視聴映画感想 08年度
■08年9月15日 『ストレンヂア -無皇刃譚-』

つーこって見ました『ストレンヂア -無皇刃譚-』!!!
ちなみに同時に借りてきたのは『ゾディアック』『ヘアスプレー』ってどういう組合せださとっち。
いや、本気で。ワリと。

時代劇アクションのアニメつージャンルはあんまり一般的じゃないといいますか、正直なところマトモに見た記憶が無いんですけども。
ただ、コイツはちょいとばかり最高クライマックスだというか、正直たまりませんでした。
無駄な装飾を省いてシンプルな作りながらグイグイと見るものを引き込んでいくストーリーテリングは見事の一言。

話としてはシンプルな『異人VS武士』であり、そこを軸に突っ張った子供とワケありっぽい流れ者の交流を描く話。
いやもう本当にストーリーの根っこはそれなんですよね。後は異人と武士団の決戦と、異人と『名無し』の戦いだけ
他、殆ど無し。ラブ要素とか無し。
ならばどこが見どころか、といったらもう『全編』と答えたくなります。

……でも見所を一個挙げるとするならば、やっぱりラストの城攻めシークエンス。
アレ見て血が滾らないヤツがいたらそれはもう男じゃねえ!!!と言いたくなる素晴らしさ。
いやぁ参りましたわコンチクショウ。
決着が付くまでの間、殆ど呼吸できなくなるぐらいの緊迫感溢れる剣戟シーンもありますしね。
正直、文句の付け所がこれほど無いオリジナルアニメ映画というのも本当に珍しい……。

ちなみに主人公である『名無し』の声が長瀬智也。これがまた良いんだ、うむ。本職声優さんじゃありませんが、すごく良い仕事してます。、
敵である異人の声は山ちゃんで、ハードボイルド声に危うく失神しそうになりました

テレビでやってる時代劇はアレだし、剣術アクション映画も結局中国映画とかマトリックスの影響を逃れてねえなー、とか勝手に思い込んじゃってましたが、いやこれは何かもう眼福眼福、すげえぞボンズ。
強いて言うなら地味すぎる、という欠点もありますが、それこそがこの映画の醍醐味ってことで。
■08年9月6日 『キサラギ』
何じゃこの傑作はぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!!!


というコトで、某しろがねさんからオススメされた上に各所の評論でもことごとくネタバレを避けながら絶賛されまくってた『キサラギ』を買ってしまいました!!!!


そして冒頭の感想に至ります。


いや、もう、ホンマに傑作でしたマジで。

舞台は『1年前に自殺したC級アイドルの一周忌に、ファンだった男5人が集まったオフ会』。
テーマは『自殺したC級アイドルは本当に自殺だったのか』。
登場人物はたったの6人、しかも1人は既に亡くなっている。
カメラは決してオフ会の会場から動かない。


おっそろしいほどミニマムな舞台でミニマムなテーマ。
そこからどうやって話を膨らませろっていうんだ!!!というぐらいのモノですが、いやぁ本気で凄いわコレ。
舞台も完全な密室ではありませんし、凄く簡単な要素だけで構成されているのに、
見ている側へ一瞬たりとも弛緩することを許さない緊張感の連続でした。

物語が二転三転どころか七転八倒、どんどんどんどんひっくり返りまくって、
結末が見えてきたかと思ったらそこからさらにもう一捻り加えてくる容赦のなさ
なおかつ途中で提示された伏線や手がかり、アイテムが全て最後の結論へと結びついていくそのカタルシス!!!
結末を先に作って「どうやってそこに着地させるか」で考えていったとしても、ここまで見事なまでにまとめ上げて見せた脚本の力は物凄かった!!

それに見ているうちにどんどんこちらも如月ミキのファンになっていきまして、そりゃもう最後には泣くわ!!泣いたわ!!!!!
んでエンディングのダンスで思わず「ミキチャーン!!」とか叫びたくなりました。
深夜1時過ぎてたんで自重しましたが。バキュンバキューン!!!(何)


んで最後のエンドロール後のアレにひっくり返りそうになったり。そうきたか!!そうきたか!!!

