悟が見えたのが本当に素晴らしかったなぁ。
実際、あの頃にサンセットストリートやレコードチャートで活躍していたロックシンガーたちが撮影の現場にやってきて、
ものすごく懐しそうな、そして嬉しそうな眼差しを向けていたのが印象的でした。
「完璧だよ!!あの頃の空気そのまんまだ。髪の毛のセットに3時間かかった。みんなバカだった」ってコメントが出たりね(笑)。
それぐらい、ギラギラして、謎のエネルギーが渦巻いて、汚くて、バカで、それでいて愛すべき空気感が蘇ってるというか。
いや、もちろん80年代ってさとっちさんがまだ小学校入った頃の話なので、見てきたわけじゃないですけどね!?

日本でいうとコレに匹敵する勢いで『空気感を蘇らせた』作品って……うーん、『ALWAYS 三丁目の夕日』ぐらいかな……?
わかりやすくいうならコミケ会場の空気感を、俯瞰じゃなくて等身大の目線から描くのに成功した、というレベルですからねぇこれ…。
この辺りはもう、見事に60年台のテレビショー全盛期&公民権運動の空気を『ヘアスプレー』で蘇らせたアダム・シャンクマン監督の本領発揮というところでしょうか。。

なおBDにはメイキング以外に「80年代、サンセットストリートでブイブイいわせてたロック・ミュージシャンたち」のインタビューや、
80年代のロックミュージックシーンがどんなものだったのか、の説明(これがまたわかりやすい)などが収録されており、
今から80年代のアメリカ発ロックンロール・ミュージックに初めて触れます!!という人の入門としても非常に良い作品になっています。
見事に蘇った『80年代のサンセットストリート』の空気と相まって、見る人の年齢によって『懐かしい空気』『新鮮な空気』でうけとめられる作品だと思いますし、「ミュージカル映画はちょっと……」と苦手意識を持ってる人にも比較的入りやすい題材かなと思うので、
ぜひとも、ぜひとも見ていただきたい一本です……!!!!


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・BDはこちら→ロック・オブ・エイジズ(Blu-ray Disc)
・サウンドトラックはこちら→ロック・オブ・エイジズ オリジナル・サウンドトラック [Soundtrack]
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■13年9月02日 『貞子3D2(3D版)』

前作から5年後。
女性を次々に拉致・誘拐の末に殺害した凶悪犯にして、『呪いの動画』製作者である柏田が逮捕され、死刑判決が確定。数々の死と災厄を振りまいた事件はついに終焉を迎えるかに見えた。
だが前作で貞子復活を食い止めた茜と孝則は安寧の日々を得られずにいた。
娘である凪の出産と引き換えに茜を喪ってしまった孝則は育児を妹の楓子に任せ、自らは携帯も持たず病院で働く日々。
一方、楓子は凪に対する接し方に戸惑い続け、それ以上に途方も無い不気味さを感じていた。
そんな中、世間では謎の怪死事件が多発、さらに凪の周りでも不可解な死が頻発するようになる。
凪の正体とは?孝則が風子に隠し続ける秘密とは?恐怖にさらされ続けながらも、必死に生き延びようとする風子の運命は…?



っということで地上波でも放送されタイムラインにとんでもない爆笑と困惑をまき散らし、
「なんかとんでもないものを見た気がする」といろいろな人に言わしめた怪作『貞子3D』でしたが、その続編が公開となりまして!!!
アレを見た以上はこれ見に行かねば……ということで見てまいりました!!こみトレ行った帰りに!!!(濃い一日ですね)

で。

結論から申しますと。



節子これ貞子やない!!!!『オーメン4』や!!!!!!


いやーーーーーー『人を呪い殺す力を持った少女』が、気に食わない友人や大人を次々に殺していき、
確たる証拠は見つからず、身近な大人が真相に近づくと更にそれをも殺そうとしたり……というあたり、
実に『オーメン4』です本当に有難うございます。
いえまぁ完全にオーメン4と同じ、とかいうこともなく、ちゃんと凪の側の心情とかも描かれたりはしますけども。

…ここで終えてもいいんですがやっぱりちょっと語りたいことはあるものでございまして。ええ。

前作は英勉監督がインタビュー(BD付属のメイキング)で
「Jホラーを撮ろうとは思っていなかった。見に来た人が驚いたり怖がったりしてくれるアトラクション映画にしようと思っていた」
と言っていた通り、なんというかホラーというカテゴリに収まらない(気を使った表現)楽しい楽しいバカ映画に仕上がっており、
それと同時に「3Dであること」に全力投球しすぎた結果ボディがガラ空き、2Dで見ると残念感がすごいことになるという実に愛すべき作品だったと思うのですが、
今作はそこから方向転換して完全にJホラー『系の』作品に仕上がっています。
何故に『系の』と括ったかというと、全体に流れる雰囲気こそJホラーなのに、完全にびっくり箱映画になってしまっているからで。

驚かせ方が『効果音ドーン!!!画面の奥から手前に向かってグワーッと!!!!』という感じなので、
だんだんと慣れてくるともう展開がわかってしまって驚きが無いと言いますか。驚かせ方にテクニックをあまり感じないんですよね。
凪が持ってる不気味さはそれなりに良い感じで描かれているだけに、これは惜しいところで。もうちょっとバリエーション欲しかったなぁ。
3Dであることが大事なのは分かるんですが、3Dは別に魔法のテクニックでも万能でもなく『使い所次第』ですしね……。

あ、あとJホラーの雰囲気を醸し出してる要素の一つに「画面全体がどこまでも薄暗い」というのがあるといいますか、
家の中でも照明をほぼ付けずにブルーグレーの重苦しい雰囲気。研究室の中でも照明ほぼなしのブルーグレーの重苦しい雰囲気。
何このすごい節電映画(震えながら)。

そりゃ子供の情操教育にも悪いわ!!!凪もあんな子供になるわ!!!!!!!!

なお前作から引き続き続投する孝則は見事に『クイーンを喪った結果この世アレルギーをさらにこじらせた紅渡』でありまして、
こいつが凪の育児放棄をブチかましたからこんなことになったんじゃなかろうなという気がしてなりません。
というか凪の世話を押し付けておきながら、楓子に裏の事情とか一切説明してない辺り実にロックです。
いやまぁ仮面ライダー世界だと割と普通だけどなこれ……。

前作で石原さとみが鉄パイプや石で量産型貞子(多脚強攻型)をぶっ飛ばしてたアクションシーンに関しては、
本作の主人公である楓子が『異能の力を持たないただの人』であるのと、直接的に何かに襲撃されるようなシーンが少ないため、
それほど無い……んですが、さとっちさんが腹を抱えて大爆笑してしまうぐらいにすごいシーンがひとつあったので、
そこは期待していただいてよろしいかと思います。
いやぁまさか髪の毛を○○レ○○ーにホールドされてそのまま○○かと思ったら、逆に○○レ○○ーを○り○しながら辺りを薙ぎ払うとかそのまま走ってくるとかちょっと予想すら出来なかったよ!!!!!(満面の笑顔で)


んで見に行った人が100人いたら120人がツッコむであろう「あれ、柏田お前生きてたの」という。はい。
いやぁさとっちさんも劇場で暫く開いた口がふさがらなかったわけですが、よくよく前作のBDを見返してみますと、
たしかにアイツの死体って出てきてませんしね…はい……。

……いやそれ前作の時点でもーちょっと上手いこと説明できなかったのかよ!!!!!!!!(バンバン)

通算6回目の見直しで『貞子3D』に対してやっと怒りが湧いてきたよチクショウ!!!!!!!!!
それに柏田が生きてた必然性って○○が○の件で助言を求めに行った時のワンシーンのためですし……
いやぁあれ、ちょっと、うーん、必要…だったのか……(大汗)。

なおストーリーに関しては「えええええええ」という感じではあるものの、
本作(と前作)が『らせん』と『ループ』の間に位置するエピソードであり、『ループ』世界がその終着点、というのを踏まえると、
おおよそキッチリと『ループ』に向かって進んでるなぁ、というところなので、特に文句はなかったりします。
いや正確には『ループ』という逃げ道があるからもう何やってもオッケー状態投げっぱなしカモンというか。おのれ鈴木光司。
そういう意味ではこれ見に行く前に『ループ』読んどいたほうがいいかもしれませんね……。
そうじゃないとちょっとあの、ラストのオチがギャグにしか思えなくなる可能性は…否定出来ない……。
ただ、前作でも見られたような『エピソードの羅列』感は結構あって、正直そういう点はあんまり評価出来ないなぁ、ってのはありますが。
結局あの落下してきた○○さんは一体どうなったんだよ!!とか。最初に不審死したあの人の○があの○○だとかそれ伏線って言わねえよ!!!とか。


あ、あと見に行った日のツイートと日記の方で、
「キモになるスマフォのアプリが起動しないままだったのが最高に面白かった」と書きましたが、
これ『貞子3D 3D版』と『貞子3D スマ4D版』って分かれてるんですな……さとっちさんが見たのは普通の3D版だった、と…はい……。
この点、こちらの認識違いだったこと、深くお詫び申し上げます。
ただ、『スマ4Dで新体験!!』と謳ってるワリにそこら辺の周知が今ひとつキッチリと成されてない感があるので、
見に行こうかなーと思ってる人は『スマ4D版』かどうか、キッチリ確認したほうが良いかと思います。
ぶっちゃけスマ4Dで見るという新体験への期待が大きかったので「あっれー」ってなったのが大きいのは否めない!!
次機会があれば、こう、スマ4D版で見てみたいところではありますねぇ。アレは新機軸として体験しとかなくちゃいけない気がしますし。


・前作はこちら→貞子3D 2枚組(本編2D&3D blu-ray・特典DVD付き)
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・こちらも読んでおきたい→ループ (角川ホラー文庫) [Kindle版]
■13年8月30日 『ガッチャマン』

私、ゴーリキアヤメ16歳!!!
なんか謎の侵略者に地球が支配された世界で、弟と一緒にガッチャマンとかいうヒーローの一員やってます!
醜いスーツ着せられて侵略者の兵隊を嬉々としてぶっ殺してる自分にちょっとイライラするけど、
リーダーのケンがカッコいいから、いつか手料理食べさせてそのままベッドインを狙ってるの!!
でもケンってば朴念仁で全然振り向いてくれなくて……そうこうしてるうちにヨーロッパからケンの知り合い、ジョーがチームにやってきたわWOW!!!!
これはケンの過去を知るチャンス……地球のことなんかどうでもいいけど気になるア・イ・ツのハートを射止めるために頑張っちゃうんだから!!!

『剛力彩芽・改 劇場版 適合者でも恋がしたい!』


あらすじ的にお前これどうなんだと思わないでもありませんが、何一つ間違ったこたぁ書いてませんからね!!!!(いい笑顔で)
そんなこんなで試写会当日から大荒れになったYahoo!の映画ユーザーレビューやら、映画見ずに記事書いてる疑惑がつきまとう某前田の映画批評やらでフルボッコになってた『ガッチャマン」ですが、初日に見てきましたよ!!!!!

結論としては「言われてるほど悪くない、極普通に良い所もちゃんとある日本映画の典型的な普通のボンクラ映画」でした。
いやぁこの映画に『DEVILMAN級』『クソ映画中のクソ映画』とかレッテル貼るのはあまりにも要求ハードルが高すぎるというか、
正直コレがクソ・オブ・クソだとしたら去年公開の日本映画でどれがセーフだったのかといいたい(苦笑)。

まじめにあらすじを書くとしたら、

侵略者ギャラクターによって支配された地球の中で、人類は限られた地域に押し込められ、もはや滅びを待つだけだった。
ギャラクターへ対抗できるのは世界に28個のみの【石】に適合し、【石】から放出されるG粒子を力へと変えられる戦士のみ。
人は彼らをガッチャマンと……呼んでるっぽい。多分。
国際科学技術庁(略称ISO)がギャラクターへの最終反攻作戦を進める中、ギャラクターのNo.2であるイリヤが権力闘争に敗れ、人類側への亡命を打診してくる。
受け入れるべきか殺すべきかでそれぞれの思いを胸に秘めたまま、亡命希望者イリヤの保護任務に当たるガッチャ……エージェントたちだったが、作戦中に思いもよらぬ事態に襲われる。
人類決死の反攻作戦は成功するのか、人類の命運を握るギャラクターの計画『ラストスーサイド』の全貌とは何なのか…!!


……というところでしょうか。はい。どちらかというと冒頭に書いた内容のほうが正確な気もしますが。
なにせこのあらすじだと発狂系スイーツ脳女ことゴーリキ=アヤメさんの出番が無いしな!!!!!
まぁそれは後回しにするとして、映画自体の感想を書いていきましょうかね……。
デビと比較するとどんな映画も傑作になるんで、あくまでも単品として見た場合の話から。

総評しちゃうと先述の通り「演出と脚本がダメでVFXは頑張っててそれなりに見どころはある典型的な日本のボンクラ特撮」

冒頭の新宿決戦はVFX担当の白組の本領発揮、というだけでは足りないぐらい、
「日本映画でもここまでのものが見せられるのか!!!!!!」と拍手を送りたくなるぐらい素晴らしかったですねぇ。
ギャラクターの兵士の描き方とか若干「もうちょっとこうしたほうが良かったんじゃないの」という部分があったりもしますが、
それは好みの範囲内での話で収まるレベルの物ですし。
通り一本隔てた向こうで大破壊が進行していくあの空気感とか、空中戦・ビルや標識を使った跳躍アクションの部分に関しては、
ここ数年の特撮アクション作品でもトップクラス。これは本当に胸を張ってもいいところだと思います。
真昼のアクションシーンであれだけのものを見れるとは本当思ってなかったなぁ。
俳優も戦隊ヒーロー出身のシンケンレッドこと松坂桃李とか、変態仮面こと鈴木亮平とか、スパイダーオルフェノク……と言うよりはるろうに剣心の外印こと綾野剛とか、『動ける』人が出てますしね。

脚本に関してはまぁ、うーん、極普通の2時間枠特撮ものというか、米村センセとか敏樹とかの作品を体験してると、
「まぁこんなもんじゃね」と思えてくるぐらいの内容だったかな、と。
場面のつながりが悪いのとか説明不足とかはかなり頻繁に見受けられますけども。
少なくともとりあえず『破綻してる』ところまでは行ってない、ギリギリのところで踏みとどまってはいる、と思います。ええ。

……というか、正直コレもう『科学忍者隊ガッチャマン』という作品の実写化とかそういう方向すっ飛ばして、
完全オリジナルのスーパーヒーロー物として作ってればもうちょっと良かったんじゃないかなぁとは思います。
いやまぁそれだとこの規模の予算とかスタッフ集められない、ってのもわかるんだけど!!!!!!
なにせ『ほら、この作品、ガッチャマンすよー』って主張してるのが、画面に出てきて緊張感をそぎ落とす小ネタの数々で、
どちらかと言うと見ていてイライラするものばかりでしたし。
「名づけて、科学忍法○○!」って事あるごとにドヤ顔で言い放つジンペーは顔面もみじおろしの刑に処しても良いレベル。

ついでに『科学忍法火の鳥』は予告編とか事前情報でもちらほらと出てきてましたが、いやぁ、アレ、すごいぜ!?度肝抜かれるぜ!?


悪 い 意 味 で 。


火の鳥の出てくるシーンはクライマックスもクライマックスなんですが、俺ここまでグッと来ない使い方は想像してませんでした(白目)。
エメリッヒ版『GODZILLA』のトカゲ野郎が車を噛み砕いて口の中で爆発!→「ほぅら火を噴いてるみたいだよねHAHAHA」とか、
実写版スーパーマリオ魔界帝国の女神でのジャンピングブーツみたいなレベルで酷いので、ちょっとこう、別にガッチャマンに思い入れがない人もお怒りになってよろしいかと思います。
大スクリーンに浮かぶ火の鳥は確かに良いビジュアルしてるんですが、使い方一つで、こうも『死ぬ』かと……すごかったね……。

あ、もちろんここでもジンペーがドヤ顔で言い放つ「名づけて科学忍法火の鳥!」がこちらのSAN値をゴリっと削り落とすので、
なかなかに腹筋と己の忍耐力の鍛錬になるのではなかろうかと。
いやぁ本当、アレなぁ、中の人間に言わせてどうすんだ……アレを見ている『外部の人』に言わせてこそああいうのはグッと来るもんだろうに……!!!!!!

まぁこの『科学忍法火の鳥』に関しては監督がどうこうと言うよりは、
タツノコプロからのアドバイスで「最後は○○○に突っ込んでいけばいいんじゃないですか」というのがあったっぽく、
それを踏襲したらあんな大惨事になったっぽい(パンフでのインタビューによる)ので、誰が戦犯というか……タツノコお前さては投げたな……?


あ、ちなみに

劇中では誰ひとりとして『ガッチャマン』と発言も発音もしておらず、映画のメインタイトルも読みあげられないので、映画上映時間の120分近くの間、一切『ガッチャマン』という単語は耳に入ってきません。

……お前これ本当にガッチャマンなのかこれ…どこに原作愛があるっていうんだ……ハッピーバースデー、デビルマン!!!!!

