ここがダメだよ映画『ミッション:8ミニッツ』
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えーーーーーーーーっと、ここからは『ミッション:8ミニッツ』のダメな、受け入れがたいポイントを。

とにかくもう、この映画がタイムリープ作品として他作品と決定的に違ってるのは
『過去の自分へと意識を飛ばす』のではなく、『他の人間が死んだ瞬間から遡って8分間の意識をジャックする』というところ。
意識は完全にコルター大尉なんだけど、身体は単なる一介の教師なんですよね。
つまるところ「いいじゃん、どうせ死ぬのは確定してるんだから何しても」的な発想で使われている、と。

まぁそれはいいんですが、

そ れ が 最 後 の 最 後 ま で 続 い て も い い の か よ と。

えぇと、ぶっちゃけネタバレになりますが説明。

幾度と無く失敗し続けながらもとうとう犯人を突き止めることに成功したコルター大尉。
最後の願いは『列車爆破テロそのものを止めることに挑ませてくれ』というものだった。
その挑戦自体に意味はなく、仮に爆破テロを止められたとしても、コルター大尉の肉体がある世界線には何の影響もない……列車が爆破された事自体は決して覆らない、という厳然たる事実は把握しながらも。コルターを再び、そして最後のブレインジャックへと向かわせるスタッフ。

今までの記憶すべてを動員して見事に爆破テロが起きる前に犯人の身柄を拘束し、
そして本来爆破テロが起きるはずだった時間を迎える…。
愛する女性、クリスティーナに「人生最後の1分間だとしたら、どう過ごす?」と告げ、
ついにその瞬間を迎えるものの……


爆破の時間を超えても時間は紡がれ、コルター大尉はショーンの身体をジャックしたまま『爆破テロを未然に防いだ教師』として生きることになり、クリスティーナは自分が好意を寄せていたショーン(中身はコルター)と結ばれ、やがて世はこともなし。
事故が起きなかった世界でのプロジェクトは、コルター大尉を温存したまま出番を待ち続ける……というのが本作ラストの展開の概要なわけですが、

で、ショーンの意識はどこに消えたの?

クリスティーナが好意を寄せ、コーヒーを一緒に飲もうと誘われるのを待ち望んでいた、ショーンはどこに行ったの?

確かにコルター大尉は英雄だろうし、自らの死をも受け入れて、それでもなおテロを防ぐために最後の最後まで戦ったのは素晴らしい。
コルターが報われないままでは救われない、というのも分かる。

でも、何の罪もなく爆破テロに巻き込まれて死亡し、その上「コルター大尉の意識を乗り移らせるのにちょうど良さ気だったから」という理由で何度も何度も何度も何度も平行世界で意識ジャックされては爆発に巻き込まれて死亡し、
爆破テロを防いだ世界線では『身体は生きてるけど意識は絶賛乗っ取られ中』なショーンの幸せはどこに行ったんでしょうね。

爆発を防いだ英雄としてのショーン(中身はコルター)と結ばれたクリスティーナの間には何の積み重ねもありませんし、
それでハッピーエンドですという体裁のまま映画が終わっても「おいちょっと待てよ」というしかございません。
何かあまりにも『意識を奪われた側』への配慮がなさすぎて後味が悪すぎる。
コルター大尉への配慮しか無くて、他の「生きている人たち」への配慮がなさすぎる。
「本来死ぬ運命だったんだからこれぐらいいいだろ」というのが、映画内の『プロジェクト』のスタッフたちではなく、
そもそもこの映画を作った人たちからも感じ取られる終わり方がどうにも気に食わないですね。

意識を乗っ取ったコルターと、乗っ取られたショーンとの間で、ちゃんと決着がついて折り合いがついてくれないと、
とてもじゃないけどアレをハッピーエンドだとか思えませんよ……。
爆発した時間を迎えたところでストップモーションが入る演出、あそこで終わっていればなぁ。

正直ラスト10分…いや、ラスト3分がなければこの映画をもっと褒めれたなぁというか、
最後の最後でぶち壊しになった気がしますね。
平行世界での歴史改竄なので、コルターが元いた世界線での列車爆破テロは消えない、という、
『過去に飛んで未来を改ざんする』という禁じ手に踏み込んでないのは評価できるんだけどもね……。