いやもう本当に何というか、こんな作品が日本映画で存在するというコトに勇気付けられましたよ!!
最近どうもアニメ以外はダメ映画の嵐だったからちょっと絶望しかけてましたけど!!
■08年7月23日 『HOT FUZZ!-俺たちスーパーポリスメン!-』
『ショーン・オブ・ザ・デッド』で日本全国のゾンビ映画ファンのみならずB級映画マニア、映画好きから超絶に高い評価を得たエドガー・ライト監督が全ての警察映画、全ての警官映画へのリスペクトを叩き込んで造り上げた傑作がとうとう日本公開ということで、公開から少し時間が経っちゃいましたが見てまいりました!!!!!
いや、もう、本当の傑作って言うのはこういう作品のことを言うんだなぁと。

あまりにも優秀な成績を引っさげて大学を卒業し警察学校をこれまたトップクラスで卒業、ロンドン市警に配属されてそこでも尋常ならざる能力と度胸から通常の警官の4倍以上の検挙率を誇り数々の記録や表彰を貰いまくった結果、同僚と上司から疎まれまくり
「君がいると周りが無能に見える」
という理由で、ハードなロンドン市警から20年連続で『ヴィレッジ・オブ・ザ・イヤー』を受賞したド田舎へと左遷されたスーパー警官、エンジェル。

到着したらコテージは使えなくてショボいホテル住まいになるわ地元の警官はやる気皆無だわ、そもそも犯罪とは殆ど無縁の村だわで、才能とかやる気とか色々なものを持て余すエンジェル。
起きる事件が白鳥の脱走事件だったり生垣を間違って刈っちゃった騒動だったり、そもそも相棒が修羅場と無縁どころか『何となく親父が警官だから俺も』な、
警察映画(アクション)マニアのデブだったりと、エンジェルの持つ『最前線』の空気はどんどんと『邪魔』扱いされていきます。

ところがある日起きた車の衝突『事件』。
地元はみんな『事故』だと断定しますが、エンジェルの目には『事件』の可能性がくっきりと。
その後も起きていく様々な事態から、実はこの村は平穏どころではなく、とんでもない裏を持っているのでは……!?と思い始めるエンジェル。
ところが、そんなエンジェルを待ち受ける想像を絶する事態が……っ!!!



……という映画なんですが、ジャンルは何?と言われたら『警察映画』と答えるしかありません。
何せ『警察映画』バカコメディ映画』『サスペンス映画』『アクション映画』という側面を持ち、それらの要素がそれぞれ圧倒的な完成度で融合しつつ、今までに作られてきた数多の『警察映画』へのリスペクトに満ち溢れた映画を造り上げているんですから。
しかも伏線の回収がそれはもう見事どころの話ではなく、恐ろしいまでの技量で回収しまくってくれています。
「まさかそうきたかー!!!!!」と思ったことが何回あったやら!!!!
特に○○を最後まで引っ張ってみせたのはもう本当に見事。ハリウッドなら放置してるよな!!!(何)


最後まで『正義を貫く男』のカッコ良さもありますし、ドンパチ分も最後は怒涛のように……というか、バアちゃんが○○○に乗りながら二挺拳銃を撃ちまくって突撃してくるのには本気で吹いた。
「警官の仕事に派手なアクションは無い!」と言い切ってたエンジェルが、最後のブチ切れで見せるアクションっぷりはもうカタルシスバリバリでした。うむ。

どうしてもイギリス映画って地味ですし、監督も主演も日本では無名というコトもあって配給会社が購入せず、公開されない予定だったと言う話(署名が集まって公開決定)ですが、こんな面白い作品を公開せずに何を公開するのかと問い詰めたい気分でいっぱいです。
『カンフーパンダ』とか『カンフーダンク』を公開するスペースがあるなら圧倒的にホット・ファズだろ!!!!!と思ってしまいます。
まぁそれも大事なのは分かるんだけどなー。無名でも本当に面白い作品を公開することに力を入れて欲しいものであります。
というか、監督と俳優の名前だけで公開する/しないが分かれるんなら、内容なんてどうでもいいってこったよね?


……という愚痴はここらへんにしておきますが、先日亡くなられた水野晴郎氏が最後に見られた映画が本作だった、ということに感謝したくなりました。
映画を愛した人の最後に見た映画が、この掛け値なしの傑作だったという幸せ。映画の神様がいるなら、彼は本当に良い仕事をしてくれました。
水野晴郎さん、今まで本当にありがとうございました。
■08年07月 『レマゲン鉄橋』

ふとヨドバシ梅田のDVD洋画コーナーを覗いてたらウッカリDVDを3枚購入してました(実話)。
買ったのは『レマゲン鉄橋』『空軍大戦略』『ブルースブラザーズ』という、統一性があるんだか無いんだかわからないラインナップ。
まぁさとっち的には統一性バリバリと言うか、レンタルでアホほど見まくった映画ばっかりです。
本当は『バルジ大作戦』が欲しかったんですがどうにもネタ切れっぽく。8月6日ごろに再販みたいですねー。
んで3連休というコトもあったのでバリバリと見ましたよまずは『レマゲン鉄橋』から!!!!!