人物ドラマはというと、もう、あの、はい、お察しくださいレベルなんですけども、
ここで注目せざるをえないのが発狂系スイーツ脳女ことゴーリキ=アヤメ、改めジュンさんですよ。
画面のどこにいてもいつランチパック食べながら踊り狂い始めるか、いつどこから和田アキ子と森三中が出てくるか、
いつどのタイミングでauのプランを勧めてくるか、常にこちらに緊張を強いてくるあの存在感ときたらもう……全方位から攻めてくるぞ!!
正直なところヒロイン力はゼロというか針を振り切る勢いでマイナス方向に突入してるんですが、
ヒロインではなく(監督の脳内と小説版のあとがきにだけ存在する)裏設定にあるらしい『暴走の危険性が高いキャラ』だと思えば、
非常に正しく描かれていたんじゃないかと思います。危険性が高いっていうかスイーツ脳方面に暴走しっぱなしでしたが。

ていうか任務の真っ最中にケンに過去の女関係問いただすな。あしらわれて逆ギレすんな。

リュウを演じる鈴木亮平は相変わらずの力強い演技力と、時折見せる優しさのコントラストがいい感じでしたし、
パンフによれば「鹿児島弁でしゃべると鈴木亮平が自分から提案した」らしいんですが、これがまたグッとハマっており。
ジンペーに関しては見てて殺意の波動を抑えるのに苦労する感じなんですが、これまたパンフによれば
「監督から原作アニメは見なくて良いと言われました」「監督からはグリーンバックの撮影の時に、360度全部空です。目の前には直径4kmの○ー○○○ン○がいますと言われるだけでした」、とかいう衝撃的な発言が転がり出ても来てるので、まぁ怒るのもかわいそうなところではあるかなぁ。
キャラとして嫌いなのに変わりはありませんが。

あと某前田のサイトで批判されてた「俺は1000万人を救うために一人の命を見捨てるという、その考えを否定する」ですが、
そこだけ聞いて批判してるのが見え見えの馬鹿批判といいますか、

その後に続く言葉こそが大事な、ケンの成長を示す台詞である

という点、作品と脚本家の名誉のために申し上げておきます。
ぶっちゃけ『天は人の上に人を作らず』とか『健全な精神は健全な肉体に宿る』の後に続く部分が大事なのに、そこに目を向けずに上っ面の部分だけドヤ顔で子供に教えてる教師とかと同じレベルのクソ読解ですよあれ。本当に酷い。
あれだけはあまりにも理不尽な批判過ぎますので、真っ当に(寝ずに)見た人間としては、ちょっとこう。
まぁそのケンの行動を『成長』と取るか『堕落』と取るか、は人それぞれですけどもね。


なおあくまでもパンフの範囲内の話ではありますが、本作、やっぱりちょっと監督がアレだったみたいでして、

SF考証担当「監督からは、原作に囚われずに新しいことをやろうと宣誓された」

コスチュームデザイン担当「監督からはガッチャマンのスーツは黒で、という注文があった。けどこちらとしては当時のカラーである白は落とし込みたい、ケンは絶対にブルーを基調にしつつ絶対に白にしようと」

脚本「最初はケンの父親とケンの父親の物語を軸にした、ガッチャマンVSギャラクターの物語として書いてたところ、監督が入ってきてから『幼なじみ男女三人の三角関係の物語』にしようと言われた」

監督「スターウォーズで言うならEP4に当たる作品なので設定とかメッチャ考えたけどあんま深く描いてません。あえて説明してません。公開から3ヶ月後ぐらいに自分のブログでどーんと紹介しようと思ってますよ(笑)」



……おいやっぱりこの映画、

監督が最大の癌だったんじゃねえの!?


……なお小説版の作者の人がTwitterで
「監督のあとがきにあった設定の一部は、小説執筆時に聞かされていないものも多くありました。」
「小説においては、映画で語られたことと、小説自体で語っていること以外は、僕の頭の中にはありませんでした。」
……とかつぶやいてるのを見ますと……本当もう……(嗚咽)。


とまぁ長々と感想を書くことになってしまいましたが、キータッチの手が軽やかに踊り続けるぐらいには色んな意味で楽しめる作品でした。
見た人が「ひどい映画だったね」と言いたくなるのも分かる作品ではあるんですけども、
もし仮に『評判が酷いからあの映画はクソ。見ないでいい。叩いて良い』っていう人がおられましたら、
ぜひとも『見てないなら口をつぐんどけ。叩きたいなら見に行け』と申し上げていきたいところです。


近年稀に見る感じで映画経験値がモリモリ貯まる作品ですし、『本当に酷い』かどうかを決めるのは世の評判じゃなくて、見た貴方自身がどう思ったか、ですしね。 それに少なくとも白組渾身の新宿決戦は大スクリーン大音響で見る価値が有るよ!!!
……まぁ、その、それ以外だと強烈に印象に残るのがゴーリキさんの発狂系スイーツ脳キャラぐらいなので、
3ヶ月ほど経ったら記憶の中から相当な勢いで消える系作品な気配もプンプンしますけどね……。

・小説版はこちら→ガッチャマン (角川文庫) [文庫]
・ムック本はこちら→映画「ガッチャマン」オフィシャルブック [単行本]
・何故か引き合いに出されたデビルマン実写版はこちら→デビルマン [DVD] (2005)
■13年8月20日 『パシフィック・リム』

カイジュウと 巨大ロボットが ぶん殴りあうよ!!!!

いやーーーーーーーデル・トロ監督ありがとうございます!!!オタクやっててよかった!!!!!
と、見終わったあとにまずそんな思いでいっぱいになった、本当に最高の映画でしたね……!!!!!!!

あらすじはもう『太平洋の海底に開いた異次元とのゲートから現れる巨大怪獣を、巨大ロボでブチのめせ!!』というシンプルなもの。
映画の冒頭で一気にダーーーーーーっと世界観の説明がざっくりと行われますが、
『巨大怪獣出現→現用兵器群でなんとか撃退→でも怪獣の出現ペース的に限界がある→巨大ロボ(イェーガー)を開発して立ち向かおう!』という、何か我々日本のヲタ的には見たことのある図式ですね(笑)。

イェーガーの活躍で怪獣は打倒可能となり、『決死の戦い』ではなく『怪獣VSイェーガーというエンタテイメント』となるものの、
怪獣の進化と度重なる戦闘で次第にイェーガー及びパイロットを喪失、人類は迎撃よりも防護壁の内側に閉じこもることを優先、
イェーガー計画の指揮官は最後に残った4機のイェーガーを使い、決死の反攻作戦に出ようとしていた……という話がメインストーリー。
何か色々と見たこと・聞いたことのあるシチュエーションやら何やらですが、それらが上手いこと作品世界に溶け込んでて、
見ていて笑顔になるんですよねぇこれ……!!!!!!

イェーガーのデザインはシンプルで、絶妙な着ぐるみ感もありつつフルCGでグリグリガシガシ動かせるのものに仕上がっており、
見ていてシンプルに「おおおおおおカッケエえ!!!!!!!!」と思うこと請け合い。
アメリカ、オーストラリア、ロシア、中国のイェーガーが登場しますが、どれも楽しいデザインと機能に仕上がっており、
活躍度合いは千差万別(日本のイェーガーも出るけど回想シーンのみの登場なので殆ど動いてない)ですが、
どれもが愛おしく、「あいつの活躍もっと見たかった……」と思わされましたね。サンダークラウドフォーメーションとか!!!!!

どのイェーガーも歴戦の勇者で、それぞれにドラマがちらっと語られるのがまた想像の余地を持たせてくれまして、
「第一世代型で唯一の生き残り、6年間ウラジオストクを守りぬいて、一度もカイジュウの侵入を許さなかった」とか、
「最初で最後の第五世代型イェーガー、最速の機体」とか!!!おいスピンオフ作品早く!!!!(バンバン)
そういう機体群がカイジュウとの戦いに身を投じ、ボロボロになりながら、人類の勝利をもぎ取るために必死に食らいついていく、
その辺りの描写ときたらもう、これに燃えずして何に燃えるというのか……!!!!!!!!!

対するカイジュウも絶妙な着ぐるみ感を残しつつ、着ぐるみでは決して出来ないアクションを実現し、
海で、陸で、イェーガーと壮絶な戦いを繰り広げる……まさに『ライバル』『敵役』として素晴らしい存在感です。
EMP攻撃とか溶解液とか、そのへんの胡散臭い(褒め言葉)攻撃バリエーションもバッチリですし!!!

市街地でのバトルは主に夜の香港(ワンシーンだけ昼間のオーストラリアがあるけど)で、
華やかなネオンと立ち並ぶ高層ビル群のど真ん中での殴り合いはもう『素晴らしい』の一言。
香港といえば『ゴジラVSデストロイア』でゴジラが上陸した土地でもありますが、本格的に大バトルの舞台になったのはこれが初、かな?
ビルをブチ抜き道路を砕き、巨大な質量同士がぶつかり合うバトルシーンはもう「あぁ俺、これを楽しめるオタクでよかったぁ……!!!」と思わされましたねー。

人物ドラマが薄い、とかの声も聞こえてきますが、うん、まぁそりゃそうだし否定はしないんだけど、

「だ か ら ど う し た」

と言わんばかりのデルトロ監督の「俺はこれが撮りたいんだよ!!!!この映像作りたいの!!!!!!」という叫びが伝わってきて、
あーもー細かいこたぁいいんだよ!!!!!!という気持ちになります。素晴らしい。たまらぬ。
キスシーン?そんなものは要らぬ!!!要らぬのです!!!!!(バンバン)
その分、というか吹き替えの声優が杉田とか林原めぐみとか池田秀一とか浪川大輔とか玄田哲章とかおい待て何だこのガンダムパイロットの多さ(杉田除く)。
この吹き替え陣の豪華さなので、もう少々のドラマの薄さとか気になりませんよ本当……!!
杉田は久しぶりに紳士かつカッコいいヒーローですし、玄田哲章は静かでありながら闘志を秘めた司令官ですし、
林原めぐみは戦いに身を投じる事を望む女ファイターですし、池田秀一は歴戦の勇者だったし。
浪川は、うん、浪川だったね。暗黒浪川かと思ったら一瞬でいつもの浪川扱いに!!!

マッドサイエンティストに怪しげな裏世界の商人という要素も『等身大の目線での戦い』を描く上で一役買っていますし、
そのマッドサイエンティストも吹き替えが古谷徹と三ツ矢雄二というあたりがまた(笑)。
裏世界の商人の吹き替えはケンドーコバヤシでしたが、ほとんど違和感がなかったですねぇ。

TLでもちらほらと上がってましたがこの映画、確かに『減点方式で採点していくなら』70点とか80点なんですが、
加点方式で採点していくとあっという間に青天井、何点つけても足りねえ!!!という感じになる映画でして。
本当に見ていて心地が良い、気持ちがいい、ありがとうございます!!とお礼を告げたくなります。
エンディングまで一気に駆け抜けるが如き疾走感のあるストーリーテリングと、圧倒的なまでの『怪獣映画』っぷり。
そして日本のそういった作品群へ敬意を捧げつつも、この映画を見事に『デル・トロ監督の怪獣映画作品」に創りあげてみせたデル・トロ監督の手腕、いやぁ堪能させていただきました!!
よしみんな『パンズ・ラビリンス』と『ミミック2』借りてこようぜ!!(ぇー

懸念されていた「これ制作費ペイできるの……?」という問題に関しても、
制作費190億円に対してアメリカ国内での興行収入98億円、というなかなかめまいのする数字が出てきたりはしつつ、
それでも海外での興収が非常に好調で、特に中国で100億近く稼いでるという調査結果も出てきており。
Pacific Rim (2013) - International Box Office Results - Box Office Mojo:

これなら最終的にはきっちりと黒字を確保、もしかして続編とかスピンオフとか期待しちゃってもいいですか…!?

・副読本とも言える小説版はこちら→パシフィック・リム (角川文庫) [文庫]
・小説版の電子書籍版はこちら→パシフィック・リム (角川文庫) [Kindle版]
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■13年8月13日 『ライジング・ドラゴン』

度重なる各国からの侵攻と略奪・収奪によって世界各地へ散っていった清王朝の秘宝。
それらを再び取り戻そうとするアンティークディーラー、マックスプロフィット社は、
『アジアの鷹』と呼ばれるトレジャーハンターのJ・Cへ、秘宝の収集を依頼する。
信頼出来る仲間とチームを組み、各地のコレクターの元へと侵入、秘宝を盗み出していくJCだったが、
その行く手には強敵や陰謀が立ちはだかるのだった……。



ジャッキt−イェン最後のアクション映画主演大作!!!と銘打って公開され、
石丸博也氏が公開初日のステージに呼ばれたりと話題にはなった本作でしたが、

うーーーーーーーーーーーーーーーーん。

ジャッキー最後の主演大作、という部分を差っ引くと、控えめに言っても「いやぁ見どころのない映画でしたね」という感じであり。
逆に「これがジャッキー最後の主演大作である、と考えると
どちらかと言えば醜悪な映画、という部類に入ってしまうかなぁ……。
いつもなら映画の良かった探しをして語るんですけども、ちょっと本作はそれが難しいというか、うむ。

間違いなく今までのジャッキー映画の集大成ではあるんですが、そこに新鮮味は全く無く。
ストーリーも『プロジェクトA』とか『プロジェクト・イーグル』と同じでほとんど無きに等しい感じなんですが、
そこへ「過去に奪われた中国の宝は今現在がどうあれ全部中国のもとに戻るべきだ!!!!」という、
いささか以上に傲慢かつ乱暴なメッセージ性がこれでもかとばかりに出てきており……。
なにせ現在の持ち主から盗み出すことを全く悪いことだと思っておらず、しかもそれが義憤とかではなく『ビジネスとしてやっている』というのが表現されてるあたりに関してはもう何をか言わんや、という。
世界でも有数のアクションスターでも最後の最後に伝えたいことってこんなもんなのかなぁ、と悲しくなりました。

ギャグに関しても薄ら寒く、アクションでも「おぉすげえなぁ」と思えたのは冒頭のローラースーツアクションだけであり、
ただしフルフェイスのメットなのでジャッキー本人かどうかは不明、という不完全燃焼感。
もちろんカンフーアクションも入りますがそこに必然性は皆無だったりね……。
どうにも『集大成』ではありつつも、取捨選択せずに適当に今までやってきたことを放り込んだ『だけ』のような、
適当さを感じてしまいました。うーん。

悪いことは言わないので、ジャッキー・チェンは素晴らしいアクションスターだった、という記憶を保ち続けるならば、
ちょっと本作は控えたほうがいいかもしれません。
物語とか政治的主張とか一切全く気にせず、ただただジャッキーがアクションしてる!!ってだけで満足ならまた別ですが……。
ちょっとこう、レンタルで途中から1・3倍速で見てもこれだけむかっ腹立つんだから劇場で見たら凹んでただろうなーと思うしか無い一本でしたね……。

・BDはこちら→ライジング・ドラゴン 特別版(2枚組) [Blu-ray]
・ジャッキーの集大成ならこっちをオススメしたい→ジャッキー・チェン 〈拳〉シリーズ Box Set 2 [Blu-ray]
■13年8月06日 『ダーク・タイド』

海洋生物学者のケイトはシャークダイビング(サメと一緒に泳ぐ)中、同僚のダイバーがサメに食い殺されたことにショックを受け、シャークダイビングの世界から遠ざかり、今ではオットセイツアーを運行して生計を立てていた。
だが客の入りは悪く借金はかさみ、とうとう船まで差し押さえられる寸前に。
そんな中、疎遠になっていた夫のジェフから連絡が入り、富豪の親子をシャークダイビングへ案内するよう持ちかけられる。
一度は断ったケイトだったが、金額の魅力には抗えず、渋々ながらもシャークダイビングへと船を出すことを決意。
だが、富豪の男性の無茶な要求は次第にエスカレートし、船は危険な外洋へと進路をとることになる……。



はい『アカデミー賞女優ハル・ベリー』よりも『ラジー賞の授賞式に出てきてアカデミー賞受賞の時のスピーチをセルフパロディしたハル・ベリー』という認識の強い(それは貴様だけだ)ハル・ベリーが久しぶりに主演した作品、
しかもサメ映画となればこれはとんでもねえB級臭だろうと見るしかねえぜ!!!!!と思って見てみたんですが、


どうしようこれ……B級とかそういう問題じゃない……(頭を抱えながら)


……いや、その、公式サイトとか見てるとですね、どう見てもですね、
『サメに襲われたシャークダイビングの一行が死闘を繰り広げるサバイバルサメアクション』だと思ってたんですが、

ま っ た く そ ん な こ と は な か っ た 。

どっちかというと人間同士のいさかいのほうが多いっていうか映画の9割以上じゃねえかこれ!!!!!!!
この感覚、映画の『宇宙戦争』見たとき以来ですよ!!!!!!何だこの肩透かし感!!!!!!!!!!!!


目先の大金に目が眩んで「危険だとわかってるけどシャークダイビングに連れて行くわ」なハル・ベリー、
目先の大金に目が眩んで「嫁が危険な思いをしたシャークダイビングにもう一回嫁を放り込もう」とする旦那、
「金払ってるんだから俺の好きにさせろこのクソムシども」な富豪、
今ひとつ役に立たない機関エンジニア、カメラ大好き(5D使い)な富豪の息子、
こいつらが延々と船の上で「危険だつってんだろクソが!!!」「金払ってる客にちゃんと案内しろよゴミが!!!」
「ダイビング中にケージ開けて外に出るとかバカじゃねえのかテメエ!!!」「無事だったんだからいいだろうがボケ!!!!!」

など、バカと大馬鹿野郎と大阿呆が延々と口汚く罵り合いを繰り広げる『だけ』の時間が、
上映時間110分のうち、実に70分ぐらいあります。あと陸で繰り広げられるドラマの時間が30分ぐらい。


……つまるところ


サメが出てくる時間:正味10分ぐらい。


……しかもですねー、サメが出てきても、凶暴化して襲ってくるとかそういうのじゃなくて、
サメ「あっ、はい、とりあえず齧っときました!」で、何か勝手に人間がその影響で死にます、というマイルドっぷり。
終盤も終盤、シャークダイビングツアーのうち一人がそれで死ぬんですけども、
ぶっちゃけた話をしますとこの映画、冒頭の『同僚』と、シャークダイビングツアーの『乗員』合計3名しか、
サメに襲われて死なないというですね、どうしようこれ……。
しかもモグモグいかれるシーンは暗くて何されてんだかさっぱりわかんないままに血が広がるだけなので、
グロ耐性のない人でも安心してご覧いただけます(投げやりに)。

更にいうと冒頭のはともかくとして、終盤でモグっといかれる方の人に関しては「まぁサメいなくても死んでるよね」なうえ、
ツアーの全員が死にそうになる理由が「サメに襲われて」ではなく
「富豪の暴言に切れたハル・ベリーが無茶して外洋に乗り出して波に煽られたから」だという、
『サメは単なる物語の動機でしか無い』という辺りの、この、すごい肩透かし感。
というかどう考えても悪いのはテメエだハル・ベリー。馬鹿じゃないのか海洋生物学者。


大自然の脅威を描く、という部分では『人間があまりにバカ過ぎた』ことで失敗しており、
『一番危険なのは人間の慢心』という事を描こうにも『慢心じゃなくて単なるバカですし…』となってしまい、
サメに関しては『これサメがいなくても成立したよね?美しさとかも描けてないし』というレベルで、
すべての要素が見事に表現失敗、噛み合わせも悪く、罵り合いの描写だけは天下一品の胸糞悪さ
正直この映画のどこをどう『良かった探し』すればいいのか……今の僕には理解できない……。

なお、この映画の売りの一つに「本物のホオジロザメを使って撮影しました」というのがあるっぽいんですが、
『本物を使ったからといって面白くなるとは限らない』『そこにリソース割くよりも先に考えるべき事がある』という、
作品作りの上での注意点をシッカリと学べる…という意味では、反面教師として良い作品なのかもしれませんね……。

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■13年7月29日 『眼下の敵』

ドイツ軍のUボート艦長であるストルバーグはイギリス軍の暗号情報を手に入れ、
味方艦艇との合流を目指して南大西洋上を航行していた。
一方、アメリカ軍駆逐艦『ヘインズ』は「民間人出身」と揶揄されるマレル艦長の指揮のもと、
トリニダードの港を目指し航海する中で、ストルバーグの指揮するUボートを捕捉する。
ヘインズによる爆雷攻撃を回避しながら友軍との合流地点を目指すUボートに対し、足止めを狙うマレル。
ともに相手を強敵と認めつつ、知恵を尽くして敵艦を撃沈せんとあらゆる手を尽くす両艦長だったが、ともに限界が近づいてくる中、押されつつあったストルバーグはやがてヘインズの行動に一定の法則性を見出す。
起死回生の一撃を叩き込む行動へと打って出るストルバーグの意地はついにヘインズを捉えるが……。



っということで『艦隊これくしょん〜艦これ』が大ヒットしてエライことになっていますので、
じゃああの時代の艦艇が死力を尽くして活躍する映画つったらこれでしょ!!!!!!ということで、
往年の名作いやむしろ傑作、1957年公開の『眼下の敵』でございます。

元は太平洋航路の三等航海士だったものの、船が魚雷によって撃沈され妻を失い、潜水艦への憎悪を秘めたマレル艦長。
第一次大戦からの潜水艦乗りでありながら、二人の息子を軍人として失い、機械によってはじき出される数値に基づいて行われる戦闘に『人間味が失われている』と感じている老兵、ストルバーグ艦長。
立場も経歴も全く異なる二人の男が、駆逐艦と潜水艦の艦長として、知略を尽くしての戦いを繰り広げる、
濃密でぎゅっと詰まった100分の映画ですが、いやぁいつ見ても本当すごいですよこの映画……!!!!