話自体はドイツの負けがもう殆ど確定してる1945年の3月、ライン川にかかる橋をどんどん叩き落して連合軍の進行を止めようとするドイツ軍と、何とか橋を確保してベルリンへの侵入ロにしようとする連合軍の攻防が続く中、最後に一本だけ残ったレマゲン鉄橋。
そのレマゲン鉄橋を巡ってドイツ軍と連合軍が熾烈な攻防戦を繰り広げる!!!


……と、今の時代に映画化したらそんな感じになるんだろうと思うんですが。


実際のところとしましては。


@第15軍の生き残りに川を越えさせ戦力を何とか確保したい思惑と、早いところ橋を落として連合軍を食い止めたい思惑とがぶつかり合い、中途半端にしか履行されない命令と、報告書とまったく違う実情の守備隊に振り回されるドイツ軍のクリューガー少佐。

A上官に良い顔をしたがる調子乗りな正義感だけは一人前のアホ少佐を上官に持ってしまったがゆえに
最前線のさらに前線に送り込まれ続けていらん苦労ばっかり強いられるアメリカ軍のハートマン中尉。

そんな2人の視点を切り替えつつ、鉄橋の攻防戦を描いていく……という、実に、実に中間管理職の悲哀バリバリの映画だったりいたします(ぇー)。
クリューガー少佐の最後の台詞には、毎回深く肯いてしまったりしますからねぇ……。

とは言えアクションシーンは充分以上に立派なものであり、チェコの町を舞台に撮影した映像は
『再開発中の町だから』と言う理由で「バンバンぶっ壊しオッケー」な許可が下りたらしく、
実際の建物をバンバン爆発させふっ飛ばす、そんなステキ極まる映像になってます。
あとパンツァーファウストの発射シーンは実際にバックブラストで室内が真っ赤に染まるのも見えますしね。
MG42は恐るべき威力を発揮して歩兵に甚大な流血を強いますし、88mmもちゃーんと登場しますし。
それに、ロクな戦力が無いとは言え、きちんと統率されて練られた配置を得た守備隊側が、遮蔽物の無い橋梁の防衛においてどれだけの強さを発揮するのかという部分も見所ですね。ドイツ軍兵器好きには溜まらん映画でありますぜ!!!!!
あぁ、そして初っ端から出てくるM24チャーフィーの走行間射撃シーンには何回見ても血が滾ります。
というか、あのシーンだけで言うなら人生で200回ぐらい見てるかもしれません(ぇー)。

まぁ戦争映画としては地味な部類にあるのは事実で否定する気は毛頭ありませんが、
少なくとも『傑作』に位置づけられるべき一本だとも言い切りたい今日この頃でございます。
■08年6月7日 『フライボーイズ』

借りてきたDVD最後の1本にして最大の期待作、『フライボーイズ』を見ました!!!!!


オールタイムベストに認定してもよろしいでしょうか!!!!(涙)


いや、今まで見てきた航空アクション映画の中では『トップガン』がオールタイムベストだったんですが、匹敵するぐらいすごい。
というか非ジェット機映画としてはもうトップの座に立ってもらって構わない……いや、『空軍大戦略』『ダーク・ブルー』があるから同率タイかな?という感じ。

舞台は第一次世界大戦、複葉機の時代。
様々な事情や動機から義勇兵としてフランスのラファイエット航空隊へ志願した若者たち。
初めて触れる飛行機や、初めての飛行に心を躍らせるが、やがて戦場の現実に直面していく……という、実にオーソドックスな『若者達の成長と別離、苦悩と復活』を描いた航空アクション映画となります。

時代が時代ですからジェット機のような高速アクションではなく、またミサイルがバンバカ飛び交うアッタマ悪い(大好きですけど)アクションでもなく、ひたすらに『敵機の後ろを取る』あるいは『急降下で一撃離脱』を目標とした空戦がメインになります。
ただ、速度が遅いからといってゆったりとした空戦になるのではなく、キャノピーなしで風防のみ、風を感じて飛ぶために、敵機の銃弾の恐怖はハンパじゃありません。弾丸が機を/身体を掠めていく音が聞こえるんですから、コレは第二次世界大戦の映画には無い怖さですよね。
そういう意味では『スピード感と空戦の迫力は必ずしも比例しない』というコトを思い知らせてくれます。

また、速度が遅く旋回半径も小さいために、『航空機の集団戦』という物が描かれているのが非常に面白い。
緊密な編隊を組んで飛ぶ敵機の群れへ、上方から急降下突撃による一撃離脱攻撃を仕掛けてそのまま乱戦に雪崩込み、画面内を所狭しと十数機の複葉機が飛び交う映像は、ジェット全盛の映画に慣れてしまった目に、非常に新鮮な驚きを与えてくれました。

それにヘッドオンで機銃を撃ち合いながら突撃し、交差直後に急上昇旋回→背面飛行のままヘッドオンでさらに撃ちあい、という鬼のような空戦まで見せてくれます。無茶苦茶ですけど、問答無用の迫力を感じさせてもらいましたねー。
そして圧巻はやっぱりドイツ軍飛行船の強襲作戦。
「あ、飛行船ってこんなに怖いんだ」と思えますし、多少機銃弾を叩きこんだところで撃墜できない(でも内部にいる乗員はズタズタにされる)という現実も描かれますし。
そこで起きた一つの『男の行動』には思わず涙が出たりしました。


ストーリー自体はそれこそ『昔からよくある航空戦映画』で、キャラクター造形も実にオーソドックス。
アメリカ・フランス合作映画なんで、ドイツ側のことがサッパリ描かれてなかったりしますが、まぁその辺はさておきましょう。
しかし、敵であるドイツ側のパイロットの描写はほぼゼロなのに、『どんな人間なのか』が伝わってくる空戦時の描写が素晴らしい。
騎士道精神を重んじる者、獰猛な獣のように敵機をなぶる者。
パイロットではなく飛行機自体が立派に『キャラクター』として成立しており、航空アクション映画として一つの到達点にあるような気もしますね。

他にも、当時の木製シミュレータによる訓練風景や、『移動しながら銃撃する』訓練、純粋に『三半規管を鍛える』訓練(簡単に言うとバットぐるぐる)などの光景も盛り込まれ、ある種の牧歌的な雰囲気まで与えてくれました。
この辺は『ダーク・ブルー』でもそうですねー。アレの自転車による訓練風景は楽しかった。


第一次世界大戦における航空戦闘って、実際のところ『上空の飾り』ぐらいのものでありまして、地上戦の趨勢を握るほど重要な物じゃなかったのが現実(だからこそ騎士道精神を重んじたり、リヒトホーフェンのような振る舞いも可能だったりした)ではあるんですが、そこで戦っていた者たちはあくまでも尊 かった、と感じられる作品でした。
行き詰ってしまった時、悩んでいるときに見ると、己を奮い立たせられるかもしれませんね。


少なくとも、向こう10年ぐらいはコレを越える航空映画って出てこないだろうなぁ……。
……と言いながら、押井守監督の『スカイ・クロラ』に期待する自分もいたりするんですが。
■08年5月4日 『バイオハザードX』

前々からしろがねさんに(ある特定の意味で)オススメされてた『バイオハザードX』を借りてきました!!!
鑑賞条件として『ほかの事をしながら見ちゃダメ』と言われましたので、俺も男だコンチクショウとばかりに、他の事をまったくせずに(お茶飲んだりはOK)体育座りで見ましたとも98分間!!!


いやぁひどかった!!!!!(ごっつい笑顔で)


それこそもうダメポイントを挙げるだけで一晩語りつくせそうというか、何をどう考えればこの映画を劇場公開なりビデオ化なりDVD化しようというゴーサインが出るのか軽く考え込みたくもなる出来でしたいやぁすげえ……。

とはいえ感想が『ダメ』『ゴミ映画』ばかりではアレですし、やはりここは誉めるべきポイントを無理やりにでもひねり出すヨドチョースタイルで感想なんぞ書いてみようと思うのですよ?



・冒頭のミニチュアワークがすごすぎる
ここまで「コレはミニチュアワークです!!!」と立派に主張する映像なんていつ以来だコンチクショウ!!!
開始わずか10秒で軽いカルチャーショックを観客に与え、自らの人生に関する疑問……そう、つまり「俺はこんな映画見てて良いんだろうか。いい加減バカ映画ファンを卒業するべきじゃなかろうか」という内省までも促す、実に高尚極まる映像となっています。
あまりに高尚すぎて眩暈がし、つい「借りてくるディスク間違えたんじゃねえ?」と思ったのは秘密ですが。