本作で最大の特徴は、どちらが善でどちらが悪、といった描かれ方が全くない点ですね。
戦争なんかクソ食らえだ、という批判的な思いを抱えたままの両者の戦いはどちらに重きをおいて描かれることもなく、
むしろチェスプレーヤー同士の戦いを見るかのような、非常にフェアな戦いとして描かれています。
もうなんというか「頑張れヘインズ!頑張れUボート!!!」みたいな気持ちになってくるというか(笑)。

バックレイ級駆逐艦のヘインズから発射される爆雷は米海軍の全面協力によってすべて実弾が使われており、
海面に巨大な水柱を立たせながらドカドカと景気よくUボートを攻撃するシーンは迫力満点。
ここはもうCGなどでは真似の出来ない、『撮影当時にまだ実物があった時代だからこそ』出来た映像ですねぇ。
Uボートはさすがにミニチュアですけども良い雰囲気ですし、爆雷の至近弾にじっと耐えつつ、離脱・あるいは攻撃のチャンスを伺う、
潜水艦乗りのしたたかさを存分に感じさせてくれますしねぇ。
ヘインズ艦内でも戦闘配置の号令がかかると同時に有機的な動きを見せる艦内の人員……かと思いきや、
ソナー員が相手を探ってる待機時間に釣りとかマルバツゲームをしちゃう甲板配置の兵、とかいう緩さもちょっと面白いところで。

物語の結末もまた、ともに船乗りであるマレルとストルバーグのシーマンシップを感じさせるものになっており、
非常にグッと来るんですよねぇ……艦長の行動に触発された兵士たちが取った行動とかも含めて。

とにかくもう『第二次世界大戦で本当に活躍していた』艦艇の実物が、実物の兵器をぶっ放しつつ、
死力を尽くして戦う映像が見れる……というだけでも本作を改めて見る価値はありますし、
濃密な駆逐艦VS潜水艦の戦闘だけでなく、人物ドラマにも注目できる、本当に『傑作』と呼ぶに値する本作。
Blu-ray版が出てない(あと吹き替えも収録されてない)ところは悔しいんですが、DVDが1000円程度のお値段で販売されてますので、
艦これで「あーアメリカ軍艦艇も実装されないかなぁ」とか思ってるダメ提督の皆様、どうですか。どうでしょうか。


・DVDはこちら→眼下の敵 [DVD]
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■13年6月22日 『REC/レック3 ジェネシス』

『REC』『REC2』の惨劇から遡ること数時間。コルドとクララは結婚式会場で、幸せに包まれていた。
式の様子を撮影していたカメラマンたちだったが、新郎の叔父が徐々に体調を悪化させていくことに気づく。
やがて披露宴の最中、叔父が突如二階から飛び降り、参加者に次々と噛み付き始める。
時を同じくして、凶暴化した人々がなだれ込んできたことでパニックとなる披露宴会場。
コルドとクララは安全地帯へ逃げ込む中で離れ離れとなってしまう。
悲嘆にくれる二人だったが、互いに館内放送を使って生存を伝え、ともに地獄のような式場からの逃亡を図るが、
すでに敷地内は感染者によって占領されていた……。



っということでシリーズ三作目はアンヘラの物語を離れて『感染騒動の同日・同時刻、違った場所での惨劇』となりますが、
いやー……アレですね、全2作では2人の監督の共同作品だったんですけども、何があったか今回はその片方の単独作品でして。
嫌な予感はしてたうえに、しろがねさんの感想を聞いて「あっこれ地雷なんですね」とは思ったものの、
ならばどれぐらい酷いことになってるのかなぁと思い見てみたんですが、


も う R E C で も な ん で も ね え 。


とにかくこの映画…というか『REC』シリーズの醍醐味ってPOV視点を使い、主人公がカメラマンあるいはレポーターであることでの
『孤立した空間で生き延びようとする人たちが記録した映像』というところにあると思ってたんですが、



な ぜ 開 始 20 分 で P O V 形 式 を 投 げ 捨 て た の か 。



いやもうこれネタバレとかそういうの抜きで書いとかなきゃいけないと思うんですけどもこれ単なるゾンビ系映画だ!!!!!!!!

POV形式で描かれるのってぶっちゃけ結婚式の幸せな様子と披露宴会場での惨劇(3分ぐらい)ですよ!!なんだこれ!!!!!!!おい『REC』どこ行った!!!!!!!!!!!


……いやぁ本当、冒頭からカメラマン2名いたんで新郎側と新婦側に別れてそれぞれのカメラで撮影した映像が交互に出るのかなーとか思ってたんですが、
まさか一人のカメラが逆上した新郎によってぶっ壊された時点でPOV形式はお役御免、
さらにもう一人のカメラマンは安全地帯に逃げ込んでそこで出番終了、という……どういうことなの……。
いえまぁどっちにしても新郎がカメラマンと離れてクララを助けに行く時点でPOV形式の出番は無くなったろうとは思うんですが、
これはもう……あまりにも……どうしてこうなった……(頭を抱えながら)。


感染者の性質的に絶対安全圏である礼拝堂へと逃げ込んだ新郎コルドが、花嫁を助けるため甲冑に身を包み盾と剣を携えて敷地内へと舞い戻るあたりでは頭を抱えて「どうしようこれ……」ってなりますけども、更にその上を行く展開というか、


まさか本作最強の対感染者ウェポンが……チェーンソーでもなんでもなく……〇〇だとは……(再び頭を抱える)。


前2作(主に2)で判明した感染者の大本の正体とかアレへの反応とか見てるとそりゃまぁそうなるんでしょうけども、
いやぁまさか館内放送で〇〇の〇〇を流すだけで状況打破できるとかこのリハクの目を持ってしても……(ぐるぐる目)。

とりあえずもうこの世界の対感染者部隊に必要なのはサブマシンガンでも拳銃でもヘルメットでも防弾チョッキでもなく、
ラジカセ担いで〇〇の朗読を流しながら練り歩くヒップホップスタイルだというのが判明したわけでありまして、
今年公開予定のREC4が楽しみですね……どうなるんだあれ……。


いえまぁそれでも前2作とは違って『幸せの絶頂から一気に大惨劇へ』という悲劇っぷりはたまらないものがありますし、
カメラ視点が言わば『神の視点』になったことで、脱出行や感染者との戦いに関しては前2作ほどの息苦しさはなく、
むしろウェディングドレスで、「偶然たまたま式場の敷地内トンネルに転がってたチェーンソーを振り回して感染者真っ二つにしていくウェディングドレス姿の花嫁クララ」とかのちょっと頭のネジが外れた映像とかを楽しめます。
いや、待て、いいからそこで向かっていくなよ花嫁。逃げろよ。

オチの取ってつけたような後味最悪っぷりもある意味では既視感がありますというか、

節子これRECちゃう!!『REC/レック3 キャプテン・スーパーマーケット』や!!!

いや本当に……もうRECでもなんでもないし……。

全2作で主軸となったアンヘラの物語は次の4作目(なおこっちは全2作の監督のうち、3を撮ってない方が担当)で完結するということですし、
本作については『RECではなく現代版キャプテン・スーパーマーケットを見る』と思っておくと、それなりに楽しめて精神的にも楽になるかと思います!!!!ということでバカ映画ハンターの皆様には強く強く推していきたいところですね……!!!(道連れを探す顔で)


・BDはこちら→REC/レック3 ジェネシス スペシャル・エディション [Blu-ray]
・キャプテン・スーパーマーケットはこちら→死霊のはらわたIII/キャプテン・スーパーマーケット ディレクターズ・カット版 [DVD]
■13年6月21日 『REC/レック』

密着型ドキュメンタリー番組の取材のため、消防署へと取材に来た女性レポーター、アンヘラとカメラマンのパブロ。
取材中、出動要請がかかった消防隊に同行してとあるアパートへと到着、実際の救助活動をレポートしていくアンヘラたちだったが、そこで見たものはあまりにも異常な、凶暴化した住民の姿だった。
重傷を負わされ、殺害される消防隊員。電源は落とされ、すべての入り口を封鎖されるアパート。遮断される通信。
孤立した状況下で『何が起きているのか』を撮影し続けるアンヘラたちだったが、状況は悪化の一途をたどっていく……。



そんな訳でめっきり最近増えてきた手持ちカメラ視点(POV形式)の映画の中でも知名度としては抜群、
また『スペイン映画』というものの復権を印象づけた本作ですが、……うん、いやぁ、1は良かったよね!!!!!

閉鎖環境でのサバイバル、しかもPOV形式のため臨場感は抜群であり、やや手ブレがすぎる演出もご愛嬌でしょうか。
とにかく武器がない、強そうなのは警官2名と消防隊員しかいない、という状況で、徐々にその数が拡大していく『感染者たち』の恐怖と、
潜在的に『感染しているのではという恐怖に怯える住人たち』を両方とも描いていますし、
「くるかなー くるよねー やっぱりこいつ感染してやがったー!!!!!!」という、見え見えの伏線ながらもきっちりとツボを抑えた役回りとか、
そういう辺りの作りは本当に上手いなぁと思います。
ただまぁ、生存者……というか住人たちが非力すぎて泣けますけども。ええ。

90分ちょっとという小粒作品の上、謎の解明とかそういう辺りは第二作の『REC2』にぶん投げる(と言うより2本でワンセット)という力技で、
実にキレ良くまとまった一本でしたねぇ。

問題点としてはブレまくるカメラよりも、主人公のはずのアンヘラが『ヒステリックに喚き続ける馬鹿女枠』にしか思えず、
カメラマンのパブロは存在感がなさ過ぎて(POV形式だとほとんど自分がカメラに映らないしね)……というキャラの魅力的な部分かなぁ(苦笑)。
序盤20分ぐらいも結構ダラっとした展開が続くので、最初に一発ガツンと頭ぶん殴るような衝撃的な映像とかが入っていれば……というのは思ったり。
あとオチ、というかラストで提示されるキーワードや小道具の数々で、なんとなく「あぁ……」っていう風になりますが、
それでも最後の最後まできっちりとこちらを『怖がらせる』展開にしたのは称賛したいところです。

あ、なお余談ですが本作も海外小粒ながらも良作映画の例に漏れず『ハリウッドでリメイク!!』となりまして、
『REC/レック ザ・クァランティン』というタイトルでリメイクされていますが、
リメイク版はびっくりするぐらいの完全コピー劣化版となってしまっていますので、余程の物好きな人以外はこちらのオリジナル版を見ると良いかと思います。

・BDはこちら→REC/レック [Blu-ray]
・リメイク版はこちら→REC[レック/ザ・クアランティン] [Blu-ray]
■13年6月21日 『REC/レック2』

感染者が発生し封鎖されたアパートへと突入するSWATチーム(4人)。
感染対策の専門家とともにアパートの上層階へと登っていく彼らは、やがて最上階で『最初の感染者』の血液を入手。
任務完了かと思われたが、不慮の事態ですべての血液を失ってしまう。
孤立無援の状況下でアパート内の捜索を続けるSWATチームだったが、やがて感染者たちと遭遇、激しい戦いとともに血液を捜索するという、過酷な状況へと追い詰められていくのだった。
時を同じくして、遊んでいた少年たち三人が興味本位で地下道からアパートの中へと潜り込んでしまう。
何が起きているかも知らず、冒険気分でアパート内の様子を撮影し始める少年たちだったが……。


……っということで、前作の直後から始まる続編、むしろBパートとでも呼ぶべき本作ですが、
POV視点は変わらず(SWATチームのヘルメットカメラと少年たちのビデオカメラ視点です)、やってることはもうちょっと派手になり、
そして……残念度合いが一気に増したという……(嗚咽)

いえ、前作ではなかったドンパチ成分が増えたのは絵面的にも派手になって良い感じですし、
『武器を持ってて訓練も積んでるSWAT隊員が感染者たちの前に敗走する』とかは燃えシチュですし、
カメラを持ってるキャラが増えたので「今この映像を撮影してる人間が死ぬかもしれない」という恐怖が持続しっぱなしなのは良い感じです。
1の方だとカメラマンのパブロはまぁ死なないだろう、という、PVO形式の弱点みたいなのはどうしてもありましたしね。
そういうところの展開については全然問題ないんですが……その、他の部分の大雑把さと適当さが……。

ホラー映画によくある『怪異の真相』ってバラすときは結構しっかり作りこんだタイミングでのちゃぶ台ひっくり返しにしないと
「なーーーーんだ……」と興ざめになてしまうことが多いんですが、本作だと前作ラストの情報を引きずったままこちらに入り、
なおかつ『感染対策の専門家』が事の真相を序盤でペラペラと喋ってしまい、その内容が結構またアレな感じで、
さらに不慮の事故も単なる不注意であり、そこから「仕方ない、他に残ってないかアパートの中探すぞ!!」
という……。
非常にアホというか泥沼というか、そんな感じのアレさになっていますので、どうにもこうにも……こう……ねぇ……。

アパートに入り込んできた少年たちについても興ざめというか、前作でのアンヘラが担っていた『バカ』枠を埋めるためだけであり、
ぶっちゃけメインのストーリーに何も絡んでこない(無くても全く問題なく成立してコンパクトに収まった)ので、正直見ていて首を傾げっぱなしでしたね……。
どうにも入れる要素の取捨選択を間違えた感じというか。

ただ、前作と立て続けに、というか一気に見た場合は(少年たちの登場はともかく)、
ネタばらしのタイミングとかはそれなりにいい感じになりますし、中盤(REC2の序盤)からのSWATチーム投入にはワクワクするものがあったりするのも確かなところ。
2本に分けてしまった辺りにどういう事情があるのかはわかりませんけども、見るなら『2本まとめて連続で!!』をオススメしたいですね―。

POV形式のホラーとしてはそれなりによくできていますし、オチに関してもまぁ、決して目立たないスペイン映画という枠内でも、
「これだけ気軽に楽しめてそれなりに怖い映画を作った」っていうのは評価したいところですねー。
しかしスペインでアレ系の話が出てくるとは思わなかったなぁ……異端審問が盛んな国ではありましたけども、魔女狩りはそんなに無かったはずですしねー。

あ、あとこちらも余談ですが、ハリウッドリメイク版の『REC/ザ・クァランティン』は続編も作られているものの、
そちらはスペイン版のREC2とは全く違うお話の、別物の、POV形式をどっかに投げ捨てた、なんでコレ作ったの系ダメ映画になっておりますので、怖いもの見たさのボンクラ映画ハンターの皆様にはある意味で!!ある特定の意味で!!おすすめしておきたいところです。

・BDはこちら→REC/レック 2 [Blu-ray]
・リメイク版の続編(別物)はこちら→REC[レック:ザ・クアランティン] 2 ターミナルの惨劇 [DVD]
■13年6月11日 『ロンドンゾンビ紀行』

長引く欧州不況の影響で閉鎖が決定してしまった、ロンドンのイーストエンドにある老人ホーム。
経営者レイの孫であるテリーとアンディの兄弟は老人ホームを救うために銀行強盗を計画し実行に移すが、
時を同じくして工事現場の採掘中に封印が解かれたゾンビたちが、ロンドン市内に溢れだしていた。
なんとか強奪することに成功した大金を持って銀行を離れるテリーたちだったが、武器調達担当の武闘派、ミッキーがゾンビに噛み付かれてしまう。
そのころ、レイの老人ホームにもゾンビが大挙して押し寄せ、入居者たちはホームの建物への立てこもりを余儀なくされていた。
もはや老人ホームを救うとかそういう状況ではなくなる中、テリーたちは祖父らを救出に向かおうとするが、その前には無数のゾンビが立ちはだかるのだった……。



『ロンドン』『ゾンビ』といえば「分かりましたショーン・オブ・ザ・デッドですね!!!」と言いたくなるのがゾンビ映画クラスタというか、
「28日後?あれはゾンビ映画じゃねえよ!!!含めてんじゃねえよガジェット通信てめぇそこ座れ!!!!」
とか怒り出すのがこの界隈なわけですが(昏い目で)。

本作はまさにその『ショーン・オブ・ザ・デッド』に影響を受けた作品ということで前々から気になっていたものの、
日本での劇場公開は東京のみで……いやまぁ仕方ないんだけどね……と魂がちょっと濁ったり。仕方ないんだけども。
ところがまぁ動きは早いもので、1月の劇場公開から半年で無事にBDが発売!!!ということでサックリと見てみました!!!!

うん、これ、良いなあ、実に良いなぁ……!!!!!