・ひたすらにロードムービー
98分の映像作品としては斬新極まることに、野郎二人が延々と乾いた大地を歩き回ったり喋ったり歩き回ったり歩き回る映像が冒頭の60分ほど続きます。
最初の5分で辛うじて怪しげな人間達が登場しますが、どう考えても『スター・ウォーズ』のサンドピープルへの強烈なオマージュです。オマージュと言うかそのものです。本当にありがとうございます。
格闘シーンはあえて平凡極まるカメラワークと言うか、およそ迫力と言う物を観客に与えることなく心臓の弱いお年寄りでも安心な親切設計となっています。
さらに、この冒頭の似非サンドピープル相手の喧嘩シーンこそが、今作品で最もアクションの派手なシーンであることは特筆するべきかと思います。開始わずか5分でクライマックス。あとはひたすらロードムービー。実に、実に斬新極まる構成です。
さらに申しますならば、DVDのジャケットでメインビジュアルを張っている女戦士が出てくるのはラスト30分ごろからです。それまではひたすらに野郎二人が会話したり歩いたり悶絶したりするロードムービーとなっております。眠れない夜のお供に最高です


・工程を追ってみる。
地上に落下する→歩く→しゃべる→何か変な連中に襲われる→歩く→愚痴る→歩く→口論する→歩く→潜る→歩く→しゃべる→歩く→愚痴る→歩きながら愚痴る→歩く→口論する→歩く→変なの見つける。
えぇ、もう完全にコレは時間配分を間違えたとかいうレベルではなく、何もかもを間違えた、実に稀有な作品だと思います。


・恐るべき『雰囲気作り』
通常のホラー映画であるならば、いやB級モンスター映画であるならば『何か出てきそうな雰囲気』を作るのに命をかけるものであり、どんだけ寸止めするんだよ!!と叫びたくもなるぐらいなんですが、この映画にそんな心配は無用です。
監督も演出も脚本家も、そういう『無駄に観客を煽る』などという小細工を弄することなく映像自体を進めることにしたらしく、
冒頭の60分間はそれこそもう本当に平穏な映像が続きます。 心電図で言うならずっとフラットでもうご臨終という感じです。
山なし、オチなし、意味なしというコトで、コレこそ真のヤオイ映画であるといえましょう。
BGMで驚かすとか不安にさせるといったこともありません……というよりBGMと言うもの自体が80分間は存在しませんから、
観客は野郎二人の会話(主に世間話と愚痴と口論)に思う存分集中することが出来るのです。
……ただ困ったことに、会話を聴いても聞かなくても何の問題もありません
いや、何ていうか、劇中で設定なんかまったく説明されてないんだもの……。
伏線らしきものは会話の中でチラホラと出てくるのですが、どう考えてもこのパターンだと『伏線』ではなく『思わせぶりな単語』レベルなので、見る側は後々「あぁ、あの会話はあんな意味があったのか!!」などと、自分の記憶と照合したりする手間がありません。なんという親切設計なのでしょうか……。
ちなみに唯一流れるBGMも、「え、何でこんな場面で突然流れるの?」という、観客のタイミングを絶妙に外すシーンですので、
よほど腹を吸えてかからないと監督達の思うつぼです。注意しましょう。注意したからといってどうなる物でもないのは事実ですが。


・素晴らしい映像クオリティ
よくダメ映像をして『代アニの卒業制作かよ』などと評することもありますが、この映画はまったくそんなことがありません。
恐るべき空気感の無さ、いやというほどパキッとしてて「あぁ、デジタルだねコレ」と分かる背景、冒頭で観客全員の度肝を抜くミニチュアワークなど、代アニの一年生(5月)でももう少し上手くやるであろうと思える箇所が満載です。
ちなみにミニチュアワークはラストにも存在するのですが、これまたウルトラマン80時代を彷彿とさせるレベルになっており、日本の特撮作品マニアのノスタルジーを無駄にくすぐり倒してくれます。

・ナマの すごい アンデッド。
パッケージの裏側には『アンデッド』と書かれておりますが、そういった次元を超越した存在でした。っていうか劇中では『悪魔』って呼ばれてますけどアレは……。
とりあえず一般に想像する『ゾンビ』とか『リビングデッド』とかを想像しちゃいけません。
また、プレデターとかでもありません。ものすごくフレッシュです。喋ります。イキイキしてます。変なオッサンです。
何かサドっ気満開で二人組みの男の一人を苛めて楽しんでます。「汗の臭いがぷんぷんするぞ」とか喋ります何この臭いフェチアンデッド。斬新すぎてちょっと言葉に出来ません。
あえて言葉にするなら……そう……「金返せ」とでもなるでしょうか。



・最終決戦がすごすぎる
紆余曲折あってDVDのパッケージに出てきてる女戦士が登場し、そこからダラダラとやった後にアンデッドとの最終決戦っぽいのに移行するんですが、最終決戦の決着シーンを全部すっ飛ばすと言う『旋風の橘』玉龍旗すっ飛ばしに匹敵する荒業を敢行してくれます。なんという猪熊しのぶリスペクト。ワタクシは思わずDVDに向かって

  スパイラル!
  ∧_∧   .ミ∩
  ( ・∀・) ⊂⌒ |
  | つ==☆|⊃ |つ
  人  Y/  ミ(   )
 し(__)   ∨ ∨彡


……何でもありません。


・次作に期待を持たせる終わり方
最終的には倒した筈のアンデッドが、助けられた人間の身体を乗っ取って復活!!という、どこかの作品で見たような、というか実に王道極まる終わり方で、次作への期待が否でも膨らみます。
具体的にはどこの誰が続編企画に金を出そうなどと考えるのか、それを知るのが楽しみで仕方ありません。


・総評
思いますにこの映画、もしかして向こうでは『バイオハザード』って名前ではなく、他のタイトルだったんじゃないでしょうか。
それを輸入する際に、『バイオハザード3』公開のタイミングに合わせて無理やり『バイオハザードX』という紛らわしいタイトルにしただけであり、作品自体に罪は無いのかもしれません。
ただ、『作品の存在自体が罪だよね』、と言われましたら大きく首肯するのにやぶさかではありません。少なくとも、『何を考えて作ったのか』サッパリ分からない映画だというのは確かです。コレの企画書実物、見てぇなぁ……。


……というコトで感想を書いてて途中からなんかもう疲れ果ててしまったワケですが、DVDの最後に出てきた
『制作・販売:株式会社トランスフォーマー』という部分が今回で最も面白かった部分かもしれません。

関係各所、というか関係の無い各所へも無駄に喧嘩を売りまくるような社名で検索しますと、


こんなページに行き着きまして

ページ上の『発売作品』タブをクリックするとまぁ出てくるわ出てくるわ

『GAME-ゲーム‐』 『呪縛 THE JUBAKU』 『バイオ・クライシス 人類最後の敵』 『CUBE NEXT』 『マスク・オブ・レジェンド』 『ビリー・ブランクスinヴィクトリィィーッ! キング・オブ・ドラゴン』 『レジェンド・オブ・パイレーツ 海賊島の秘宝』 『スター・トゥルーパーズ』 『マリー・アントワネット 恋する王妃』 『アホリックス』 『ソードキング』 『バーティカル・ハンガー』 『ミシガン・チェーンキラー』 『25ミニッツ』 『ダークワールド ‐ザ・レボリューション‐』 『スペース・インパクト』 『ターミネーターX』 『ウルトラ・バイオレンス 処刑人セーラ』 『バトル・ロワイアル・アイ ランド』 『プラネット・オブ・エイリアン』 『パペット・マスターと悪夢のおもちゃ工場』 『エイリアン・ゼロ』 『H.G.ウェルズ 宇宙戦争 ウォー・オブ・ザ・ワールド』 『ボビー・オロゴンの日本文化講座 美しい国・ニッポン。』

ゴメンナサイなんかもうお腹いっぱいですorz 何このB級を通り越してH級ぐらいまで到達してる作品群……っ!!!!!!
このメーカーのDVDを全部見たらとりあえず一年ぐらいはバカ映画に不足しないだろうとは思うんですが、そんな過酷な試練を自らに課せるほどさとっちさんは大人ではありません。せめて『ピンチランナー』を24時間連続ぶっ通しでリピート再生させられる方がマシです。

……しかしこの作品群、関係各所が一斉に立ち上がったら一撃で会社潰されて返済不可能な額を賠償させられそうな気もします。すげえなぁ、うむ。
■08年4月21日 『ステルス』

っというコトで観に行きたいと思いながら、気付いたら公開終了してたしDVD借りてまで見るモンじゃないだろうなぁ、と思ってた『ステルス』がTV放送されたんで観ましたよ!!!!!