基本的には『動きはゆっくり』『噛み付かれたら感染する』『音とか動きに反応する』というオールドタイプのゾンビで、
怖さとしては下の下、という感じなんですけども、襲われるのが『老人ホーム』なので、、
「動きの遅いゾンビに襲われても振り切れない・逃げようにもみんなを守り切れない」という、
立てこもりの緊迫感を非常に上手いことアップさせていますねぇ……。。
特に、歩行器に捕まって歩く老人VSゾンビのチェイスシーンは、圧巻というか、あんなスローモーなのに緊張感のあるチェイスシーン見たのは初かもしれん……!!!!
武器もない、動きも悪い、耳も遠い年寄りたちが、如何にしてゾンビたちの襲撃を防ぎきるのか……を考えながら、
どこかユーモラスな雰囲気さえ漂わせるのには、イギリスの老人たちの諧謔味とかそういうのが本当しっくり来ます。

片やテリーとアンディ兄弟を中心とする強盗一味は、武器こそあるけど頭が悪いという(笑)。
テリーたちの従姉妹であるケイティが非常に的確に状況把握したり窮地を脱する技能を持ってる一方で、
アンディは馬鹿だし、テリーは責任感強いけど悪人になりきれないというのが微笑ましい……ミッキーは、うん、まぁ(苦笑)。

後半、テリーたち一行とレイたち老人ホーム組が合流しての脱出行となりますが、
ここはもう映画『RED』を見ているかのような爽快感に満ち溢れていて、いやぁ楽しそうにやってるよなぁと!!!
レイにはアラン・フォード、ペギー(老人ホーム居住者の老女)にはオナー・ブラックマンがキャスティングされていて、
まぁ本当『RED』みたいな豪華さですよ……銃を手にして目の輝きが変わり、AKやらM203付きのM16をドカドカ撃ちまくり、
歩行器にくっつけたUZIをフルオートで掃射する辺りの爽快感
と来たらもう、たまらんものがあります。あれはいいなぁ……。

終わり方もゾンビ映画恒例の「状況は今後どうなっていくのかわからない」系でありながらも、
ロンドンの下町で育ち、そして年老いてなお闘志を秘めた年寄りたち、今後を背負っていく若者たちの心意気が詰まっていて、
コレは非常にぐっと来るものに仕上がってて非常に好印象です。
いやまぁ、アラン・フォードに最後お前何やらせてるんだ!!とは思いますが!!!!(笑)。

ゴア描写は非常にマイルド(と言っても臓物ドバァとか顔食いちぎりとかはあるので人によってはしんどいかもしれん)ですが、
『走るゾンビでもなく、ゴア描写バリバリでもなく、3Dでもなんでもない、地に足の付いたゾンビ映画』として、
ものすごくよく出来た一本だな―と思います。
ゾンビ映画好きなら絶対に損はしない一本だと思いますし、映画の『RED』が好きだという人もぜひぜひ見てほしい一本ですねぇ。
こういう小粒ながらも面白い作品がBDで出てくれるのは、本当にありがたいところです。

・BDはこちら→ロンドンゾンビ紀行 [Blu-ray]
・ロンドンゾンビものといえばやっぱりコレ→ショーン・オブ・ザ・デッド [DVD]
・年寄りたちの大暴れなら→RED/レッド [Blu-ray]
■13年6月10日 『ジャッジ・ドレッド』

核戦争で荒廃したアメリカ、その中で8億もの人口を抱える巨大都市、メガシティー・ワン。
巨大都市である一方、犯罪多発都市でもあるメガシティーの治安維持に奮闘するのは、
警察と司法の両権限を併せ持つ裁判所であり、その執行官たる『ジャッジ』は裁判官・陪審員・死刑執行人の権限を併せ持つ、エリート集団であった。
最強のジャッジであるドレッドはある日、透視能力を持つジャッジ候補、カサンドラの適性テストを現場で行うように命じられる。
折しも殺人事件が発生し、高層タワー『ピーチツリー』へと向かったドレッドたちは殺人犯を無事に確保したものの、
ピーチツリーを支配するマフィアのボス、通称ママによってタワーの中へ閉じ込められてしまう。
脱出不可能、外部からの干渉も寄せ付けない閉鎖空間となったタワーの中で、ドレッドとカサンドラを襲撃するマフィアたち。
たった二人で孤立無援の状況下、ドレッドたちは脱出路を模索しつつマフィア構成員、欲に駆られた住民たちとの戦いに身を投じていく……。


『マフィアのボスが牛耳るビルへ突入した警官たちが孤立無援の状況に追い込まれながらも、襲ってくる敵を尽く返り討ちにしつつ最上階のボスの部屋までたどり着く映画です』

お兄ちゃんあたしコレ知ってる!!!2011年のインドネシア映画でやってた!!!!(ぐるぐる目)


思わずそんなことを言いたくなったりするようなしないようなあらすじですが、95年のスタローン主演作とは違い、
原作(イギリスのコミック)を映画化、ということで、立ち位置はスタローン版とは全く違いますねー。
スタローンのはあくまでも『モチーフ』という感じでしたし、「無実の罪を着せられた警官」の物語、をジャッジ・ドレッドという名前を借りて映像化しただけでしたしね……(スタローン版を擁護するつもり無し)。

本作でのドレッドは本当にもう『最強のジャッジ』と呼ぶにふさわしい無双っぷりを示し続けており、
常に沈着冷静かつ圧倒的な戦闘能力で、並み居る雑魚を文字通り瞬殺していくのが凄まじいの一言。
徹底して「最強の執行官」として描かれており、その素性も経歴も一切まったく説明されないのが清々しいですな(笑)。
あと今作だとカール・アーバンがドレッド役に抜擢されてますが、ヘルメットを1秒たりとも外さないので、
見れば見るほど「……これカール・アーバン使う必要あったのかな……」感がありますな(苦笑)。
その分、『大ピンチ』はジャッジ候補役のカサンドラに割り振られていますが、お陰でカサンドラがどんどん成長していくので問題なし。
ベテラン刑事と新米刑事のバディ・ムービーみたいなところもあります。

アクションは格闘戦よりもガンアクションがメインですが、大型ハンドガン『ロウ・ギバー』で徹甲弾、焼夷弾、破壊弾にスタン弾などを撃ち分けて状況を切り開いていくあたりは「あ、はい、こういう銃大好きです!!!」な人も多いんじゃないかなぁ(笑)。

マフィアのボスの『ママ』に関しては特に語ることもないというか、悪役があんまり魅力的じゃないのがあれな感じではありますが、
95分という時間で切れ味よくスパっと終わるにはコレで良かったかな、とも思いますし、特に不満は無く。

強いてこの作品の不満というか、ソフト化での謎は『3D視聴が前提で作られた映画なのに、3D版収録のソフトが出てない』という……。
いや、海外版だと3D版収録されてるんだけどね……なぜ日本版は3D未収録なのか……。
まぁ3Dで見なくても特に問題ない感じ(なにせ3D効果を感じる場面が、銃弾で顔面ぶち抜かれて肉片飛び散るあれとか襲撃者をドレッドがビルの吹き抜けから叩き落とすシーンとかそういうあれなので)ではあるんですが、これでいいのかという思いはありますな……。

レンタルはツタヤ限定、販売版にも3D版収録は無し、という仕様にいささかモヤっとするものがありますが、
個人的には切れよくまとまった一本だと思うので、Huluとかの映像配信系サービスに来たら是非見ていただきたく……!!!

・BDはこちら→ジャッジ・ドレッド【初回限定生産 スチールブック仕様】 [Blu-ray]
・スタローン版はこちら→ジャッジ・ドレッド ブルーレイ [Blu-ray]
■13年5月21日 『スノーホワイト・デッド』

ゾンビの増殖によって人間の数が激しく減少した世界。
マットとエドのコンビは、数少ない生き残りの人間を求めて車を走らせていた。
二人の目的は生き残りの人間を救助することではなく、『人間の死体』を求める人へ売りつけること。
やがてそんな死体売りの依頼も終りを迎え、マットとエドは新しい顧客、新しい依頼を探して街へと向かっていく。


いやぁ、タイトル見てレンタルリストに放り込んだときはは「あー白雪姫がゾンビと戦うバカ映画なのかなぁ」と思ってたんですが全然そんなことはなかったね!!!!!!

ゾンビ映画といえば「崩壊を迎え始めた世界」と「崩壊した世界」とのどちらかを舞台にしたもの…に大別できると思うんですが、
本作は『崩壊後の世界を舞台に、ただそこで生きていく人間たちの物語』となります。
出てくるゾンビは思いっきり走るよ系のフレッシュ型ゾンビで、ワリと「見つかったら死ぬ」系ですねー。

生き残りはごくわずか、軍による食料の配給はほぼ途絶えた状態で、
数少ない人間たちがそれぞれの思いを胸に好き勝手に生きている感じ、とでもいいましょうか。
コミュニティを作って生き残りを図るのではなく、それぞれの『家』や『街』にしがみついている…っていうのはなかなか新鮮で、
まぁこういうことも人間ならやってしまうよねぇ、と思ってしまうわけで。

ゾンビとなってしまった息子がいつか特効薬の発見で元に戻ると信じ(あるいは自分を騙し)、
それまで息子を『死なせない』ために、生きている人間を『殺す』ことを他人に依頼する老夫婦。
生きている人間を殺し、老夫婦に売りつけて生計を立てる主人公たち。
その他の人間たちもただ「生きている」だけで、他のゾンビ映画にあるような「必死に生存を測り、ゾンビを積極的に排除しようとする」ような描写がないのがちょっと新鮮ではありました。
いやまぁ予算の問題だとは思うんだけど(苦笑)。
『ウォーキング・デッド シーズン2』の、農場の物語をもっと淡々と描く感じなので、あれ系が好きな人にはオススメしたく!!

ゾンビ映画としては結構かったるい物があるんですが、「崩壊した世界で淡々と壊れていく人間」を描いてるのは好印象。
最初から最後まで徹頭徹尾、状況は良くならず、ほんの少しだけ生き残った人類が数を減らす。
ただそれだけの映画…ではあるんですが、なかなか味わい深いものが有りました。
あ、吹き替えはかなりアレな感じなので、字幕で見る方をオススメしたいところですね……。

・DVDはこちら→スノーホワイト・デッド [DVD]
■13年5月20日 『127時間』

エンジニアのアーロン・ラルストンは週末を利用してキャニオンランズ自然公園での、キャニオニング(渓谷歩き)を満喫していた。
魅力的な若い女性二人組を道案内し、翌日夜のパーティーへ誘われ気を良くしていたアーロンだったが、
二人と別れて単独で渓谷の中を進んでいた際、岩の滑落に巻き込まれて壁面と岩の間に右前腕を挟まれてしまう。
完全に身動きの取れなくなった状況下、助けを呼ぶ声は誰にも届かない。
ボトル1本の水とごく僅かな食料、そしてポケットツールにある小さなナイフを頼りに、脱出の方法を模索するアーロンだったが……。



別にリーアム・ニーソンが無双するわけでもなく、仮釈放されたエディマーフィーがニック・ノルティとコンビを組むバディムービーでもなく、
「青年が事故にあってから脱出するまでの127時間」を描く、実話を丁寧に映像化したドキュメンタリータッチの本作ですが、いやぁ

渓 谷 歩 き な ん て す る も ん じ ゃ ね え 

いや、別にしてもいいけどちゃんと安全策を用意してしっかりした準備して周りの人には何処に行くかとかしっかり説明しとこうぜ!!!
というツッコミを入れまくらざるを得ない感じになったりもしますけども、
それはそれとして『大自然怖い』系の映画で非常によく感じる恐怖感を淡々と静かに味わわせてくれます。
今までによくあったのは『大自然の中で孤立し、自然が牙を剥き続ける』ような作品が多かったと思うんですが、
本作は『牙を向いてくるのは一瞬だけなのに、それだけで窮地へ追い込まれてしまう』というのが特徴ですね……。

ただ単に「岩に手を挟まれただけ」でここまで致命的な状況になるっていうのは本当に心臓に悪く、
自分の置かれた状況や家族への遺言をデジカメに残していくアーロンが徐々に壊れていく様子、彼が見た『幻』なんかは本当にもう……。
水が尽きかけている状況下で脳裏に浮かぶよく冷えたマウンテン・デュー、コカコーラ、ビール。
綺麗な女性たちや調子の良い若者たちとの馬鹿騒ぎ。
決して今の状況では届かない、だからこそ渇望せずにいられない、そんな状況での幻影は、アーロンの生きる希望になる一方で、
現実での絶望感を更に増幅させてくれるっていうこの無常感たるや本当もう……。
特に途中の『雨』のシーンは本当に強烈で、こちらも完全に裏切られました(苦笑)。
現実にあった話の実写化なんで、この辺りは本人の体験を丁寧に映像化してきたんだなぁ……。

水が尽きてからは自分の尿を飲み、まるでトークショーの司会者のような陽気さでカメラに語りかけ、
この先はもう精神が崩壊するだけかと思われたアーロンが、それでもひとつの決断を下して脱出に成功するシーンは、
正直結構キツイ……というか映画のジャンル的には完全に不意打ちな映像なので、そりゃ試写会で失神者も出ますわな……
個人的にはアレ系の映像全然平気なんですが、それでも「おぉう……」って声出ましたしね。

登場人物はほぼ最小限、主な舞台は自然公園の渓谷の中、という非常にシンプルな映画ですが、
それでも画面から目が離せなくなるぐらいに緊張感のある、すごい作品でしたわぁ……。
2回め見たいかと聞かれますとそれも若干きつい所ではありますが、見て損はしない1本かと!!!

・BDはこちら→127時間 [Blu-ray]
・こっちも超オススメ→フローズン [DVD]
■13年5月18日 『推理作家ポ― 最期の5日間』

モルグ街の殺人』などの小説を発表し高名を馳せながらも妻を結核で亡くし、酒に溺れ、
新聞紙上で評論家と感情的な罵り合いを展開し、出版社の編集とも日々言い争いを繰り広げるエドガー・アラン・ポー。
ついに恋人であるエミリーとの婚約が決まるというところで、警察からある殺人事件の容疑をかけられる。
それはポーが発表した小説にあったトリックを模倣した犯罪であり、ポー自身にも確実なアリバイがない状況で発生したものだった。
エメット警部から捜査への協力を求められ、それに応じるポーだったが、第二の殺人事件現場に『仮面舞踏会に死が訪れる』というメモが残されていた。
折しもエミリーとの婚約を発表する機会こそがその仮面舞踏会であり、ポーたちは厳重な警戒のもとに舞踏会へと参加するが、
警戒虚しくエミリーが誘拐されてしまう。
残されたメモには「ポーが今回の事件を題材に小説を書けば、今後の殺人事件現場にエミリーの居場所の手がかりを残してやる」と書かれていた。
苦悩しながらも自らの過去の著作をヒントにエミリーの捜索を続けつつ、実際に起きた事件を題材に小説を書き続けるポー。
エミリーは無事に救出されるのか、そしてポーは犯人の正体へとたどり着けるのか……?



エドガー・アラン・ポーが死亡する直前の数日間、不審な行動というか消息不明気味だったところにスポットを当て、
「彼の死の真相はこうだったんだよ!!」「な、なんだってー!!!」という感じの物語に仕上げたスリラー映画ですが、
『シャーロック・ホームズ』とか『フロム・ヘル』『アガサ/愛の失踪事件』とかが好きな人なら特に文句なく見れるんじゃないでしょうか。
ただエドガー・アラン・ポーの死の真相はなんとなーくだいたい(現実世界で)それらしき理由が固まってるので、
人によっては死んだ理由のあれこれが結構大胆に脚色されまくっているこの映画を冒涜とか思うかもしれないのもまた事実……かな?

序盤だと単なる酔っぱらいのポーが恋人を救うためにどんどん憔悴しながらも小説を書き、
犯人へと迫るところはジョン・キューザックの演技の『軽さ』と『重さ』の使い分けが気持ちいいですねぇ。
『アイアンマン』でトニースタークを演じたロバート・ダウニーJrにも通じるところがあるかな。
あとポーに捜査協力を依頼し、ともに犯人逮捕へと向かうエメット警部を演じるルーク・エヴァンズもカッコ良く、
女性の方々的には結構そこだけでも見て欲しいかもしれません。
というか女性キャラが犯人に捕まりっぱなしのエミリーぐらいしかいないんで目の保養成分ほぼ皆無なのは、もうちょっとこう、どうにかならんかったのか……!!!!!!(バンバン)

グロいところはしっかりグロくて、振り子の刃で胴体切断するとか切り取った舌を机に置いとくとか、
そういうのがワリと容赦なく描かれるんでそういうのが苦手な人には少々キツイかもしれませんが、
ポーの作品群…『モルグ街の殺人』とか『落とし穴と振り子』『赤き死の仮面』あたりの有名ドコロ読んだ人ならニヤリとできるので、
うーん、やっぱり見る人選ぶのかなぁこれは(苦笑)。

ミステリとして見るとかなり弱いうえに犯人登場の時の驚きも無い……というかお前誰だよ感が凄まじい……ですし、
ポーやエメット警部が「犯人の裏をかこう」としないあたりも今ひとつ物足りないものがあったりするのも事実ですけれど、
スリラーとして見るなら十分に合格点じゃないかなぁと思います。『フロム・ヘル』ほど大風呂敷広げてないしね(笑)。

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■13年5月17日 『96時間 リベンジ』

前作でブライアン(リーアム・ニーソン)一人に拠点3つと人身売買組織を丸ごと壊滅させられたアルバニア・マフィア。
アルバニアの地では息子たちを殺された組織のボスが、復讐を誓っていた。
「あいつを捕まえて連れてこい。あいつの血で墓を満たすまで、息子たちは報われない」
フランス警察のジャン・クロードを締めあげ、ブライアンの素性を掴み、拉致計画を練り上げていくマフィアたち。
やがて仕事でトルコに渡ったブライアンと、別れた妻と娘とを一網打尽にする作戦が決行されるが……



っということで、リーアム・ニーソンが身体を張る!!身体を張る!!!親父が生身で相手をぶちのめす!!!
そんな最高クラスにわかりやすいコンセプトと90分というコンパクトな上映時間が非常にキレの良さを魅せつけた『96時間』の続編、
レンタル始まったので見てみましたがいやぁ相変わらず素晴らしかった!!!!!!

前作での出来事を経て娘ラブがよりいっそう加速したリーアム・ニーソンのダメ親父っぷりと、
妻と娘に危険が迫った時のキリングマシーンっぷりとの落差ときたらもう、見ていて本当に清々しくなりますねぇ(笑)。

前作では「パリでさらわれた娘を探し出し、救い出す」という物語でしたが、
今回は「異国の地で拉致された自分自身がどうやって脱出するか」「どうやって妻と娘の安全を確保するか」がメインであり、
前作とはまたちょっと違った方向でのブライアンの『特殊な経歴で身についた特殊な能力』が存分に発揮されまくります。
また、前作では『ものすごい馬鹿女の影に隠れてやや印象薄かったけど大概すごい馬鹿女』だった娘ですが、
今回もその馬鹿っぷりとのんきなところを存分に見せつける序盤はともかく、中盤以降はブライアンを救う活躍を見せるなど、
良い感じにフォローが入っているのも嬉しいところです。 あ、ジャン・クロードは…まぁ……(目を伏せる)。

しかしこの映画の本当の醍醐味はやっぱりこれ、『怒ったリーアム・ニーソン』という、正直なところ丸見えの爆弾すぎる人間を「捕まえてこい」と言われたアルバニア・マフィアの構成員に同情しながら見る、というところでしょう。もう本当。

なぜこう……自ら爆弾に火をつけるような真似をしたのか、そりゃまぁ意地があったんだろうなぁとは思いますが、
「単身でパリに乗り込んできてから70時間ぐらいで通りすがりに売春宿一個と拠点と人身売買組織丸ごと一個叩き潰したうえ完全に行方不明になるはずだった娘を軽やかに助けだした」
そんな相手に、田舎ヤクザだけで立ち向かってどうにかなると思ったのでしょうか。思っちゃったからあの結果なんだけど(昏い目)。

アルバニア・マフィアのボスの命令が「拉致して連れてこい」ではなく「殺せ」だけだったならワリと99%成功してたろうに、と思いつつ、
一度は拉致に成功しながらもその後どんどん逆襲されて物理的に数を減らされていくアルバニア・マフィアの構成員を見ておりますと、
世の無常というものを感じずにおられません。逃げてマジ逃げて。

ド派手な大爆発も無し(派手じゃないのはあり)、格闘シーンの変な早回しも無し、地に足の着いたアクションと、
「今までの経験から導かれる知識とスキル」をフルに活用しての戦い、っていうのはやっぱり凄いなぁと実感しますねぇ。
スケールとしては間違いなく『小粒』な映画ではあるんですが、それを感じさせないこの面白さとキレの良さ、
前作をテレビで見た人はぜひぜひ……!!!