……面白くねぇなぁ……(愕然とした顔で)。



そもそもこう、F/A-37のコクピット配置が謎極まると言うか、アレだけの機動性を発揮する機体のワリにシート配置が(というか背筋の伸ばし方 が)垂直に近すぎますよね……サイドスティックを実装するなら、シートの傾斜ぐらいは盛り込んで欲しいですよねぇ。
あんなん派手にマニューバかましたら一発でブラックアウトするぞオイ。
というかあの垂直に近いシートだったら操縦桿方式でも良いんじゃないのか。
それにコクピットの左右幅が広すぎて下方視界も悪そうですよね。レドーム配置も謎で、果たしてアレでどこまで……というか、マトモにレーダー感知できるのかしら。
あとF-35の次の世代にしちゃグラスコクピットのパネルも計器ごっちゃごっちゃですし。
せめてJHMCSぐらいは装備しようぜF-37。

ストーリー内容は何ていうか、『マクロスプラス』と『戦闘妖精雪風』を足したようなモンでして、
……エディがどう考えてもメイヴです。雪風です。マジで。そして『戦闘妖精雪風』の方が面白いというこの罠。
ED曲が何故かムッシュかまやつでもいいじゃない!!
ついでに言うならアメリカンな正義の振りかざし方が鼻について仕方ない(苦笑)。


まぁドッグファイトシーンはクルビットやらコブラやらのレアなマニューバーが見れますが、
でも実機を使った『トップガン』と比べると圧倒的に迫力が下。
やっぱ実機ですよ、実機。Migの新型つっておきながらF-5でもいいじゃない!!!(ぇー
ついでにヘンリー機がミサイルを撃つシーンは『エネミー・ライン』のF./A-18ホーネットのシート射出シーンそのものですし、うーん。
むしろアッチの方が見せ方は上手かったよね。架空のミサイル射出シーンより。
……というか戦闘機アクションかと思ったら単なるB級アクションだったエネミーラインの方が素敵ってのは何かおかしいだろ……。
Su-37の複座型が出てきたのは少々興味深いところですが、でもSu-37に複座って必要?
あと一番萌えたのは北朝鮮の輸送ヘリにBK-117がキャスティングされてるとこかしら。
んでもってH&KのPDWが出てきたのってコレが初かなぁ……。マンガではよく見ますけど映像ではあんまりないですよね。PDW系の銃器って。


屈指の名作『トップガン』以降不作を極めていたジェット戦闘機アクション映画としての評価は……どうかなぁ……。
空戦の迫力で言うなら『ナイトオブザスカイ』に負けてるな、というのが正直な感想かしら。
ストーリー内容はもうとんでもないバカ映画である意味お腹いっぱいですけれど。
期待はずれの感は否めませんが、『トップガン』の呪縛(映画界的には呪縛って言ったほうが良いでしょう)から逃れようとすると、こんな映画にするしかないんでしょうねぇ。

レシプロ機なら『ダーク・ブルー』に『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』、複葉機ならこの前DVDが発売になった『フライボーイズ』があるのになぁ。ジェット機映画、もっと頑張れ、マジで。
■08年4月11日 『クローバーフィールド』

特撮作品ファンの間で結構な期間に渡って語られた議論『アメリカ人が本気で『ゴジラ』に挑んでくるとどうなるか。』
その答えはある意味で『GODZILLA』で出てはいたのですが、如何せん監督があのローランド・エメリッヒということもあり、
作品内容が単なる『怪獣が走って襲って楽しいな』なバカ映画でありまして、
いろんな意味で日本人の水準に合致しない作品だったのは良い記憶です。まさかハープーン叩きこまれて死ぬとはな……。


そして今回。

あらゆる意味で衝撃的なアメリカ製怪獣映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』が日本公開となりました。
もう楽しみすぎて楽しみすぎて、公開前から『楽しみだけど情報シャットアウト』状態にしていたワケで、
もう本当に『怪獣映画です』ということしか知らない状況でしたよ?
いやまぁ何というか、よりにもよってそんなアレなサブタイトル付けずとも……とは思いましたけど。


この映画のストーリーは『ある1日』の出来事を描く、というただそれだけのものですが、
詳しい中身について語ると楽しみが半減どころの話じゃありませんのでその辺りは割愛します。

ネタバレにならない範疇で語るならば、
『出来事を一瞬たりとも俯瞰で描かない』という、その一点こそが、この映画最高のポイント。
『神の視点』が存在せず、ひたすらに登場人物の視点のみで描かれるため、臨場感や恐怖感がハンパではありません。
見ている側も『今、何が起きているのか』『何が襲ってきたのか』を把握できないままストーリーは進行し、
絶望の度合いも飛躍的に増加していきます。
『地上1メートル80センチから見る怪獣』というものの衝撃と恐怖を、本当の意味で味わわせてくれる作品でした。

日本の怪獣映画で言うならば、『ガメラ 大怪獣空中決戦』や『ガメラ2 レギオン襲来』『ガメラV 邪神覚醒』という、
さとっちさんが死ぬほど愛して止まない平成ガメラ3部作(小さき勇者云々って何ですか?)が、
地面に近い視点から(限りなく登場人物の視線から)怪獣の恐怖を描いていて、それはもう本当に新鮮でしたが。
この『クローバーフィールド』は、それをさらに突き詰めてみた作品ですね。

ゴジラにせよガメラにせよ、必ず俯瞰からの光景が映り、怪獣の全体像は把握でき、市街地が蹂躙される状況を俯瞰で見つめることができ、
『傍観者』として状況を見つめることが出来るワケですから、どれだけ『等身大の光景』がショッキングであろうと、観る側は落ち着いて見ることが出来るんですよね。
しかし、この『クローバーフィールド』は、決して傍観者の視点を提供してはくれません
あくまでも当事者。あくまでも地上1メートル80センチの、一般人の視点。
そこから映し出される『怪獣の怖さ』は、今までに存在しないぐらいの衝撃を持って観客側に襲い掛かってきます。

一瞬だけ、ワンシーンだけ視点が当事者ではなく、状況を『俯瞰』で見ることになるシーンがありましたが、
それも一瞬で現実へと引き戻された後の絶望感。
カメラのレンズを通じて映し出される出来事は、実に雄弁に、そして冷徹に物事を映し出してくれます。

あまりにも怪獣映画として非常に優れておりまして、とにかくもう本当に『ゴジラリスペクト』に溢れた傑作でした。
すでに続編の制作も決定している、とのことですが、そこでは今作で残された謎は明かされるんでしょうか……。
解明されて欲しいような、そうでなくてもいいような。そんな気持ちにさせられました。
『恐怖は恐怖のまま置いておくほうが面白い』と思ったのは、久しぶりですねー。
未見の方は、是非、劇場で観てください。 観れなかった人は出来るだけ大きいモニタでな!!!!!
■08年3月7日 『フェイス/オフ』

これまた何回目なんだか判りませんが、『フェイス/オフ』でした木曜洋画劇場!!!
思えば最初に見たのは劇場で、何故か腹を壊して下腹部の痛みに耐えながらも2時間、席から決して尻を上げることなく(上げて放屁の一発でもしようものならいろんなものが噴出する可能性大だったからだという説アリ)見入ってしまった傑作でありまして!!!!!

……というか、ぶっちゃけジョン・ウー御大の作品でハリウッド進出してから一番面白いのはコレだよね。
他の作品ってちょっとこう……(略)。最近は大作嗜好が強すぎて悲しいぞウー御大。


で、毎回見るたびに思いますが、ウー御大の『溢れ出る漢汁』がダダ漏れになってるといいますか、色々とやりすぎですウー御大。
ゴールド&レリーフ入りのガバを二挺拳銃なニコラス・ケイジといい、何故か最後の戦いではグロック18でフルオートなトラボルタといい、鳩は飛ぶわスローモーション多用だわ幾度となく移される銃口&マズルフラッシュ&飛び出る弾丸だわ銃口を突き付けあう連鎖だわ。
それにしたって警察の強襲シーンはアレ、子供にヘッドホン付けさせて『Over the Rainbow』が流れるのをバックに思いっきりドンパチやらかしてるっていうのはちょっとヤリすぎな感もありますが素晴らしすぎる(笑)。アレだけはいつ見ても鮮烈で良いなぁ……。

スローモーションも何というかこう、実にペキンパーチックな漢スメル満載で、いやぁこの頃は本当に脂が乗った絶好調だったんだなウー御大……。
まぁどっちかと言うと『男たちの挽歌』系ですからねこの作品。完全に本領発揮ずっと俺のターン!!だったんでしょうとも。
個人的には『ハードボイルド 新・男たちの挽歌』「その方が迫力出るじゃん?」という理由で、 人間に当たるシーン以外の全発砲シーンで実弾使ったような監督(おかげで本当に迫力がハンパじゃない)ですから、もっと好き勝手にやらせて欲しいんですけどねー。


あと毎回思うのが、トラボルタがあまりにもイキイキと悪役やりすぎておりまして、 序盤のFBI捜査官モードなトラボルタですら充分に胡散臭い(笑)。
でも今回の木曜洋画劇場版って結構細かいシーンがカットされてましたね、爆弾解体前の演技とか、アーチャーの嫁さんがアーチャーに成りすましたトロイの血液をこっそり採取するシーンとかさ。

……そしてこんな映画を見た後に
このソフトの存在を知ったさとっちさん。

……箱360買ったタイミングでコレかーorz
買えというのですか御大ーorz