・BDはこちら→96時間/リベンジ 2枚組ブルーレイ&DVD (初回生産限定) [Blu-ray]
・前作はこちら→96時間 [Blu-ray]
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■13年5月9日 『リンカーン/秘密の書』

少年時代、ヴァンパイアに母親を殺されたリンカーンはヴァンパイアへの復讐心を胸に抱いたまま成長し、
やがて青年となったある日、母親の仇であるヴァンパイアの居場所を突き止め復讐へと向かうが返り討ちにあい、
逃走する中でヴァンパイア・ハンターのヘンリーに救われる。
ヘンリーからあらゆる戦い方を伝授され、一人前のヴァンパイア・ハンターとなったリンカーンは、
法律家の勉強をする傍ら、ヘンリーからの指令を受けてヴァンパイアを狩る日々を過ごしていた。
だがアメリカに存在する奴隷制度がヴァンパイアの『食料』を維持するためのものである事に気づき、
更にヴァンパイアへの食料提供で私腹を肥やす政治家たちの姿を見たことで、リンカーンはやがて戦う場所を変えていくことになる。
斧ではなく言葉を武器に、戦う場は夜の街ではなく、昼の街、公衆を相手に。
50歳を過ぎて合衆国大統領となったリンカーンは、やがてヴァンパイアの力を強く用いる南部連合国との戦争へと突入する。
しかし戦場へと送り込まれるヴァンパイアの軍勢に駆逐されていく北軍兵士たち。
リンカーンは乾坤一擲の策を講じ、ゲティスバーグで彼らとの戦いに終止符を打つべく、再び斧を手に戦場へと赴いていく……。


「実はリンカーンは吸血鬼ハンターだったんだよ!!」「な、なんだってー!!!」

と書いたほうがいいんじゃないか的なあらすじですが、
いやぁ『製作総指揮:ティム・バートン』『原作・脚本:セス・グレアム・スミス』『監督:ティムール・ベクマンベトフ』という、
ボンクラ作品を作るにはこれ以上無いクリーンナップで固められたこの作品、多分2012年度公開の洋画作品の予告編映像で、
一番タイムラインが賑わった(騒然とした、でも可)作品だったんじゃないでしょうか。

セス・グレアム・スミスといえば19世紀の傑作小説『高慢と偏見』にゾンビ要素をぶち込んだマッシュアップ小説『高慢と偏見とゾンビ』をリリースして「その手があったかっていうかそんなん想像すらしてねえよ」と一部文芸クラスタを震撼させた猛者なわけですが、
今回は「リンカーンの日記を手に入れたのでそこに吸血鬼ハンターだった日々のことを加筆してマッシュアップ小説に仕上げました」という、
またか、またやりやがったのかテメエ!!!!と満面の笑みで迎えるしかない小説を世間に送り出し、
最近ボンクラ映画のボンクラ度合いが頓に増してるティム・バートンが製作総指揮、『ウォンテッド』で「銃を撃つときに手首のスナップかけて弾道曲げる技とかチョーいいよね!!」と実にいい具合に中二病をこじらせたティムール・ベクマンベトフがメガホンを取ったという、
これでボンクラ映画にならなかったらどうすればいいんだという布陣ですからね……。

だが。

だがしかし。


さすがに実在した大統領をネタにして馬鹿作品を作るのにはある程度、それなりに、多少なりとも自制心が働いたのか、
予想していた以上にしっかりとした作品に仕上がっておりました。いや…うん……オモシロカッタヨ……?
ただ、こう、『戦国BASARAとか無双シリーズを期待してたらせいぜいレッド・クリフぐらいだった』とでも言えばいいのか……!!!

なにせリンカーンが大統領を目指した動機とか奴隷制度を廃止しようとした動機にきっちりと『ヴァンパイア』の存在が絡んでまして、
単に「リンカーンが吸血鬼をぶっ殺すシーンがあります」だけではないあたりが、本作の見事なマッシュアップポイントですねぇ。
「実は南部諸州はヴァンパイアが事実上支配している地域だった」とかの細かい改変によって、
奴隷制度の存続を拒む側と望む側との決定的な断絶がそりゃあるわなぁ……と納得させられてしまいますし。
南部の人らはアレでいいのかと思いますが(苦笑)。

ヴァンパイア軍団のボスであるアダムが今ひとつキャラが弱かったりするのはまぁ別に気になりませんでしたし、
何かこう……うん、非常にきっちりとマッシュアップ作品だなぁとしみじみ思う次第です。

アクションに関しては3D映画だったこともあってことさらに奥行き感を強調したがるシーンが多かったなぁとは感じますが、
リンカーンが斧を振り回しながらヴァンパイアを始末するシーンは妙な面白みに満ち溢れていますし、
スローモーションと倍速とを絡み合わせた殺陣の演出なんかは、さすが中二病こじらせた監督だけあるぜ!!と思えます(笑)。
若きリンカーンがひたすらに暴れまくるだけで終わらせるのではなく、歳を経てなお戦い続ける姿はやはり燃えるものがありましたしね……。

ただ、リンカーンの斧が終盤であの展開になってしまうのはやっぱりそれどうなのよ……!!!!!!と思わざるをえない……。
いや、アレはあのあとずーっと引き継がれて行くべきなのではなかろうか……そして最後のカットで映るのもまたアレであるべきじゃないのか……!!!!!!というあたりが一番の不満かなぁ。

あ、あとメアリートッドの描写がおとなしいのはアレあくまでもリンカーンの日記ベースだからでしょうかね……(震え声)。
リンカーン暗殺事件にも特に触れられずに終わるのは、本作があくまでも『リンカーンの日記に描かれていたこと』であるからかなぁ。
あのあたりにまで踏み込んでたらまた面白かったろうとは思うんですが、それはまぁ今後のアレに期待しましょうか(続きはないと思うけど)

ともあれ「変にアクション全開バリバリのボンクラ映画」と思ってるとがっかりしますが、
「リンカーンの生涯に吸血鬼が介在していたら、という偽史」の作品としては本当に面白い作品に仕上がってると思いますので、
次はぜひともジョン・F・ケネディ暗殺事件あたりに吸血鬼を絡めてやってくんないかなぁ(笑)。


・BDはこちら→リンカーン/秘密の書 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー (初回生産限定) [Blu-ray]
・原作小説→ヴァンパイアハンター・リンカーン [文庫]
・全てはここから始まった→高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
■13年4月23日 『HK 変態仮面』

「愛子ちゃん…… 君のパンティを、俺に くれ」



もはや説明不要というかあらすじについてはどうこう書くまでもなく皆様ご存知だろうと思いますし、
何よりもあらすじ書こうにも基本的に前半は原作踏襲気味だし後半のオリジナル展開はネタバレしたくないので、
今回はもうこの一文だけにさせてもらいますが、いやーーーー本当にいい映画でした!!!!!!

監督が『勇者ヨシヒコ』2作と『コドモ警察』で名を馳せた福田雄一さんということで、
「あーなんとなく見当つくけど低予算感押し出してくるんだろうなぁ」とか思っておりましたが、なんのなんの。
立派に「日本のヒーロー作品」として十分に鑑賞できるクオリティに仕上げて来ましたねぇ。

主人公の色丞狂介(変態仮面)を演じる鈴木亮平の役作りは本当に凄まじく、本当に文句の付け所がないパーフェクトっぷり。
ここまで役をキッチリ作りこんで……どころかキャラと一体化してくるような役者さんそうそういない(笑)。
素の状態での『愛子ちゃんに恋をする男子』という役どころも、きっちりと気持ち悪く絶妙な変態性を醸し出していますし、
変態仮面になってからのアクションというか一挙手一投足はそのどれもが美しくてスタイリッシュで本当に気持ち悪くて
あのスタイリッシュなポージングでにじり寄ってくるだけでもう、「見ているだけで笑いが出てくる」レベルでした。
いや、本当にアレは凄いぞ……!?

変態仮面の必殺技も非常にクオリティ高く再現されており、特に『地獄のタイトロープ』の演出は圧巻でしたね……。
まさかあんなクオリティ高い地獄のタイトロープが見れるとはこのリハクの目を持ってしても……!!!

対するライバルキャラは学園の乗っ取りを企む大金玉男にムロツヨシ、その部下である真面目仮面に佐藤二朗、、
数学教師にして最大のライバルとなる戸渡先生に安田顕がキャスティングされましt

お前これいつもの福田作品じゃねえか!!!!(バンバン)

いやぁなんというか安定感あるなぁと言いますか、山田孝之がひょっこりカメオ出演してくるんじゃねえかと気が気じゃなかった(笑)。

それにしても福田組というか、ムロツヨシや佐藤二朗の『監督との阿吽の呼吸』感は素晴らしかった……。
ムロツヨシのキレ芸なんかは場内の笑いを誘いまくっていましたし、佐藤二朗は安定の気持ち悪さ(笑)。

そして変態仮面最大のライバルになる安田顕のキャラは、もう、アレで爆笑するなという方が無理な相談ですよアレは!!!!!!
あんな格好で街中を高笑いしながら爆走し、なおかつ女性にあんなことまでして、さらには変態仮面と激闘を繰り広げるという……。
完全に予想外のオリジナル展開でしたが、その『原作にはなかった』部分を引っ張り切る、ものすごい飛び道具でしたねぇ(笑)。

自分が変態なのか変態ではないのかに思い悩む狂介、というドラマ性を補強するキャラにもなりましたし、
クライマックスでの「気づいてしまったか…」のところはもう腹筋がどうにかなるかと思いました。あんなん反則やろ……!!!!!

アクションシーンも正直、予想してた以上のクオリティというかカメラワークはめちゃくちゃに上手く、
バトルシーンは立派にアクション映画としての鑑賞に耐えるものになっています。
画面の中を彩るのはパンツかぶって肌色面積9割オーバーの変態仮面だけどな!!!!
というか安田顕のキャラとのバトルシーンは邦画史上で一番ひどい絵面といっても過言ではないんじゃなかろうか!!!!

それでもアクションの捉え方、切り返し方なんかが本当に見応えがあって、だんだんと衣装のことは気にならなく……なっt……うん、ごめん、それはない。

しかし鈴木亮平も安田顕も『変身前と変身後を、同じ役者が演じきっている』と言う辺りは、昨今のヒーロー映画の中でも特筆するべきポイントかと思います。
あんなにもクレイジーな衣装で、あんなにも真剣に拳をぶつけあう長丁場の殺陣をやってのけるなんてのは、
もしかしたらこの作品が最後になるんじゃないだろうか……。

もちろん、作品は紛れもなく『変態仮面』なのでシモネタ成分は大量ですし、
福田監督作品特有の間のとり方や笑わせ方が肌に合わない人は合わないだろうなぁ、というのも事実。
万人受けする作品じゃないよねーとは思いますが、今の時代に、これだけの熱量を注ぎ込んで『変態仮面』という作品を実写で成立させ、
そして根っこの部分にあるヒーロー物としてのバランス感覚を最後まで失わないまま突っ走って魅せた辺りには、
万感の思いを込めて称賛の拍手を惜しみなく送りたいと思います。

・ノベライズ版はこちら→HK/変態仮面 [単行本(ソフトカバー)]
・原作コミックはこちら→HK 変態仮面 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) [Kindle版]
・何故コラボTシャツを作ったのか…→HK / 変態仮面 (ジャスティスレッド)
■13年3月26日 『ダーク・ブルー』

1939年、民族運動やハンガリーとの領土問題という火種を抱えたチェコスロバキアへドイツによる進駐が開始され、
チェコ軍はついに一発の弾丸も撃つことなく降伏する中、ドイツ軍へと下ることをよしとせず、
独自に諸外国軍へ義勇兵として参加し、第二次大戦を戦った男たちがいた。
チェコ空軍の戦闘機パイロット、フランタも飛行場の接収を受け反発、同じ基地の仲間たちと共にイギリスへと渡った一人だった。
戦闘で失われていく仲間たち。英国人女性スーザンとの燃えるような愛。そしてスーザンをめぐり生まれる親友との確執。
戦後、多くを失ったフランタは祖国チェコスロバキアへと帰還するが、そこに待っていたのは思いもよらぬ過酷な運命だった……。



っという事で、『ハート・ブルー』の次に何でこれなんだよお前と言われそうですが、
いや、うん、いい映画ですよ?(理由になってない)。

チェコを離れて異国の地で義勇兵として戦ったチェコ軍の飛行隊と、戦後の祖国で強制収容所に収容されたフランタの境遇とを行き来する二重構造の本作ですが、まぁこの対比が本当にもう、お見事です。

戦争中の映像はむしろ牧歌的で、開放的で、美しい青空が印象的。
イギリス空軍に所属となったチェコ軍パイロットたちが自転車で編隊飛行の練習をさせられ、英語の授業で苦戦し、
「まーどうせ今日も出撃命令無いよねー」とか「あの女性士官を口説きたいんだよなぁ」とか言いながらのんびりしてるのが前半の主な見どころなのも確かですが、
英語の授業で苛立ち教室を出て行く兵士を止める女性教師の
「私はあなた達に英語を教えることでドイツ軍と戦っているの。私の戦いを邪魔しないで」
の言葉なんかは、素直にカッコいいと思えます。責務を果たすってこういうことだよね……うむ。

中盤からはバトル・オブ・ブリテンが始まり、チェコ義勇兵たちも激化する戦況に引きずられて出撃回数が増加。
そして戦場で撃墜され、あるいは脱出叶わず、命を空で、地上で散らせていくパイロットたちの姿が、
終始一貫して過度な英雄性や悲劇性を抑えた、ストイックな視点で映しだされていきます。
製作段階で「英雄たちを称えるだけの映画にはしたくなかった」と監督・脚本家の二人(ちなみに親子)が言っていましたが
それで正解だったなぁと思います。いくらでも悲劇的・勇壮に出来たろうとは思うんですが、この映画はストイックなトーンが似合うわ……。

また、ヒロインであるスーザンはフランタの親友であるカレルを救ったことがきっかけでフランタと出会い、愛しあう事になるんですが、
カレルはスーザンに惚れており、それをフランタも知ってるけどスーザンから想いを向けられるうちに……という、実にこう、いいですねこの寝取り展開。
この寝取り展開になってからのフランタさんはマジ良い感じにクズといいますか、
そりゃ強制収容所の医者に話したら「私は君を軽蔑するよ」と言い放たれますわな!!!!!!
なおカレルの吹き替え声優は僕らの我らの浪川・暗黒面・大輔でありまして、DVD買ったら本当、爆笑せざるを得ませんでしたね(笑)。

親友の想い人を寝取った負い目・引け目から生まれる猜疑心、猜疑心が導く確執。それでも壊れない友情と、戦友同士の絆。
戦後に故郷へと戻り、「西側の国へ所属して戦った軍人は危険思想の持ち主である」とされて強制収容所送りとなり、
それでも生きていくフランタ。
戦後の強制収容所は当然のように暗く、薄汚く、閉塞感があり、冷たい映像で。
「死ねばここから出られる。それが唯一の恩赦だ」と明言される中でも、満足な医療が受けられなくても、
それでも窓から差し込む太陽の光に喜びを見出し、地道に生きていくフランタの姿。
フランタが希望を失わずに生きていく理由、自暴自棄にならずにいる理由がわかると、本当にもう……ねぇ……。
年を経るごとにどんどんとこの映画の良さがわかってくる、っていうのは確実にあると思えます。はい。


それにこの映画、なんといってもスピットファイアですよスピットファイア!!!(急に元気になる)

言わずと知れた第二次世界大戦中のイギリス空軍主力戦闘機であり、『蛇の目の飛行機』と揶揄されることの多い英軍機の中でも実績も文句なし、知名度も抜群。
まさに日本でいう所の零戦ポジション……どころか『国を救った戦闘機』として讃えられてるのを考えるともっと凄いかも?
そんなスピットファイアが画面を雄大に、ダイナミックに、そして悲劇的に彩ります。
実機を使って撮影されているため(飛行に1時間1万ドルかかる実機を2機飛ばしてます)、ロールスロイスエンジンの音もバッチリ。
離陸時の着陸脚収納シーンも、低空をフライパスしていくフォルムの美しさも、あぁもう本当存分に堪能出来ます。たまらぬ。

さらに過去の映画『空軍大戦略』の映像(これも実機のスピットファイアとスペイン空軍仕様のMe109が登場)を徹底的にリマスターして使うという離れ業により、空戦シーンのスケール感をきっちりと確保。
近年の撮影映像と比較しても全く遜色のない質感となった空戦シーンには、
「こんなにも美しい映像で、実機のスピットファイアが飛び、戦うところを見られるなんて……!!!」と感動させられましたねぇ……。
いやまぁ確かに、どっかで見たことある映像ではあるんだけど!!!それでも美しいんですよ!!!!!!
あとガンカメラの映像なんかはもう、実物の映像を使ったのかと見紛うぐらいのクオリティでして、
この映画は本当に「実物とCGとの融合感」に於いておっそろしいほどの腕前を見せてくれています。
劇場で見た時は本当、リアリティに圧倒されたなぁ……。

ただ唯一この映画でやり過ぎたシーンとしては、ドイツ軍の輸送列車をスピットファイアで襲撃するシークエンス。
派手すぎて浮いてるなぁ……と思ったら、脚本家が「いやーどうしてもやりたくって」と無理やり入れたシーンだったようで(苦笑)。
監督はこのシーンを入れたがらなかった、というのは本当によくわかるといいますか、派手だけどちょっと映画のトーンの中で浮きすぎちゃってるんですよね……。
とはいえ実物の列車を吹き飛ばしてるだけあって迫力満点なのも確か。
対空射撃の中を低空飛行し、機銃を掃射しながら列車へと向かうシークエンスは見事な緊張感になっています。


本当の絆とは何か、祖国とは何か、寝取り寝取られとは一体なんなのか、スピットファイア超かっこいい、
浪川さんやっぱりしょっぱい役柄超似合うわぁ……とか色々と思える本作。
ここ10年ぐらいの航空機映画の中でもトップクラスにオススメして行きたい一本です。

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■13年3月26日 『ハート・ブルー』

ロサンゼルス、ベニスビーチで頻発する連続銀行強盗事件。
歴代大統領のマスクを被り、金庫は狙わず、窓口の金だけを奪って90秒以内に撤収し、一人のけが人も出さないという見事な手口の前に捜査は行き詰まりを迎えていた。
エリート候補の新人FBI捜査官ジョニーはベテラン捜査官のパパスと組んで地道な捜査を続け、
犯人はサーファーたちの中にいると目星をつける。
サーファーの中へ潜入しての捜査を行うジョニーは、捜査の一環として始めたはずのサーフィン自体に魅せられていく。
ある日、ジョニーはビーチでもひときわ見事な波乗りを見せる男、ボーディと出会うが……。


……先日見た『ブラッディ・スクール』で「何でパトリック・スウェイジなんだよ!!!」と叫んだ手前、
パトリック・スウェイジが出てる映画の感想の一つでも書いておかねば……と思ってみたものの、
自室の棚には本作しかありませんでした。
というかまぁこれがあれば充分ですよ!!!という、傑作です、はい。

91年制作で主演はパトリック・スウェイジとキアヌ・リーブスですが、特にキアヌは本作が出世作ですかねー。
これ以降『ドラキュラ』『から騒ぎ』『リトル・ブッダ』を経て『スピード』で大ブレイクしますが、
アクション俳優として紛れもなく存在感と輝きを示したのはこっちだと思うわけです。

大学ではアメフトでヒーローになりながらもヒザを故障しリタイア、FBIに入れば坊や扱いされる日々。
囮捜査の一環として始めたサーフィンの魅力に引きこまれ、男として尊敬すべき人間と出会ったことで徐々に変わっていく辺りの心や表情の変化は見事ですし、
頑固かつ神経質で俺様主義な本部長の下でクサッているベテランのパパス捜査官を奮起させるシーンには、
最近のキアヌの落ち着いた雰囲気とは全く違う、野心を感じる若々しさがあふれています。

対するパトリック・スウェイジは、もう、最高ですよこの映画!!!!(バンバン)
銀行強盗団のリーダーでありながらしっかりとしたポリシーを持ち、海を愛し、仲間を大切にし、サーフィンに取り憑かれた男。
正直もう最高すぎますというか、何回見ても惚れ惚れします。サーフィンのシーンはプロサーファーのスタント使ってますけども……。
思想的にはヒッピー野郎と言う感じではあるんですが、『男の美学』というものを感じさせる、このキャラ造形と演技はもう抜群ですよ。
後半、ボーディたちが行う『自分たちのルールを破る銀行強盗』に関しても、ああならざるをえない悲劇性が、ねぇ……。

立場的には真っ向からぶつかり合う二人が、お互いの真実を知らないままに友情を結んでいき、
それがやがて壊れてしまう、その悲劇。
それでもなお二人を結ぶ友情、共通の言葉として分かり合えるサーフィン、最後の最後にジョニーがボーディへと許した行動は、
もう本作の結末としてアレ以外に考えられないものだと思います

またベテラン捜査官パパスを演じるのはゲイリー・ビジー(プレデター2で液体窒素攻撃をやらかした挙句ディスクウエポンで殺されたFBIのキース捜査官役の人、といえばわかりやすいか)でありまして、くたびれてクサってるベテランの雰囲気バッチリ。
新人相棒と組んだことで、本来の能力や刑事の勘を蘇らせていく物語としても秀逸です。

ジョニーが魅せられ、ボーディが取り憑かれる海や波の映像は荒々しくも美しいですし、
スカイダイビングでの開放感ある映像も素晴らしいんですよねー、特にスカイダイビングの後のシーンが、もう、もう。あのコントラスト。
たまらぬ。

というか昔に友人から「これってキアヌ・リーブスとゲイリー・ビジーとパトリック・スウェイジのBL作品だよね」
とか言われたこともあるんですが、うん、まぁ、そういう雰囲気が無いわけではないというかそう見えるのは否定しないというか、
これやっぱり女性監督(ハート・ロッカーのキャスリン・ビグロー監督です)だからですかね……ですかね……(ぐるぐる目)。
ともあれ女性の皆様的にはそういった視点でご覧になられますと、大変たまらないものがあるのではないかと思います。はい。

なお余談ですがこの映画、『HOT FUZZ!〜俺達スーパーポリスメン!』の劇中でニック・フロストとサイモン・ペグが見る映画の一本でして、、
どうも世の刑事映画好きを名乗る方々的には必見の一本となってる感もありまして。あの映画見た時驚きましたねぇ(笑)。

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■13年3月24日 『ブラッディ・スクール』

プロムの開催が間近に迫り活気づくグリズリー高校。
だが、学園一の人気者だったチア部の美少女、テイラーが自宅で何者かに惨殺されてしまう。
同じくチア部の菜食主義者でみんなから残念なものを見る目を向けられているライリーもまた、
校舎内で映画『シンデヘラ』に登場する殺人鬼、シンデヘラに斧で襲われるが、辛うじて窮地を脱することに成功。
テイラーを殺したのは何者か?ライリーを襲ったのは誰なのか?解けない謎を抱えたまま日は過ぎていくが、
ついにまた一人が学外のパーティ会場で惨殺されてしまう。
犯人を見つけ出さないとプロムを開催しないと宣言する校長、自分たちの潔白を訴える生徒、そして判明する驚愕の事実。
シンデヘラの正体とは、目的とは、そしてプロムクイーンに輝くのは一体誰なのか…!?



世の中にはたまに、というか見てる映画の割合で言うとかなり頻繁に、『これはどう説明すればいいんだ』というストーリー性の映画が存在するわけですが、
いやぁこの映画は本当にすごかったね!!!あらすじ説明だけでも相当無理したねさとっちさん!!
嘘は書いてないけどこの映画の内容が本当にこれなのかといわれると……はい…(遠い目で)。

とりあえずですね、一番わかり易い説明は、こちらの



AKB48の『ギンガムチェック』PVを90分に引っ張り伸ばしてスラッシャー映画としての文脈をドカッと盛り付け、アイドルを抜き、
バカ成分を50割増しぐらいにした上で90年台カルチャーへのリスペクトをふんだんにぶち込んだ、ラーメン二郎のような作品です。

いやもうマジで。嘘偽り抜きで。
AKBが嫌いでPVとか見たくねえよ!という映画好きな人にわかりやすく説明するとしたら、
『スクリーム』を基調にストーリー性を引っこ抜き、『スコット・ピルグリム VS.邪悪な元カレ軍団』の映像感覚をいれこみつつ、
『シュタインズ・ゲート』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を叩きこみ、『ザ・フライ』に『仮面ライダーV3』のテレビバエを混ぜ込んだうえでジョジョになる映画
という感じですかね。

ここまで書いてあまりにもモヤッとした(ならざるをえない)説明だなーと自分でも思うので、こう、ネタバレ上等な説明を以下に。
いやまぁこの映画のネタバレつっても実際に見ないと意味がわからないというか、正気を疑われる感想になるんだけど!!!


冒頭からいきなりメタ視点で「私はBITCH」とか言い出すのが学園一の人気者美少女、テイラーなんですが、
どうもそのBITCHっていうのが
「Beauty(美貌)、Intelligence(知性)、Tallent(才能)、Charisma(カリスマ性)、Hoobastank(好きなバンドの名前)
という、うん俺その用法は知らない。ビッチっていう単語にそんな意味あったとか知らない。最後のそれは何だ一体。

彼女が画面の此方側へ向かって延々と語り続けてさらに「金曜の夜はシンデヘラを見よう!」とかの偽宣伝をぶち込んでくる中、
唐突に何の前触れもなく、開始3分で、自室で喉を切り裂かれ倒れたところをナイフでめった刺しにされ、更に2階の窓から突き落とされて死にます。
いくらスラッシャー映画だからつってもいきなりアクセル踏み込んだなバカ野郎!!!と、結構いい笑顔になれる展開に襲われますが、
おどろくべきことにこの後しばらくシンデヘラの出番がありません

学校は何故か時々猛烈な磁性体になるグリズリーの剥製があり、スクールカーストバリバリで、
何故かタイムマシンの理論組立と製造が授業で行われ、

クソ映画『シンデヘラ』を劇中で見て「この映画、ボルケーノ以来の傑作ね!!」とはしゃぐチア部の馬鹿女がいたりします。
まぁそのボルケーノ云々も伏線になってるんですが。多分。

ヒロインであり主人公のライリーは菜食主義者で自分に自信がなく、チア部ながら右足首に怪我をしたためパフォーマンスに参加できず、
学校の人気者であるクラプトンに恋をしているもののクラプトンは同じチア部の友人であるアイオニーといい雰囲気で、
アイオニーにお熱の筋肉馬鹿なアメフト部員のビリーがクラプトンに喧嘩を売るのを眺めてることしか出来ず、
ライリーに言い寄ってくるのはヲタ気質で童貞捨てたがってるサンダー君であり、
菜食主義の正当性を訴えるディベートでカナダ出身の学生に完全に敗北し、発作的に熊の剥製の前で首吊り自殺を試みたりという、
やや複雑な人間関係があったりもしますが、……うんまぁ本筋にはあんまり関係ないんだな、これが……。
菜食主義はこう…まさかああいう形でエンディングに絡んでくるとは思わなかったけどな……。

あとたまに胃液がヘルメットを溶かすレベルの強酸性になる筋肉バカのアメフト部員ビリー君による
『子供の頃に落下してきた隕石に触れたら右手が変質し、ハエの因子が右手に入ってしまったので周囲から隠すためにテレビを右腕に装着、「テレビの手!テレビの手!」といじめてくる同級生を、テレビ装着した右手でぶん殴り倒してたけど今ではだいたい落ち着いてテレビは外せた。でもたまに手から変な粘液が出たり胃液が強酸性になったりする。これが俺なんだ』
という独白を含んだサイドストーリーも挟み込まれてきますが、このサイドストーリーとかハエ人間の悲哀は本筋に全く関係なく、
でも隕石落下とかそういう辺りはエンディングに絡んでくるというですね。
ごめん正直自分でも何書いてるんだかよくわからねーが基本的に間違ったことは書いてない、はず、多分。

そして中盤でいきなり「19年間、図書館で居残りを続けてきた、誰からも存在を認知されてなかった生徒」が登場し、
なぜ自分が居残っているかすら忘れていたものの、理由を思い出すと同時に過去と現在の記憶が同期、
「1992年(この映画の舞台は2011年)に戻って歴史を変えないと世界が滅ぶ」と言い出し、
何故か天才タイプの学生トウシバによっていつの間にかタイムマシンに改造されてた実は宇宙人だったグリズリーの剥製に飛び乗って過去の学校へと移動し、何故か身体と意識を19年前の母親と交換していたチア部の馬鹿女と再会し、ちょっと過去の歴史を弄ったら未来が変質して一件落着かとおもいきやや殺人鬼であるシンデヘラはまだ残ってて、
パトリック・スウェイジとスティーブン・セガールのスタンドを召喚した若者二人で決闘するという、
もう正直ネタバレとか気にしても仕方がないレベルで意味不明の展開が怒涛のように続きます。なんだこれは。
正直見てる途中で「何でだよ!!」とツッコミを入れる気力がへし折られます。もはやツッコミ入れてどうにかなる次元を通り越しておる。
でもなんでパトリック・スウェイジなんだよ!!!!!!!!

驚くべきこと、にこれらの支離滅裂かつ意味不明なキーワードやサイドストーリーの数々をぶちまけまくっておきながら、
後半でなんとなく天才的なハンドリングによってこれらの伏線をほとんど全部回収、
なんとなく「あー、うん、まぁ面白かったよね」とか思えてくる辺りに至っては、ジョセフ・カーンの才能を認めざるを得ません。
そう、この映画、実に理不尽というか悔しいことに、こんだけ支離滅裂なのに「楽しい」んですよ。おのれ。

内容の説明をしようと思うと上記のような支離滅裂かつ正気を疑われるテキストにならざるをえないという重大な欠点を抱えてるものの、
映像としてはですね、こう、すげえ面白いんですよ。ものすっごくミュージックビデオ的というかPV的というか。
オープニングクレジットは学校内をある生徒が移動する映像に被されて出てくるものの、
単に字幕で出るのではなく学内の張り紙、ロッカーのダイヤルロックの文字、壁面の落書き、トイレットペーパーの印刷として提示され、
さらにロッカーをスケボーで殴るたびにクレジットが変わったり……という、非常に見てて『楽しい』映像になってます。

何せ監督があの映画『トルク』を撮影したジョセフ・カーンなわけですよ。
『トルク』で「すげえ、ワイルド・スピードとトリプルXからさらに知能指数って引き下げれるんだ」とボンクラ映画ファンを驚愕させた、
あのジョセフ・カーン監督なわけですよ。
『トルク』の撮影と同時期に撮影したブリトニーの『Toxic』MVグラミー賞を受賞するとかいう、
ダメ映画ファンの顎が外れるような驚愕の展開を迎えた、あの、ジョセフ・カーンなわけですよ。
今や本職がミュージックビデオの監督となってるあのジョセフ・カーン監督なわけですよ。

明らかに『トルク』の頃から比べて支離滅裂さ度合いが悪化(あるいは進化)してるのに面白い。
映像作りのテクニックは明らかに進歩してて、見ていて全然飽きが来ない。
日本で言うと三池崇史監督のボンクラ部分だけを抽出して煮込んで濃縮したかのような、このエッジの効きっぷり。
決して他人にオススメ出来るわけではないという、3フィートオーバーぎりぎりのラインを走るかのようなこの作り、いやお見事。

まぁ『死霊のはらわた』シリーズで好き放題やって『キャプテン・スーパーマーケット』で色々と天元突破し、
『シンプルプラン』とか『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』撮ってたと思ったらいきなり『スパイダーマン』三部作の監督になったサム・ライミが、
「今なら好き放題やった映画作れるよね?」といったかどうかは定かじゃないけどノリノリで作ったとしか思えない映画『スペル』みたいな、
『ある分野できっちりと成功した監督だからこそ許される全力のお遊び』という感じですね。
『ギンガムチェック』のPVも、多分このブラッディ・スクールを6分間に圧縮する方向で作ったのかなぁ、などと。

この映画を午後ローとかで実況しながら見たりすると非常に楽しい混沌としたタイムラインが生まれそうですが、
正直これは一人で観て悶絶しながらジタバタしてニヤニヤして『いやぁ面白かったね!!』と澄んだ瞳になるのが正しい気もしますので、
もし仮にこの支離滅裂な感想を読んでびびっと来た酔狂な人がおられましたらぜひぜひ……!!

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■13年3月12日 『Another』

父親の海外赴任に伴い、故人である母方の実家、夜見山市の中学校へと転校してきた恒一。
新学期から夜見山北中学へ通うはずが引越し早々に体調を崩し入院、GW明けからやっとクラスへ合流することになる。
だがそのクラスは何かが違っていた。
1つだけ空席の座席、何かを隠しているようなクラスメイトの態度、
思わせぶりな副担任からの「夜見山北中で過ごすための四か条」、
そしてクラスメイトから存在を否定される不思議な雰囲気の少女、見崎鳴……。
「このクラスでは一体何が起きているのか」を知りたがる恒一だったが、誰もが口を濁して語ろうとしない日々。
しかしある日、クラスメイトの女子が階段から転落し、死亡。
彼女は息を引き取る直前、その場に居合わせた恒一へ
「あんたのせいよ……」という呪詛を残していた。
そこからゆっくりと静かに、クラスメイトや担任、その肉親たちが不慮の死を遂げていく。
止まることのない死の歯車を止めるには?三組の抱えた「秘密」の正体とは……?



(映画のタイトルが)Anotherじゃなかったら(興収的に)死んでた

っということで昨年の深夜アニメ界隈に爽やかな『青春とホラーとドリフ』の入り混じった涼風を吹かせ、
ボンクラホラー作品クラスタのみならず色々な人に「あかざーさん可愛い」と言わしめ、
いろんなホラー・アクシデント的なシチュエーションを指して「Anotherだったら死んでた」と評するのが流行するぐらいには、
視聴者から愛されたアニメ『Another』ですが、素はといえば新本格ミステリの大御所、綾辻行人氏の作品が原作。
アニメの方は原作を結構改変したり登場キャラ(主に赤沢さん)の扱いを変えたりという采配が上手く的中したなーという出来でしたが、
じゃあそのアニメとは違う、原作準拠気味の『Another』を映像化すると……今回の映画になりました、という……。

結論から述べますと『2時間弱の作品としては頑張ったと思うけどAnotherじゃなかったら死んでた』という感じですかね、本当……。
30分枠(本編実質22分)の12話構成ということで5時間近く尺を使えたアニメと2時間の本作を比べるのもどうかとは思うんで、
今回はちょっとその辺の比較は抑えめにして作品単体として評価して行きたいとは思うんですが。

とにかくもう本作、「なにか不吉なことが起きようとしている」「この人が死ぬんじゃないだろうな」という、
視聴者の首元を真綿でギリギリとゆっくり締め上げていくようなあの感覚がまったく無いのには拍子抜けでしたね……。
もちろん、そういう演出がないということではなく、あーそう言うのをやろうとしてるんだろうなぁとは伝わってくるんですが。
悲しいことに力量とセンスの違いなのか、ねぇ……そういう演出はジャパニーズホラーのお家芸かと思ってたんですけども(苦笑)。

その割に「いない者」になった主人公二人がキャッキャウフフと青春を謳歌する様子は描写されており、
……うん、あのシーン要らなかったよね……イキイキしてる鳴ちゃんという貴重な生態は見れましたけどね……。
お陰で全体的に『かったるい』映画になってしまっており、緊張感も持続させられていないのはすごくマイナスが大きいなぁと。

あと『死者は誰なのか』っていうこの作品最大のポイント(何せこれがあるからあの合宿での大惨事が発生するしね)も、
キャスティングと冒頭からのクドい演出でまるわかりなので、終盤の合宿所での展開はもう、コメディ見てるような気分になってきます。
ここは映画というか実写だから起きちゃう悲劇というかねー…役者の割り振りで分かっちゃうのよねぇ……(遠い目)。
その点で、アニメでのあの『叙述トリックの可視化』は本当に素晴らしかった。というかすごすぎてあんなん予想できねえ……!!!

ただ、良かったポイントが無いわけではなく、特にラストの『死者をもう一度殺す』ところのシークエンスは良い感じにアニメは違っていて、
個人的にはこの終わり方のほうが好みではあるかなぁという……アニメ版だといくらなんでもアレは可哀想すぎる……。
実写版だとそれなり以上に良い扱いというか、ちゃんと華を持たせてあげられてるという気がします。

そんなこんなで、アニメの『Another』を念頭に置いて見ると大失敗する感じの作品ですが、
だからといって単品で見て面白いかというと「1.3倍速で見るといい感じですよ」という他に無く、なかなかこれは……ねぇ……。
完全にAnotherという作品の予備知識がない人が見たらどう思うのかなー、というのは興味が有るところですが。

なお、この映画のBDには「2014年の夜見山北中学校で起きる事件」を描いたショートムービーが収録されてる(レンタル版には未収録)らしいんですが、うーん。

・BDはこちら→アナザー Another Blu-ray スペシャル・エディション
・アニメ版はこちら→Another コンプリートBlu-ray BOX
・原作本はこちら→綾辻行人 Another(上) (角川文庫)綾辻行人 Another(下) (角川文庫)
■13年3月9日 『戦略大作戦』

ノルマンディー上陸作戦から前線で戦い続けるも、丘への突撃で誤って友軍陣地を盛大に攻撃してしまい、
ケリー中尉は責任追及の煽りを食らって二等兵まで一気に降格させられてしまう。
ビッグジョー曹長率いる小隊に配属され前線に張り付いてはいても、都市奪還の一番乗りなどの手柄は
尽く他の部隊に奪われ続け、他の小隊員と同様にフラストレーションを溜め込んでいた。
ある日、ビッグジョーとともにドイツ軍陣地へ潜入して情報将校であるダンコフ大佐の拉致に成功するが、
尋問を開始しようとした所でダンコフの手荷物から金塊を発見してしまう。
ダンコフを酔っ払わせて聞き出したところ、ドイツ軍支配下の街クレアモントに、
1600万ドル相当に及ぶ金塊をため込んだ銀行があるという……。
さらにその金塊を移送しようとドイツ軍が計画していることも判明。
「自分たちだけでその街を奪還して、友軍が到着する前に金塊を全部盗んじゃえばドイツ軍の仕業って事にできて完全犯罪成立だよな?」
閃いたケリーは他の小隊員や資材部の人間、壊滅した戦車部隊の生き残りを引きずり込み装備を調達。
折しも所属する中隊は三日間の休暇に入ったところだったが、ケリーの熱意に負けたビッグジョー率いる小隊はドイツ軍の陣地へと単独で進撃を開始した。
落ちる橋梁、引っかかる地雷原、そしてクレアモントの街で待ち受けるドイツ軍部隊を突破し、
ケリーたちは無事に金塊を手に入れられるのか…!?


っということで『ガールズ&パンツァー』10話、黒森峰との決勝戦前夜に一年生組がご飯食べながら見てた映画であり、
5話での秋山殿がサンダース付属へ潜入したときの偽名「オッドボール軍曹」の元ネタでもありますこの映画!!!
ガルパンから戦車道へと踏み込んだ人にも見やすい映画ですが(何せ劇中にあのワンシーンが出てるしね)、
それを差っ引いても非常に楽しい戦争アクション・コメディ映画です。

うだつのあがらない連中が一発逆転狙いで勝負に出る、というシンプルなお話ではありますが、
のどかなシーンと戦闘シーンとのコントラストは鮮やかですし、友軍の攻撃に足を引っ張られてブチ切れる歩兵部隊や、
原隊が全滅しちゃったんでなんとか色々と理由をつけて前線に出ようとしない戦車部隊、
橋の修復を面倒がる工兵部隊などなど、実に「あーもー戦争めんどくせえわ…寝ときたい」という連中が、
揃いも揃って「え、金塊あるの!?行きます!!!」ってなるのが実に現金で楽しいところです。

また、ケリーたちの行動が師団本部に伝わってしまい「頑張って前進してるすげえやる気のある部隊があるな…!?」と誤解され
そこから始まる師団巻き込んでの狂騒曲。
「橋を直せって言われたから護衛部隊含めて100人規模で来たよ、金塊くれよな!!」の工兵部隊などなど、
最初は小規模だった一行がどんどん膨れ上がって(そして一人頭の取り分が減るのにゲンナリするケリー)いく物語が非常に楽しく、
2時間半近い長さを全く感じません。

ガルパンで登場キャラ達が見ていただけあって、戦車に関しても見どころたっぷり。
特にオッドボール率いるM4シャーマン小隊は、撮影当時まだユーゴスラビアで現役だったM4A3E4型を使っており、
細かな仕様の違いは『砲身太くしたのは相手ビビらせるための見せかけ現地改造です!!』という力技ですが、
実車両のM4が走る!!撃つ!!動きまくる!!!というのはもう、やっぱり見ていてグッと来ます。

特に鉄道操車場に駐屯するドイツ軍の陣地を襲撃するシーンは米軍規範のアローヘッド隊形で、
カントリーミュージックを砲塔横にくっつけたスピーカーから爆音で流しつつ、
主砲と機銃で重砲や機銃陣地、指揮所などを叩き潰し、ドイツ軍歩兵をなぎ倒しまくるという大暴れっぷり。
いやぁ不意打ち食らわせたつってもコレは凄いな、といい笑顔が出てきます。
普段はクレイジーだったりやる気無さ気なオッドボール軍曹が、いざ戦闘に突入すれば真剣な顔になってテキパキと指示を飛ばしつつ、
時たまノリノリになってる辺りは実に「戦う兵士」感が堪能出来ますしね。

対するドイツ軍はティーガー戦車が登場。
他の映画同様にT-34/85をベースにした改造ティーガーですが、かなり仕様にこだわって作られており、形状的にもかなり良好。
さらに「欧州の小さな街の中に佇むティーガー」という情景は、なかなかグッと来る雰囲気がありますねぇ。

ドイツ軍の守備隊にティーガーがあるんだよーとケリーから聞いたオッドボールが
「真後ろ取れればなんとかなるけどM4でティーガー三両とやりあえとか死ねっていうのお前」
みたいなリアクションをするところが楽しいんですが、
「そこは戦術と智恵かな」、という感じで上手いこと誘引撃滅するシークエンスは実に面白いところです。
ちなみに大洗の戦車道部一年生組が見て涙ぐんでたシーンは、そんなクレアモントの市街地でのM4とティーガーの戦いですが、
ええと、何と言いますか、「確かに泣けるけどそういう意味じゃねえ」という方向の涙だったりします。
どっちかというと「えええええええそこでそれなのぉぉぉぉお」みたいな意味の。

最後の一両になったティーガーをどう倒すか……というところでケリーとビッグジョー、オッドボールが立ち上がるシーンは、
もう本当に監督ノリノリで楽しんでるな、という西部劇っぷり(笑)。何回見ても爆笑できるのでぜひぜひ。

歩兵の装備がトンプソン短機関銃とM1919機関銃だけだったり、ドイツ軍もMP40ぐらいしか持ってないのはご愛嬌ですが、
個人的にはあの「動きまくるM4シャーマンの実車」という映像でもう大満足、十分に楽しめますねぇ。

『地獄の黙示録』や『プライベートライアン』の名シーンの数々を彷彿とさせるシーンもそこかしこに見受けられて、
やっぱりこの映画が後々にの作品に与えたインパクトとか影響って大きいよなぁ……とも思えますし、
戦車云々を抜きにしても、戦争アクション映画の傑作として、ぜひとも見ていただきたい一本です。

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■13年3月2日 『レッド・アフガン』

アフガニスタンへと侵攻したソビエト軍戦車部隊が一つの村を襲撃し壊滅させるが、撤退して本隊との合流を図る中、
一両の戦車が道に迷い、出入り口が一つしか無い谷へと入り込んでしまう。
襲撃を生き延びた村人、そして近隣のゲリラ兵達は憎悪に燃え、たった一門のRPG-7を担いで、谷へと迷いこんだ戦車を狩りに動き出す。
その一方、孤立したソ連軍戦車の中では車長と乗員との間に深刻な軋轢が生じていた……。



はい、先日の『レバノン』の感想の時にちょこっと触れましたが、第二世代型以降の戦車がメイン級で出てくる映画の最高峰、
とりあえずこれ見てからじゃないといろいろ始まりませんわ……!!!!というのが本作品。
公開が88年ということでソ連がアフガン侵攻を「どうも失敗くせえな、撤退すっか……」と思い撤退し始めた頃の作品ですが、
結構強烈にソ連を批判しつつ、アフガンのゲリラ兵達のどうしようもないところや復讐心の成させる残酷さにも触れていて、
ほぼ同じタイミングで全米公開された『ランボー3』と比較しても、決して引けをとらない……むしろこっちの方がグッと来る映画になってるかもしれません。

登場する戦車はイスラエルのチラン戦車(中東戦争でイスラエル軍が鹵獲したT-54/55を改修、自国で運用できるようにした戦車)を使用。
T-55を改修したチランを更にT-55風に戻して撮影してる、という辺りには世の不条理を感じないでもありません。
しかしこれがまぁ、映像の宝庫!!!

砲塔の手動旋回ハンドルやらエンジン始動補助用のバッテリー、砲弾ラックの構造からコマンダーズキューポラの旋回から何から何まで、
狭い車内なのにポイントを押さえて撮影されており、「へーこんな風になってるのか……」と見入ってしまうこと間違いなし。
イスラエル軍仕様とはいえほぼ実質T-55なので、貴重な「動くT-55の車内レイアウト」をじっくり見られるのはすごくいいですねぇ。

装備も主砲である100mm砲、同軸機銃に火炎放射器、砲塔上部の機関銃(チランのM2からDshk機関銃へと戻されてます)、
底面ハッチを利用したガス兵器の使い方など、全部に見せ場がたっぷりと用意されています。
特に冒頭の戦車部隊による襲撃シーンは必見。
主砲発射から着弾までがワンカットで捉えられていて、地上に刻まれる砲弾の軌跡、そして着弾からの爆発など、
「おいこれどうやって撮影したんだ実弾使ったの!?」とか思ってしまう映像です。模擬弾なのかなぁアレ。
砲弾の飛翔音もしっかり収められていますし、いやぁこの監督は戦車大好きすぎるんじゃなかろうか(笑)。

対するアフガニスタンのゲリラ(当時はムジャヒディンかな)の装備はというと旧式のライフルにAKが少数と機関銃、
リボルバーとオートマチックの拳銃に、撃発機構に不調を抱えたRPG-7が一門と少数の弾頭だけ。
果たしてどうやって強固な防御力と強大な火力を備えた戦車へ接近し、RPG-7を叩き込めるか……というドラマの結末については、
ぜひとも見て確かめて欲しいなぁと思います。

現代戦車の強さ・かっこ良さ・恐ろしさを堪能するなら本作は打ってつけじゃないかなぁ……。
あと実際に戦車の車体上面に火をつけたり岩石落っことしたり砲身破裂させたりしてるんですが、
……これやっぱり実車そのものを好き放題にアレしてるんですよね、これ……(震えながら)。

登場するキャラクターも魅力的というか、どうしようもなく『軍隊』『戦争』に飲み込まれてしまった人たちや、
ソ連軍侵攻への対抗で心を擦り切らせてしまった兵士たち、復讐に燃える女性たちなど、
見てて「あーーーー戦争ってイヤやね……」と思わせてくれるキャラが中心なのはすごく良いと思います。
特にT-55の車長であるダスカルの過去は重く、『戦車に取り憑かれた兵士の狂気』を静かに、不気味に、恐ろしく描いてますねぇ……。
対する本作品の主人公、操縦士コベチェンコの青臭さと、中盤以降の躍動感は、実に見ていて気持ちが良いですし、
終盤での二人の会話は単なる『ソ連のアフガン侵攻』に対するプロパガンダだけではない重さを感じられます。
というかこの映画、ソ連軍の兵隊役の俳優が全員英語(アフガニスタンの住民は現地語)を喋ってるんで、
今見てみると米軍による対テロ戦争の一環でのアフガン侵攻を批判してるんじゃねえのかこれ、と思えたりするのが非常によろしくないところです(苦笑)。
いやぁ時代が変われば映画の立ち位置も微妙に変わるな、本当……。

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■13年3月2日 『バルジ大作戦』

1944年9月、西部戦線では連合軍のマーケットガーデン作戦が失敗に終わり。
東部戦線ではソビエト軍のバグラチオン作戦もポーランド東部で息切れを起こし、東西ともに戦線は膠着状態にあった。
そんな中でヒトラーは西部戦線の苦戦を一気に打開する作戦を立案する。
アルデンヌの森を機甲部隊で突破し、イギリス軍に奪われたアントワープを再奪回、
北方の連合軍を包囲殲滅し戦線を再構築するそのプランは、『ラインの守り作戦』として進められ、
低気圧と分厚い雲で連合軍の航空機を無力化できるタイミングに実施されることとなった。
米軍のカイリー中佐は偵察の中でドイツ軍による大規模な反攻作戦の兆候を嗅ぎつけるものの、
「ドイツ軍に大規模な反撃の能力はない」と楽観視する司令部に聞き入れられず、ぬるま湯のような司令部の中で孤立していく。
一方、ドイツ軍戦車機甲部隊の指揮官として東部戦線で戦い続けてきたヘスラー大佐は西部戦線に異動され、
新型のティーガーUを始めとする機甲部隊を率いて出撃、連合軍の陣地を圧倒的な火力と装甲のもとに薙ぎ払いながら前進していく。
航空支援の受けられない連合軍機甲部隊、天候不良の間に全てを決めなくてはいけないドイツ軍。
両者は共に不安要素を抱えつつ、巨大な戦場のうねりへと飲み込まれていく……。



っということで『バルジの戦い』といえば第二次大戦好きには知られた一大反攻作戦であり、
オットー・スコルツェニーによるグライフ作戦や、ヨアヒム・パイパー率いる戦闘団の大活躍にマルメディ虐殺事件、
さらにバストーニュの戦いでの連合軍守備隊からの返答「NUTS!!!」などなど数々の逸話に事欠かない戦場だったわけですが、
本作はそれらのエピソードを上手いこと盛り込みつつ、基本的には架空の人物でいろいろと脚色して、『エンターテイメント作品』として作られた、
古き良き戦争映画、と言った趣の一本です。

登場する戦車はドイツ軍のティーガーU(ケーニヒスティーガー)をM47パットン戦車、
アメリカ軍のM4シャーマンをM24軽戦車が務めていますが、これはさすがに両方とも実車両を使えなかったからですね(苦笑)。
とは言えM47の重量感はまさしく『悪役』としての雰囲気たっぷり。M4を演じるM24チャーフィー軽戦車はキビキビとした挙動が小気味良く、
「どっちも実車じゃないけどこれはこれで見てて気持ちいいよ!!!」といえる仕上がりになっています。
しかしM24チャーフィーはいろんな作品に出てくるんで(レマゲン鉄橋とかパットン大戦車団とかね)、
『映画の中の米軍戦車』といえばこれだよなぁ……。
両車ともに20両以上が登場し、走る!撃つ!!歩兵をなぎ倒す!!!ということで、
「豪快な戦車戦闘」を見たい人にはぜひともオススメして行きたい一本ですね。少なくともアメリカ映画の中では!!!

あとこの映画を語る上で絶対に外せないのは、もう、ドイツ軍のヘスラー大佐を演じるロバート・ショウの素晴らしさ。
中盤までのカッコ良さときたらもう、この映画の主役であるカイリー中佐を演じるヘンリー・フォンダが完全に霞む勢い。
厳しくも諧謔味を持ち、司令部の楽観的な見方を批判、娼婦には目もくれず、戦いの中へ己を投じ続ける武人としての佇まい、
これがもう本当素晴らしくて、未だにこのロバート・ショウを超える『かっこいいドイツ軍人』を映画で見たことは無いかな……。
強いて言うなら『スターリングラード』のエド・ハリスぐらいのもんでしょうか。
ヘスラー大佐が率いることになる戦車部隊の車長たちとの『パンツァーリート』のシーンは本当、もう、しびれます。
ただまぁどうも映画会社のエライさんの「おいちょっとこいつカッコ良すぎて連合軍が食われてるんだけど」の一声があったとかで、
最終的には……というか中盤以降が…こう……(苦笑)。


もちろん完全な傑作ということではなくて、
「スペイン軍の演習地を使って撮影したんで両軍入り乱れての戦車戦闘がどう見てもアルデンヌじゃない」とか、
「ヘスラー大佐が中盤以降でどんどんアレな人になっていく」とか、
「マルメディの虐殺とかバストーニュの戦いのエピソードちょいちょい入れてくるけど、入れてるだけだよね」とか、
そういう細かい不満点はあるんですが……もうちょっと的を絞るか、あるいはもうちょっと視点を広くしてればね。

あと「史実と違う!!!」っていう部分に関しては、出てくる人物も全員架空の名前ですし(ヒトラーぐらいしか合致してない)、
これはもう『バルジの戦い』のエピソードを抽出して再構築した完全なフィクション』と割り切っちゃえばいいんじゃないかなと思います。
有名なバイパーもスコルツェニーも出てこないんですが、明らかに同じような役柄のキャラがいますしね。
あとアメリカとイギリスの俳優づくしなので、セリフは全部英語という…まぁよくある話ではありますが(苦笑)。
グライフ作戦のところとか見てると、ドイツ語と英語とに分けて欲しかったなぁと思うんだけどね……

とは言え『ヨーロッパの解放』みたいな狂った上映時間ではなく、3時間弱でさっくりと見られる戦争映画ですし、
もはやアニメの中でしか叶わなくなった『大戦車戦』が見られるという意味でも、ガルパンからこっちの世界に興味を持った人たちには、
ぜひともオススメして行きたい作品ですねぇ。
そしてこの『バルジ大作戦』を見たあとは『バンドオブブラザーズ』とか見てもいいのよ……!!!

・DVDはこちら→バルジ大作戦 特別版 [DVD]
・合わせて見ておきたい→バンド・オブ・ブラザース BD-BOX [Blu-ray]
・M24チャーフィーといえばこれだよね→レマゲン鉄橋 [DVD]
■13年2月28日 『プロメテウス』

「あなたは広告代理店があたかもデートムービーであるかのように宣伝している、リドリー・スコット監督がエイリアンシリーズの前日譚として作ったグロ描写満載の、吹き替えが剛力彩芽で字幕が戸田奈津子の映画を、見ますか?」


という問いかけを投げられたら「テメエふざけんじゃねえ」と昇龍裂破食らわすこともやぶさかでは無いものの、
まさか本当にこんなプロモーション打ってきやがるとは……と呆れ半分ため息半分(それ同義じゃね?)で眺めてますと、
いやぁ良い感じに「カップルがげっそりしてた」「若い女子二人がどんよりしてた」などの目撃情報が多数見受けられ、
これはもしかして我々的にはとんでもないご褒美映画なのでは……!?と思ってはみたものの、
何かタイミングあわなくて結局レンタルで見ました『プロメテウス』!!!

いやーーーー、。とにかく雑。リドリー・スコットというか脚本の問題かなぁこれ……。

内容自体は『エイリアン』第一作よりも以前にあたりますが、これもまた『エイリアン前日譚』の第一作でしか無いため、
「此処から先に何があるか」はまだまだ見通せなかったりするのがもどかしいところですね。
全体的に地味かつモッサリ気味で、巨人VS巨大イカ!!!!とかの馬鹿馬鹿しいシーンはあるものの、やっぱりちょっとうーん。
すべての謎を解明して懇切丁寧に観客へ説明する必要は無いものの、やっぱり『山場・見せ場』は欲しかったかなと。
なお『人類誕生の起源に迫る』という謳い文句ではあるものの、それはこの映画の本筋とはまっっっっっっったく離れたところにあり、
冒頭1分でサラッと流れる映像がその回答になってます。いいのかあれは。ちゃんと見たのか配給の担当者。

あと探査クルーが すごいバカばっかり。

……なんていうか、こう、お話を進めるためにキャラクターがあえてバカな行動を踏まされてるというか、
そこら辺の残念感がね……お前らもうちょっと慎重にやらんかい……!!!!!!
とにかくもうキャラの行動全部が雑なので感情移入できず、最後の最後に宇宙船のクルーたちが見せる男の心意気も、
「ばんざーい!!!!!」で一気にギャグっぽくなってしまったのは痛恨だと思います……。


とは言えそれら全ての不満点を凌駕し「この映画最大の問題点はあれよな」と満場一致で議決されそうなのが、
主人公であるショウ博士の吹き替えが剛力彩芽というところですよ、ええ。
いやぁ、俺、DEVILMAN見るのと同じぐらいの胆力が必要でしたよこれ……!!!!!
むしろDEVILMANの場合は伊崎兄弟の演技のひどさに周りが引っ張られて全体的に演技レベルが底辺に落っこちてたので、
見てる側の意識レベルもそのへんまで落っことしておけば良かったんですが、
こちらは脇を固めるのは外画吹き替えなどでキャリア積みまくったベテラン勢、なのに主演は剛力彩芽!!!
ショウ博士以外のキャラが喋ってる時は演技レベル95とかなのに剛力の一言で演技レベル10とかまで落っこち、
脇役が喋るとまた演技レベルが跳ね上がるジェットコースタームービーでしたね!!!(そういう意味じゃねえ)
これほどまでの演技レベルアップダウンを経験することになるとはこのリハクの目を持ってしても見抜けなんだわ……(うつろな目)。

かと言って字幕は安定の戸田奈津子なので「この翻訳は・名称は・意味合いは正しいのか」という点に意識が行ってしまうので、
一番おすすめなのは字幕消して吹き替えも無しのオリジナル音声を聴きとって楽しめる程度の英語力を身につけることですね(ぇー)。

とまぁものすごい勢いで文句言うことになってしまった本作ですが、
『エイリアンVSプレデター』……はともかく『AVP2』という紛れも無い駄作でいろいろとアレなことになったエイリアンの物語を、
巻き戻してリスタートさせるに足りる謎や第一作目へとつながる要素の数々は魅力的だと思います。
やはり同好の士と共に「あーでもないこうでもない」と語り合える、エヴァQみたいな映画になってると言えるんじゃないかなぁ。
巨人と巨大イカがアレしてああなったところからあいつが出てくる辺りには「そうきたかー!!!」と思わず喝采、
となるとあれはああいうことねー、アレの一作目に出てきたのもなるほどふふん……と『エイリアン』作品世界に深い人ほど、
楽しめる要素が入ってるのは嬉しいところだと思います。
見る価値がないわけではない、というよりも『エイリアン世界の謎に迫る』シリーズになることを期待して、
まずはこの続編を期待したいところではありますが……しかしこのシリーズ完結までリドリー・スコット監督は現役を続けられるんじゃろうか……。

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■13年2月26日 『ハンガー・ゲーム』

激しい内戦の末に、反乱を起こした州を鎮定し、平和を取り戻した国家パネム。
富裕層によって支配された都市『キャピトル』を中心に、貧困地区が統制下に置かれたその国では、
内戦の悲劇を繰り返さぬよう、忘れぬよう…という名目で、キャピトルを含む12の地区から毎年二人ずつの若者を選出し、
最後の一人になるまで殺しあうデスゲームである『ハンガー・ゲーム』が開催されていた。
幼い妹が出場者として選出されてしまった少女、カットニスは自ら身代わりに出場することを申し出て、
選出されたもう一人の青年ピータとともに首都へと向かう。
短い訓練期間で叩き込まれる武器の扱い、生き残り方、ゲームの出場者としてのテレビ出演。
自らをサポートしてくれる専任スタッフたちとの、短いながらも確かな交流。
そしてついにハンガー・ゲームの幕が開く……カットニスは最期まで生き残ることができるのか…?


っということで映画のトレーラーが公開されるやいなや『テメエこれバトロワのパクリじゃねえか!!』という日本の映画ファンの怒号が響き渡ったのを思い出してしまう感じのあらすじですが、


いやーーーーーーー







本当に面白かったですよねバトルロワイアル……(遠い目)




…いえ、ね、劇場で見た人たちから聴いてはいたんですよ。
「これバトロワじゃなくてトワイライトだから!!」
「バトルランナーかと思った?残念トワイライトでした!!!」
「仮面ライダー龍騎って面白かったよね」

「とか、そういう反応を……。

でもほら、こう、期待するじゃないですか!!いくらトワイライト系の映画だからつってもデスゲームの舞台が整ってる以上、
見応えのあるアクションとか!!駆け引きとか!!如何にシステムの裏をつくかの知能戦とか!!!!!

……まさかそういうのが全くなし、むしろ『ハンガー・ゲーム』の部分がないほうが面白かったんじゃないかと思えてくるだなんて、
まさかそんな……っ!!!!!!!!(憤怒の表情で太鼓を打ち鳴らしながら)

や、劇中のデスゲームであるハンガー・ゲーム自体はなかなか面白いシステムなんですよこれ。
・出場者には4日間の訓練期間が与えられ、武器の扱いやサバイバル術を習得することができる
・出場者は富裕層である『スポンサー』にアピールすることで、フィールド内で支援物資などの援助を得られる可能性がある
・開催直前までのアピールで出場者の『期待数値』がそれぞれ判定され、その数字が何かの判断材料になる可能性がある(前述のスポンサーとの関連性があるかもしれない)
・キャピトルから選出された若者たちは、幼い頃から訓練を受けているため、『スポンサー』からの援助は受けにくい
・生き残った一人には、家族を含めて非常に豊かな暮らしが確約される
・国民すべてがこのハンガーゲームの中継を見ることを義務付けられている


……など、『バトルランナー』的な要素も組み込まれて、なおかつ参加者をひと通り戦える状態にして実施されるという点を考えると、
少なくとも『バトル・ロワイアル2 鎮魂歌』よりはよほど知能指数が高い運営システムになっており、
前半は紛れもなく「あぁこれは普通にやったら面白くなるシステムだし、ここまでを見てるとそんな悪くは……」と思えてくるんですが、

中盤から あっという間に これらの特徴が 忘れ去られまして(嗚咽)。

……いやぁ、うん、まぁ恋愛映画としては正しいのかもしれませんが、デスゲームを扱った映画としてはこれ、ダメだろう……!!!!
とりあえずやっときました、なスポンサーからの援助物資!!!全く回収されない期待数値!!!
どの地区の誰だかわからない・教えられても覚えてられない個性ゼロの参加者!!!欠落しまくる心理描写!!!!!
ぶれまくる運営の方針!!!コロコロ変わるルール!!!介入しまくる運営!!!単なるエピソードの羅列のみ!!!

ここまで「デスゲーム運営がやっちゃいけないこと」を丁寧に全部踏み抜いていく映画は久々ですね!!!(いい笑顔で)

私いろいろと悪趣味デスゲーム系の映画見てきましたけども、いやぁ、この映画、トップクラスに雑。すっっっっっっごい、雑。
恋愛映画を構成する要素として『デスゲーム』をモチーフにしてくるのは別にいいんですけども、
その肝心のデスゲーム部分がまったくもってちゃらんぽらんな出来でしか無くて、お前は何を描きたかったのかと……。
ていうかもうこれデスゲームじゃなくてもいいじゃんよ!!!と思えてしまうのは、
なんというか『致命的な失敗』とかいうのを通り越して一種の奇跡なのではなかろうかとすら思えてきますよねー(ドブを見るような目で)。

これ、さとっちさんはまだ劇場で見た組のリアクションを見てある程度の心構え出来ててすらこの感想なわけですが、
初日とかに見に行っちゃった人は、どういうダメージを受けてしまったのかやや心配になります(震えながら)。

いやまぁフルボッコにしててもあれなので良かったポイントを探しますと、うん、ディストピア感は非常に良い感じで、
豪華だけどどこか退廃的な印象を与える列車の中やキャピトルの作りは楽しめましたね……。
……あとは……こう、うん、はい……あ、アレだ、カットニスたちをサポートするスタッフは良かったかな。
レニー・クラヴィッツがああいうイイ演技してくるとは。

しかし全体的に見ますとなかなかひっっっっっっっっどい映画(何せ恋愛映画としてみても完全に失敗してる)でして、
全3部作ということですが、果たしてこれを見た上で第2作・第3作目に期待できるかといいますと……ええ……。
とりあえずこの映画がラジー賞にノミネートされず、むしろピープルズチョイス・アワードで5部門受賞と聞きますと、
いやぁアメリカ人なかなか洒落が分かるじゃないかHAHAHAとか思ってしまうわけですが。はい。
……アクション要素あったっけなぁこれ……。
個人的には『見る側』の心根にまで踏み込んできた『監獄島』をオススメして行きたいところです。

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■13年2月23日 『レバノン』

1982年、レバノン戦争の初日、イスラエル陸軍。
歩兵部隊と共同して行動する一両の戦車があった。
砲手のシュムリクを始めとして実戦経験の乏しい戦車兵たちは「簡単な任務ですぐに戦争が終わる」の言葉を信じ、
街道の警備を務めるものの、やがて前進して街の探索任務を命じられる。
徐々に不穏な空気に包まれていく戦場、相互に不信感を募らせていく歩兵指揮官と戦車長。
やがて戦車に一発の対戦車弾が直撃、エンジンが不調をきたしてしまう……


っということで巷では『ガールズ&パンツァー』の影響で第二次世界大戦中の戦車ブームが到来しております。
モデグラどころかアーマーモデリングまでもが「表紙にガルパンのガの字もないけど実質ガルパン特集号」な紙面を作り、
さらにそれが発売日に瞬殺し増刷が決定、モデグラはガルパン特集第二回目の号でスタッフ描き下ろしの表紙を展開し、
発売前にAmazon他のネット書店でも完売続出……。
パッケージをイラスト入りにして部品を一部他キットから流用し、デカール同梱したガルパン仕様ののキットが飛ぶように売れ、
戦車解説の同人誌が同人書店の売り上げランキングで上位に入るなどなど、いやぁまさに世は戦車の楽園。
2年前に戻ってミリタリークラスタにこの状況を話したら病院に叩き込まれるか吊るされるかのどちらかだよね
ていうかミリタリークラスタどころか2年前のモデグラ読者に話しても「冗談をいうな!!!」って怒られますよね……。

いやー長くヲタやってると面白いものを見られるよなぁと思わず遠い目になってしまう状況ではありますが、
そんな時こそさぁ皆様、戦車映画を見るのです……ということで。

意外と少ない現代戦車を描いた作品ですが、多分一番有名なのはこの『レバノン』じゃないかと思います。
金獅子賞も獲ってますしね……いやまぁ個人的には『ボーイズ&パンツァー』とでも呼びたくなる感じなんですが。
アメリカの戦車部隊が初のアフリカ戦線に参加した時みたいな意味の『ボーイズ』ですけどね……(昏い目)。

自分が『主砲を撃つべき敵』の顔を、照準器を通じて直視してしまうが故にトリガーを引けない砲手、
実戦経験の少なさ故に搭乗員たちを掌握出来ず、信頼感も得られない車長、気弱な操縦手、サボりたがりの装填手。
彼らの誰もが「生き残りたい」と思っているにもかかわらず、外部で進んでいく状況や展開を把握できず、
あまつさえ歩兵との協同にも失敗し、敵中で孤立するに至ってはもう、見てる側も白目ですよ。いやもう本当。

この映画、『冒頭から終盤まで、主人公の乗る戦車の外観が一切現れない』のが特徴と言いますか、
徹頭徹尾「戦車の中から見る戦争」というスタンスを貫いているのが面白いところです。
外部を見るのはすべて主砲の照準器レンズを通してのみであり、他は味方の無線機の声と、歩兵部隊の指揮官が乗り込んでくる程度。
見ている側も、シュムリクたちと同じで「なんか状況よくわからない」まま、淡々と進んでいく周囲の展開に飲み込まれていくんですよね……。

基本的には安全地帯である戦車の中で、戦場を見つめるシュムリクの目に飛び込んでくるもの。
自分が砲撃を躊躇ったことで死んでしまった自軍の兵士。自分が撃ったことで死んでしまった民間人。
自分が撃つと撃たざると関係抜きに殺されてしまう、人質。人質を殺した敵の民兵。
その誰にも表情があり、感情があり、それらがひたすら『状況の中で』消耗されていくという現実。
何かもう凄まじく、重くて、しんどくて、息苦しい。
こんなにもしんどい戦車の中を描いた、最初から最後まで描き続けた映画って今まであったかなぁ……。
潜水艦映画とかだと必然的にそうなりがちですが、徹底して主人公たちを俯瞰で眺める視点を排除した作品作りはすごかった。
最後の最後、彼らの乗る戦車の中から離れてのアングルが出てきますが、その映像も鮮烈でしたねぇ。

ガルパンというファンタジーが戦車への入り口になる今の状況も大好きなんですが、
「戦争の中での戦車」っていうものを、特に近代戦車の中から描いた本作は、実にお見事だったと思います。
純粋に戦争映画、アクション映画として見たら凡庸で退屈でかったるい作品ではありますが、
-というか戦争映画・アクション映画としての戦車映画なら『レッドアフガン』一押しですが-
「うーわー戦争ってマジロクでもねえ……」と思えたり、イスラエルが使ってる某戦車(車両の種類はラストまでのお楽しみ)の内装が分かったり、いろいろと楽しみがあるのもまた事実ですので、戦車道抜きに「戦場での戦車」を見たい人にはオススメして行きたい一本ですね。

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■13年2月6日 『モンスター・トーナメント 世界最強怪物決定戦』

かつて人間たちを恐怖に陥れたのも今は昔、すでに恐怖の対象としての位置も繁栄も失ったモンスターたち。
あるものは迫害され、あるものは生息地を失い、あるものはひっそりと生計を立てる日々。
しかし彼らが再び栄光をつかむチャンスがやってきた。ヒルサイド共同墓地で開催される『モンスター・トーナメント』。
それは力と力をぶつけあい、世界中のモンスターで誰が真の最強かを決定する、神をも恐れぬビッグトーナメント。
時間無制限、凶器OK、魔術OK、さぁ死ぬまで戦えモンスターたち!!!!!



いやー……予告編を見た瞬間からもうグッと来てしまい「これは見るしか無いだろう」と思ってたわけですが、
いざみてみると予想外に酷いんだけどちゃんと面白くてニヤニヤできる、『何も考えていない系大馬鹿野郎映画』でした!!!
というか、

愛すべきバカ映画です!!愛すべきバカ映画です!!
(満面の笑みで)


とにかくこの映画、ええ、最強トーナメントとか言っておりますが、



モンスターたちが

リングの中で



プロレスするだけの映画です。



……いえね、正直最初はどんぐらいダメな映画かと思って身構えてはいたんですが、いやー何の何の。
確実に予算かかってなくて特殊メイクも1970年台…より前のレベルで、派手なCGとか殆ど無くて、登場キャラも少なくて、
ついでに動きもない感じで実にもう「あぁこれ開始1分でダメ映画ってわかるパターンだ……!!!」ではあったんですが。

その予想を、何かこう、圧倒的な プロレス成分が 飛び越えていった


モンスターたちの試合前に各モンスターの紹介ムービーが流れるんですが、
これがもう、アメリカのプロレスとかでよく見られるあのフォーマットそのまんま(笑)。
肝心の試合が始まれば一回戦からいきなりセコンドはパイプ椅子持って乱入してくるし金的攻撃に警告が与えられるし、
いやもうこれプロレスだ!!完全にプロレスだ!!!!と脳がフル回転、完全に向こうのプロレスを見るモードになると、
あとはもう心穏やかに楽しみながら見られましたね(ものすごく温かい目で)。

何せレフェリーでハーブ・ディーンが本人役で出てきたり、イベントマネージャー役でジミー・ハート本人が出てきたり、
モンスター演じてるのもアメリカとかカナダのプロレスラーです。ロバート・マイエとかも出てます。どこまでもプロレスです。
あとケビン・ナッシュが軍人役で出てきます。

えーせっかくケビン・ナッシュ出すのに軍人なのー戦いに直接絡んでこないのーとか思ってたんですが、
途中で〇〇○に噛まれて〇〇〇〇したと思ったら最後の最後に〇〇とか…!!!!!(机叩きながら)
そしてそこで終わるのかよテメェ!!!!俺にその後を見せろぉーーーーー!!!!とか本気で思わされる辺り、間違いなくプロレス。
ていうかエンドロール後はジミー・ハートがああなるし、もう、もう……大好きだこの映画……(うっとり)。

いや、まぁ、その、プロレス映画ですけどもちゃんと各モンスターの特性活かして戦ったりもしますよ!?
ゾンビは噛み付き攻撃するし狼男は俊敏さを活かしてフライングアタックとかするし。
まぁ魔女なのになぜかボクシングだったり女ヴァンパイアが猛烈な肉体派だったりもしますが(目を伏せつつ)。
あといくらサイクロプスだからつってもテメエその目から〇〇○○出すのはモンスター能力とかじゃなくて全世界的に有名なアメコミ原作のアレからの輸入だけどいいのかそれはぁー!!!!!!!とか思ったりもしますけども!!!!!(笑)
強いて言うならそういう別ジャンル輸入ネタが少なかったのが惜しいところかな……。

出てくるモンスターたちはみんな紹介ムービーで経歴や参戦理由が語られるのは先述の通りですが、
個人的には『湿地の悪魔』ことスワンプ・ガットが大好きですね。
こいつだけ「環境破壊の弊害を訴えるため参戦を決意」とか言われてますし、紹介ムービーは完全にネイチャードキュメント番組……。
絶滅危惧されてて個体数10体以下とか食料は警戒心のないカヌー乗りの人間とか、食料確保が難しいとか、
いやもう出なくていいから!!!誰かスワンプガットを保護してやれよ!!!!!!
ていうか負けたら死ぬこと確定してるような試合に出てくるなよお前!!!!!!!!!!!

そんなわけで、どう考えてもこの映画を楽しむにはモンスターに関する知識よりもプロレスに関する知識のほうが必要な、
D級モンスタープロレス映画だったりするわけですが、いやぁ、真剣に馬鹿やってる奴らってこれだから見てて楽しいですね!!
決して大作至高ではない、どころかまっとうなホラーを撮ろうとか毛頭考えてない、
ひたすらに「モンスターたちがプロレスしたら面白いよな!!!」という方向を貫き通したこのバカな制作陣に幸いがありますように(笑)。

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